解説者のプロフィール

城戸淳美(今井病院医師)
東京女子医科大学医学部卒業。
東京女子医科大学附属消化器センターなどに勤務後、北京中医大学日本分校で中医学を学びながら、体のゆがみを取り、自然治癒力を引き出す「骨格バランス健康法」を考案。
現在は栃木県足利市の今井病院にて、内科、皮膚科の視点から心と体をトータルに診る医療を行っている。
悪い姿勢が全身の痛みや病気を招く!
いつも正しい姿勢を保つことは、健康で若々しくいるための必須条件といっても過言ではありません。「健康」は、まさに「姿勢」が作るのです。
私が姿勢に対し、特別関心を抱くようになったのは、西洋医学の治療の在り方に、疑問を感じたことがきっかけです。
私は大学卒業後、二つの大学病院に勤めていました。どちらにも最新鋭の設備がそろっていましたが、それらを使っても、病気の原因すら突き止められないことが多かったのです。
いつしか私は、現在の西洋医学的な治療法は、万能ではないと思うようになりました。そこで、漢方や食事療法、整体など、東洋医学や骨格の勉強をするようになったのです。
こうした模索の中でたどりついたのが、姿勢の問題でした。西洋医学に対し、なんの疑いも感じていなければ、おそらく気づかなかったことでしょう。
姿勢は、知らず知らずのうちに、くずれていくものです。足を組んで座る、かばんをいつも同じ側の手で持つ、といったような体の使い方のクセで、体のバランスはくずれてしまいます。それが、股関節にずれを生じさせます。
股関節は、体の蝶番といえる重要な関節です。股関節がずれると、左右の足の長さにも差が生じます。それが、体全体のバランスを、さらにくずすことになるのです。
左右の足の長さが違うと、骨盤もゆがみます。骨盤がゆがむと、腰やひざの痛み、生理痛、便秘、下痢、足腰の冷えなど、下半身を中心にして、多くの異常を招きます。
さらに骨盤のゆがみは、背骨のゆがみにつながり、果ては、背骨の上にのっている頭蓋骨にも影響が及ぶのです。背骨がゆがめば、背骨から出ている神経も圧迫されるため、その神経の支配が及ぶ箇所に、さまざまな症状が出てきます。足へ通じる神経が圧迫されれば、それが足のしびれとして現れることもあるでしょう。
体の諸機能を調節する自律神経や、全身の筋力バランスもくずれるので、体の各所に痛みやコリを招きます。さらに、耳や目といった器官にも影響は及び、耳鳴りや難聴、めまい、眼精疲労などの症状も現れるのです。高血圧や糖尿病など、生活習慣病を招く恐れもあります。
ひざゆらしのやり方

ひざをそろえて軽く前後に揺らすだけ
このように、体のクセは、万病の誘因となります。体に痛みを感じたり、症状に苦しんだりしている人は、自分の姿勢をまず見直してください。悪い姿勢が、その原因となっている可能性があります。
イスに座るときには、足を組まないようにし、いつもかばんを右肩にかけているなら、左肩にかけるように心がけましょう。
そして、体のクセの修正とともに、ゆがんでしまった股関節を正しい位置に戻す必要があります。そのために役立つエクササイズが、今回ご紹介する「ひざゆらし」です。
ひざゆらしは、股関節のずれを正し、背骨や骨盤のゆがみの矯正に役立ちます。毎日継続することによって、体の正しいバランスを取り戻し、多くの健康効果をもたらします。
私の病院には、いろいろな悩みを抱えた患者さんがいらっしゃいますが、その原因の多くが、股関節のずれです。そのようなかたには、ひざゆらしを行うよう指導しています。
ひざゆらしのやり方は、驚くほど簡単です。
まず、あおむけになって、ひざを立てます。このとき、左右のひざはそろえるようにしましょう。そのまま足を胸のほうに引き寄せ、両ひざに手を当てて、ひざを抱えるようにします。そのまま、ひざを軽く前後に揺らすだけです。腰の下に、高さが10㎝以下の枕を置いたり、頭を少し上げたりすると、さらに効果的です。
ひざは、激しく動かす必要はありません。軽く前後に揺らして、体の緊張を緩めるような気持ちで行うといいでしょう。ひざを揺らす際には、ひざをそろえて動かすことが重要です。それが股関節のずれの修正に役立つのです。
ひざを前後に20〜30回揺らして1セットとして、少なくとも1日1セット、できれば朝晩に1セットずつ行いましょう。
私も、以前、耳鳴りに悩んでいたことがありましたが、このひざゆらしを1ヵ月続けて、みごとに解消できたのです。
ひざゆらしとともに、日常生活における悪いクセを直すことを心がけていれば、より早く効果が現れるでしょう。