切れ痔の原因は便秘の裂傷、いぼ痔も固い便が原因のことも
突然ですが、問題です。痔になりやすいのは、どんな職業の人でしょうか?
答えは、男性なら、タクシーやトラックのドライバー。女性なら、スーパーのレジ係や、デスクワークの事務員です。共通しているのは、同じ姿勢を長時間取り続けるという点です。立ち仕事にしろ座り仕事にしろ、長時間同じ姿勢でいると全身の血行が悪くなり、お尻の血行も当然悪くなります。
肛門周辺の静脈に血液がたまると、それが引き金となり、肛門の内や外に、イボ痔(痔核)ができやすくなるのです。
切れ痔の場合も、原因の根本には血行不良があります。血流が悪いと、腸の機能が低下。便秘になると、かたい便が肛門を通る際に裂傷が生じます。下痢も同様で、水様便が高い頻度で出ると、やはり肛門が切れてしまいます。こうした肛門の傷が、切れ痔を招くのです。また、かたい便は、イボ痔の原因にもなります。強くいきむことで、肛門周辺の血管に負荷がかかるからです。
ですから、痔の予防と改善のためには、
・血行をよくする
・よい排便習慣を身につける
この二つが重要となります。
痔は受診しづらいからこそセルフケアが大切!
痔は、ほかの疾患と異なり、恥ずかしさから、どうしても受診をためらいがちです。だからこそ、ふだんから痔になりにくい生活を心がけ、セルフケアに努めることが大切です。
そこで私が、患者さんにお勧めしているのが、使い捨てカイロを肛門に当てるというセルフケアです。やり方は、生活パターン別に、2種類あります。
痔のセルフケア「肛門カイロ」のやり方
❶下着の上からカイロを貼る
この方法は、立ち仕事が多い人向けです。まず、低温ヤケドを防ぐため、下着を複数枚重ねて着用しましょう。肛門の位置を確認したら、その上からカイロを貼ってください。
❷カイロの上に座る
こちらは、座り仕事が多い人にお勧めの方法です。イスの上にカイロを置いて座ります。
①②いずれも、熱過ぎると感じたらカイロを外しましょう。また、肛門周囲腫瘍や痔ろうを患っている人は、行わないでください。

違和感や腫れ、痛みの軽減に効果を発揮!
カイロの温熱作用により患部の血行が促されることで、違和感や腫れ、痛みなどの軽減に効果を発揮します。早い人なら、1~2日で効果が現れるでしょう。痔の手術をした患者さんには、痛み止めの薬を処方しますが、術後すぐに肛門を温めたところ、飲まずに済んだケースもあるほど、よく効くのです。
内側からのセルフケアも取り入れる
外側からのみならず、内側からのセルフケアも重要。栄養バランスのよい食事を、3食きちんととってください。
腸の動きをスムーズにするためには、水分補給も大切です。刺激の少ないお茶やスープなどで、1日に1・5~2ℓの水分をとるよう勧めています。もちろん、アルコールは別ですよ。
排便のタイミングは、特に腸が活発に動く朝食後が理想的。時間に余裕を持ち、便意を逃さないようにしましょう。5分くらいトイレでがんばっても出ないときは、いったんあきらめて仕切り直してください。温水洗浄便座を使う場合、水圧は弱め、水温は水か、ぬるま湯で。お尻の皮膚はデリケートです。シャワーを当てる時間は、10秒以内にしましょう。
これらの方策を試しても症状が改善されなかったり、不安に感じたりするようなら、迷わず専門医を受診してくださいね。
解説者のプロフィール

草間香(草間かほるクリニック院長)
●草間かほるクリニック
東京都港区麻布十番3-5-1 バルゴ麻布ビル5F
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