MENU
【便が漏れる】緩んだ肛門を締めて便失禁をストップ「肛門しぼり」のやり方

【便が漏れる】緩んだ肛門を締めて便失禁をストップ「肛門しぼり」のやり方

私のクリニックには、便秘や下痢など、さまざまな排便障害を抱えた人が来院します。そのなかで、近年急速に増えているのが、便もれ(便失禁)です。その原因と治療法について解説します。尿もれに比べ、便もれや便失禁という言葉は、あまり聞いたことがないかもしれません。【解説】後藤利夫(新宿大腸クリニック院長) 

便もれに悩む人は約500万人!

 私のクリニックには、便秘や下痢など、さまざまな排便の悩みを抱えた人が来院します。そのなかで、近年急速に増えているのが、便もれ(便失禁)についての悩みです。
 尿もれに比べ、便もれや便失禁という言葉は、あまり聞いたことがないかもしれません。
 というのも、便もれの症状がある患者さんは、その大半が誰にも相談できず、1人で悩みを抱え込んでいるからです。便もれしているのは、自分だけと思い込む人もいるほどです。
 しかし、日本では現在、便もれに悩む人が約500万人いるとされています。将来的にもっと多くの人が、便もれの悩みに直面すると予想されます。

便もれ(便失禁)の原因とは

 便もれが起こる原因は、下痢や軟便、肛門括約筋の衰え、痔などの肛門の病気、神経障害などさまざまです。意外にも、便秘も便もれの原因となります。直腸にたまった便がかたくなり、肛門を押し広げて、かたい便と腸壁のすきまから便汁が出てしまうことがあるのです。
 さまざまな原因のなかで、圧倒的に多いのは、肛門括約筋の衰えによるものでしょう。
 消化器が専門の私は、これまでに4万人以上の患者さんに、腸の中を観察する内視鏡を肛門に入れる仕事をしてきました。内視鏡を入れる前に、肛門に指先を入れ、直腸を触診します。
 その経験からいえるのは、70歳を過ぎても肛門がキュッと締まっている人もいれば、まだ40代なのに締まりが緩くなっている人もいるということです。
 そして、肛門の締まりが悪い人に、便もれがないかと尋ねると、大半の人が「実は……」と悩みを打ち明けてくれます。
 便もれを改善するには、肛門括約筋を強化し、肛門の締まりをよくすることです。そこで、私は、肛門括約筋を鍛えて強化する「肛門しぼり」というエクササイズを考案しました。

便もれを改善する「肛門しぼり」

 肛門しぼりは、呼吸に合わせて、肛門を締めるエクササイズです(下の写真図解参照)。
 私が肛門しぼりを考案するに至ったのには、二つのルーツがあります。
 一つは、日本初のヨガ行者として高名な、「心身統一法」を説いた中村天風氏の教えです。これは「クンバハカ」というもので、肛門を締めて、肩の力を抜いて肩を下げ、下腹に力を充実させるヨガです。
 天風氏がインドで修業をしたのは、今から100年くらい前のことです。当時のインドでは、道端で生き倒れている人がたくさんいました。天風氏は、そういう人を助けるかどうかを判断するときに、肛門に指を突っ込み、肛門が締まる人を助けたそうです。つまり、肛門を締める力は、生きる力だと考えていたのです。
 もう一つのルーツは、空手の鎌形 勇先生(千葉県空手道連盟会長)に教えていただいた、「三戦」という空手の型です。
 三戦は、立った姿勢で肛門と丹田に力を入れながら、息を「フーッ」と吐き切る下半身の鍛練法です。私は、この三戦の型が、肛門括約筋を強化して肛門を引き締め、おなかの筋肉を鍛える効果が高いと考えました。
 そして、偶然にも、天風氏の説いた、ヨガと全く同じであることにも気づいたのです。

「肛門しぼり」のやり方

尿失禁の改善にも役立つ!

