解説者のプロフィール

内田泰文(うちだ・やすふみ)
●豊中愛鍼灸整骨院
大阪府豊中市本町7-1-31エイコー本町ビル1F
06-6849-5311
http://www.toyonaka-aiseikotsuin.jp/
柔道整復師。豊中愛鍼灸整骨院院長。聖路加病院の故・日野原重明氏の影響で、医療の道を志す。体の痛みやしびれから、姿勢改善、ダイエットまで、幅広い治療を行う。治療技術の高さと、わかりやすい説明、親しみやすい人柄に定評がある。
足の中指はバランス機能回復スイッチ!
腰、ひざ、股関節の痛みに悩む患者さんは、後を絶ちません。痛みのきっかけはさまざまですが、原因はただ一つ、「体のねじれ」です。
では、ねじれはどこから起こるのでしょうか。
人間が立つとき、地面に唯一接しているのは足底(足の裏)だけです。足底の感覚受容器(外界からの刺激や情報を受け入れる器官)が正常に機能し、地球の重力に従って、まっすぐ立つことができれば、体がふらつくことはありません。地球の中心に向かって立てば、本来、よけいな力やふんばりは不要です。
まっすぐ立てなければ、倒れないために、体に力が入り、かえってグラグラします。持続的に筋肉が疲労するので、血流や神経伝達が滞り、コリや痛みが生じるのです。
健康な足底には、三つのアーチが形成されています。内側アーチ(土踏まず)と横アーチは、着地時の衝撃を吸収し、ほかの関節への負担を軽減しています。外側アーチは、小指(第5趾)を働かせて、体が外側に傾くのを防ぐ役割を担っています。
三つのアーチが整っていれば、5本の足の指がしっかり床につき、地面の情報をキャッチできます。
足底には、感覚受容器が多く存在し、それが通常、バランスを維持しています。ところが、悪い姿勢や運動不足、血流の悪化などにより、感覚受容機能が低下すると、体が不自然に曲がっていても気づかなくなります。
不自然な状態が続くと、筋肉や関節が固まります。これが、「ゆがみ」です。当然、痛みも悪化します。
ですから、体の痛みを改善するには、足底の感覚を取り戻すことが基本となります。そうすれば、自己調整力が働いて、まっすぐに立つことができ、こわばりは自然に取れていきます。血液と神経の流れがスムーズになるので、痛みの改善・予防に役立ちます。
「体のバランスをとる機能」を回復するスイッチが、足の中指(第3趾)です。中指のゆがみを正すと、脳へ正常な情報を送れるようになるのです。
「足の中指回し」のやり方
私が治療に活用し、セルフケアとして患者さんに勧めているのが、「足の中指回し」です。
足の中指にねじれが起こると、足のアーチがくずれ、全身にゆがみが波及します。中指を回して緩めると、ゆがみが取れやすい体になります。アーチが本来の形に復活し、足の指も使えるようになって、しっかり立つことができます。
土台が安定すれば、体をこわばらせる必要がなくなります。筋肉が緩みやすくなり、血液と神経の流れがスムーズになります。その結果、痛みやコリが改善していくのです。
中指だけでなく、すべての指を回せばさらに効果的です。しかし、これまでの臨床経験から、左足の中指を回すだけでも、十分な効果を得られることがわかりました。ですから、今回は左足の中指だけを回す方法をご紹介しましょう。
左足の中指を右手の指で軽くつまみ、ひねる感じで回します。詳しいやり方は、図解をご覧ください。
足の中指回しは、1回行うだけでも、効果を実感できます。実際、1回だけで、足の安定感が増し、歩くスピードがアップしたり、曲がっていた腰が伸びたりした人もいるのです。

ねじれて固まった指を、まっすぐに戻すイメージで行う。
健康な足底には、三つのアーチ(上部が半円形になった構造)が形成される

❶左足の中指の第1関節(最も爪に近い関節)を右手の指でつまみ、ペットボトルのふたを開ける方向へ1回(①)、閉める方向へ1回(②)、開ける方向へ1回(③)、ひねるように回す。

❷第2関節をつまみ、今度は、ふたを閉める方向へ1回(①)、開ける方向へ1回(②)、閉める方向へ1回(③)、回す。

❸指の根もとをつまみ、第1関節と同じように、ペットボトルのふたを開ける方向へ1回(①)、閉める方向へ1回(②)、開ける方向へ1回(③)、回す。

※指が縮こまっていたら、指の裏を伸ばすように5回ほどさする。
足の中指を調整することで全身が緩む理由は、もう一つあります。
最近、「筋膜」という言葉をよく耳にしませんか。筋膜とは、筋肉を包む膜のことで、全身に張り巡らされています。
ピッタリサイズのウエットスーツを想像してください。ウエットスーツがやわらかく、体に合っていれば快適ですが、1ヵ所でも引きつれやねじれがあると、着心地が悪くなり、体の動きにも支障が出ます。
同じように、筋膜の引きつれやねじれが、体のコリや痛みの一因になるともいわれているのです。
足の中指の筋膜は、全身とつながっています。ですから、足の中指の筋膜を調整することで、全身の筋膜の引きつれやねじれが元に戻るというわけです。
こわばりが取れると、体を休息モードにする副交感神経が優位になるため、血流がよくなり、睡眠の質も上がります。その結果、肩こりや生理痛、便秘が改善したり、不眠、疲労が解消したりするなどの健康効果が得られた人は少なくありません。
足の中指回しは、できれば朝昼晩、1日3回行ってください。体は、睡眠中に骨格のゆがみや細胞の損傷を修復するので、特に就寝前がお勧めです。
かかとの上下運動のやり方
次に、足の中指が頭部までつながる感覚を強化し、全身を緩めるのに有効な体操を紹介します。
6分目まで水を入れたペットボトルを頭にのせ、左右のかかとを交互に上下させるのです。
足の中指を回すことで重心が安定し、大腰筋という深層にある筋肉(インナーマッスル)が働きやすくなります。その状態でかかとを上下します。初めは難しいかもしれませんが、毎日続けることで、頭上のペットボトルを落とさずにできるようになるでしょう。
大腰筋は、上半身と下半身をつないでいます。大腰筋を上手に使うと、ゆがんだ骨盤が正常に戻り、腰痛やひざ痛、股関節痛、ネコ背やO脚などの改善が望めるでしょう。
