解説者のプロフィール
もむより効く!1円玉でこり解消
子どもの頃から1円玉は、私にとって特別な存在でした。
1円といえども大切なお金ですが、私にとってそれはお金というよりも治療器具でした。
川村家は祖父の昇山から治療家の家系で、病弱だった私に、祖父や父は、発熱、ねんざなど体の調子が優れないときには、1円玉をテープではってくれました。すると体がらくになるので、当時は何かのおまじないかと思っていました。しかし長じるにつれ、それが鍼の代わりに使われていることを知ったのです。
その頃、硬貨ならなんでも効くと思い、見よう見まねで10円玉や100円玉をはったこともありますが、のちにアルミニウムでできた1円玉だから効果があることも、知りました。
私が鍼灸の専門学校に通っていた頃、祖父の考案した1円玉療法が学校の授業で紹介され、「じいちゃん、すごい!」と、内心誇らしく思ったことを覚えています。
当時は学生だったので、本物の鍼はまだ使えず、その代わりに1円玉を使って同じく治療家を志す学友の腰痛や肩こりをらくにしてあげたこともありました。もんだり押したりするよりもよく効くので、みんな驚いていました。
私自身、1円玉を使って身近な人々を健康にした体験があったから、当時は知識にしかすぎなかったツボの位置と効果を、鍼灸師として自分の技術に昇華できたと思っています。
自分で鍼灸院を開業してからは、通常の鍼治療のほかに1円玉療法も取り入れ、患者さんのアフターケアとして自宅でやっていただいています。
昔は、どこに行くにも鍼を持ち歩いていました。何かあったら、すぐに鍼を打てばいいと思っていたからです。しかしいつしか、鍼を持ち歩かなくなりました。代わりに、1円玉は必ず財布に余分に入れてあります。何かあったときの応急処置に、すごく重宝するからです。
特に腰やひざに慢性痛を抱えている人は、この療法を知っておくと便利です。痛くなったら、その場で対処できるからです。痛みに対処できると、「痛くなったらどうしよう」という不安が消え、安心して外出できます。その安心感が、痛みの予防にもつながります。
また、1円玉療法の効果ははっている間、持続するので、痛みの再発を防いでくれます。

佳耀先生も治療に取り入れている1円玉療法
慢性化した腰痛がわずか2時間で消えた
患者さんの実例を出しながら、1円玉療法の効果をご紹介します。
ある60代女性は、変形性ひざ関節症が悪化し、病院のリハビリに長期間通っていました。歩くこともままならないほどに、ひざが痛い状態で私の治療院を訪れました。
そのかたには治療後、1円玉療法を教え、両足のくるぶしに1円玉をはってもらいました。すると、3日目の朝に、ひざの痛みが引き、その後もはり続けて、普通に歩けるまでにひざが回復しました。
痛みの改善は枚挙にいとまがないのですが、もう一例紹介します。ある20代男性の患者さんは、立ち仕事による背中の張りと腰痛が慢性化していました。
そこで、両足のすねの外側と親指の付け根に1円玉をはって帰宅してもらいました。その2時間後、本人から「背中の張りと腰の痛みが消えた!」と喜びの電話をもらいました。
1円玉療法は胃もたれにも効く
最近は患者さんだけでなく、いろいろな治療家のかたも、1円玉療法を実践しています。
知り合いの、トークセン(タイの古式民間療法)の治療家をしているSさん(40代・男性)が、家族旅行でタイに行ったときのことです。1歳のお子さんが、飛行機中で疳の虫が起き、泣いて騒ぎ出しました。
Sさんはすぐに疳の虫に効くところ(背中全体)を1円玉でこすったそうです。するとすぐに疳の虫が治まり、とても助かったと感謝されました。
また、Sさんのお弟子さんは、慣れないタイ生活による、精神的ストレスのせいか、胃もたれや胃の痛みなどの不調が続いていたそうです。
そこで、おへそとみずおちの間にある胃の不調に効くツボ(中脘)に1円玉をはり続けたそうです。すると、すぐに症状が消えて、らくになったと聞きました。
1円玉療法は、鍼のように正確にツボの位置を探さなくても、直径cmほどの広い面でツボを刺激できます。
なかには、見つけにくいツボもあります。もし正確な位置がわからなければ、痛みやこりの強い患部に直接はってもいいでしょう。続けることで、きっと今よりも健康になれます。
川村佳耀
佳耀弘漢鍼灸院院長。鍼灸師、柔道整復師。1円玉療法の生みの親、川村昇山の実の孫。1円玉療法を積極的に治療に取り入れる。1分間の脈診で体の状態を調べて、治療に生かすことを得意とする。