ゆっくり深く押し「ひびき」を感じる
ひざの痛みは、その原因から二つに分けることができます。
一つは、ひざに構造的な障害があって痛みが起こるものです。例えば、転んで半月板を損傷したとか、ひざの周囲の靭帯を痛めたといったケースです。この場合、まず病院で診察を受け、治療を行うことが優先です。
いま一つは、機能的な障害によって痛みが生じる場合です。病院に行っても、原因がはっきりわからないといわれるケースが、これに該当します。
整形外科でレントゲンなどを撮って、「どこも悪くありませんよ」といわれた経験はないでしょうか。そういわれても、実際には、やはりひざが痛む。しかも、このようなひざ痛に悩まされているかたは、かなり多いのです。この機能的な障害による痛みは、ひざ痛の60%以上を占めるといっていいでしょう。
では、この原因不明のひざ痛はどんなことによって引き起こされているのでしょうか。その主因と考えられるのが、ひざ周辺の血行不全です。
ひざの関節には、正中動脈をはじめとして5本の動脈が通っています。これらのどこかに、血行が悪くなっているところがあるのです。血液が十分に行き届かなくなったとき、まずいちばんに生じる自覚症状が痛みなのです。
こうした痛みを解消するためには、血行不全を解消する必要があります。血液循環がよくなると、痛みも軽減し、ひざ関節の動きも楽になってきます。
では、どうやれば、ひざの血行不全を改善できるのでしょうか。そこで私がお勧めしたいのが、ひざにある三つのツボへの刺激です。まず、ツボの位置をご説明しましょう。
立って、自分のひざのお皿を見てください。ひざのお皿の下のへりの左右両わきに、ちょうど眼のように、くぼみが二つできているのがわかるでしょう。これが、文字どおり、外膝眼と内膝眼というツボです。
もう1点は、ひざのお皿の上部中央のへり、ひざについている腱(筋肉と骨を結びつけている組織)と腱の間にある、鶴頂というツボです。鶴頂は、すべてのひざ痛に使うことができるツボとされています。
この3点を刺激しましょう。痛む側の足に行います。やり方は次のとおりです。
イスなどに座って行うと、やりやすいでしょう。ツボ刺激に使う指は、どの指でもかまいません。自分でやりやすい指を使ってください。
ツボに指を当てたら、「1、2、3、4、5」と数えながら、5秒かけて、深く圧力を加えていきます。〝ひびき〟を感じたら、7秒間押し続けます。そして5秒かけて、ゆっくりと力を抜きます。
これを1回と数え、一つのツボにつき5〜7回、刺激しましょう。時間にすれば、3〜5分ほどが目安です。この三つのツボをひととおり刺激するのを1セットとして、朝晩1セットずつ刺激することをお勧めします。
ひざ痛に効果のあるツボの位置

熱を持つ痛みのときは ツボ刺激を行わない
注意点としては、あまり強く刺激しないことです。やたらに強く押せばいいと思っているかたも多いのですが、逆効果になる場合が少なくありません。押して気持ちよい強さにとどめてください。「これくらいでは弱いのではないか」というような強さのほうが、けっきょくは、よい効果が現れるはずです。
なお、ひざが赤く腫れ上がっていたり、ポッポッと熱を持ち、痛みが出ていたりするときなどは、この刺激は行わないようにしてください。こうした場合は、患部を冷やして、整形外科などで診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。
一方、血行不全による痛みが出ている場合なら、ひざが赤く腫れたりすることはないはずです。逆に、患部に触ると、ひんやり冷えていることが多いものです。
冷えることで、血行もいよいよ悪くなり、患部の状態も悪化します。この意味でも、保温効果が期待できるサポーターは勧められます。
原因不明のひざ痛に悩んでいるかたは、3点ツボ刺激をぜひ試してください。
解説者のプロフィール

佐藤一美
日本経絡指圧会会長。胃腸病、腰痛、ひざ痛の治療などに定評があり、鍼灸治療にも精通している。『本当に効く「ツボ」が正しく押せる本』(マキノ出版)などの著書がある。