 肛門しぼりは、立って行うのが基本ですが、それでは難しいようなら、イスに座って行ってもいいでしょう。ただし、座って行う場合、肛門を締める動作がやりづらく感じるかもしれません。そこで、イスの座面からお尻を少し浮かして肛門を締めると、うまく肛門括約筋を強化できるはずです。
 肛門しぼりは、朝、昼、晩の1日3回、食前に行いましょう。食後に行うと、消化吸収の妨げになるので要注意です。
 これまで、便もれに悩む多くの患者さんに、肛門しぼりを指導してきました。その多くから、「便もれがなくなり幸せです」という声を聞いています。便もれの予防・改善だけでなく、尿失禁の改善にも役立つので、実行してみてください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

関連記事
肛門(お尻の穴)の痒み、ただれで悩んでいる女性は、非常に多く見受けられます。痒みの原因には、カンジダ菌やイボ痔、切れ痔のケースもありますが、そのほとんどは過剰なお尻のケア(洗い過ぎ、拭き過ぎ)です。医療機関で適切な治療を受ける必要があります。【解説】野澤真木子(医療法人社団桃仁日本橋レディースクリニック院長)
更新: 2019-09-10 22:10:00
さまざまな原因によって、肛門周辺の毛細血管に血行障害が生じ、それが痔を引き起こすのです。そこで、痔の予防、あるいは、痔の症状を和らげるためには、肛門周辺の血行障害を改善することが欠かせません。血流障害を改善することを心がけた結果、ついに切れ痔を克服することができたのです。【解説】日野勝俊(ヒノヘルスオフィス院長)
更新: 2019-09-10 22:10:00
痔の主原因は便秘です。固くなった便が肛門を傷つけ、それが痔の原因となります。便は、強いアルカリ性の老廃物です。便秘によって肛門が傷つけられると、そこから細菌が入って炎症を起こすのです。痔の予防には便秘を解消することが大切。そこでお勧めは、牛乳にきな粉を入れて飲む、きな粉牛乳です。【解説】平田雅彦(平田肛門科医院院長) 
更新: 2019-09-10 22:10:00
突然ですが、問題です。痔になりやすいのはどんな職業の人でしょうか?痔は、ほかの疾患と異なり、恥ずかしさから、どうしても受診をためらいがちです。だからこそ、ふだんから痔になりにくい生活を心がけ、セルフケアに努めることが大切です。患者さんにお勧めしているのが「肛門カイロ」です。【解説】草間香(草間かほるクリニック院長) 
更新: 2019-09-10 22:10:00
かつては、痔には「診察を受けるのが恥ずかしい」とか、「病院に行くとすぐに手術される」といった、あまり良くないイメージがありました。また「痔の手術は痛い」「手術しても痔は再発する」と考えている人も多かったのです。しかし、これらは、昔ながらの古い情報に過ぎません。【解説】平田雅彦(平田肛門科医院院長)
更新: 2019-09-10 22:10:00
最新記事
私は鍼灸師で、日本で一般的に行われている鍼灸治療のほか、「手指鍼」を取り入れた治療を行っています。手指鍼はその名のとおり、手や指にあるツボを鍼などで刺激して、病気や不調を改善する治療法です。【解説】松岡佳余子(アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師)
更新: 2020-04-27 10:34:12
腱鞘炎やバネ指は、手を使うことが多いかたなら、だれもが起こす可能性のある指の障害です。バネ指というのは、わかりやすくいえば、腱鞘炎がひどくなったものです。腱鞘炎も、バネ指も、主な原因は指の使いすぎです。痛みやしびれを改善する一つの方法として、「手首押し」をご紹介します。【解説】田村周(山口嘉川クリニック院長)
更新: 2020-03-23 10:16:45
筋肉がこわばると、体を支えている骨格のバランスがくずれて、ぎっくり腰を起こしやすくなります。ぎっくり腰に即効性があるのが、手の甲にある「腰腿点」(ようたいてん)という反射区を利用した「指組み」治療です。この「指組み」のやり方をご紹介します。【解説】内田輝和(鍼メディカルうちだ院長・倉敷芸術科学大学生命科学部教授)
更新: 2020-03-02 10:09:34
慢性的な首のこり、こわばり、痛みといった首の不調を感じたら、早めに、まずは自分でできる首のケアを行うことが大切です。【解説】勝野浩(ヒロ整形クリニック院長)
更新: 2020-02-25 10:06:07
首がこったとき、こっている部位をもんだり押したりしていませんか? 実は、そうするとかえってこりや痛みを悪化させてしまうことがあります。首は前後左右に倒したりひねったりできる、よく動く部位です。そして、よく動くからこそ、こりや痛みといったトラブルを招きやすいのです。【解説】浜田貫太郎(浜田整体院長)
更新: 2020-02-17 10:18:14

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル