
手足のツボは脳に強い影響を及ぼす
腰痛は、西洋医学でも完治が難しいといわれています。そのため近年では、医学界で腰痛をはじめとする慢性的な不調の治療法として、東洋医学への関心が高まっています。
私自身も、岡山大学医学部や倉敷芸術科学大学で、経絡(気の通り道)についての講義をさせていただきました。
腰痛に効果のあるツボというと、腰腿点が有名で、急な痛みにも慢性痛にも効果があります。このツボは、手の甲に二つあります。一つは人さし指と中指の骨が交差する辺り、もう一つは中指と薬指の骨が交差する辺りです。
この腰腿点もそうですが、私たちの体は、手や足などの末梢部に有効なツボが集中しています。これは、末梢部への刺激ほど、脳へ強い影響を及ぼすためと考えられます。
腰腿点への刺激も、脊髄を通って脳へ至り、痛みを抑制するホルモンの分泌を促すのかもしれません。
事実、腰腿点への刺激は、即効性で知られています。当院でも、ひどい腰痛のため杖をついて来院された70代の女性が、治療後、杖を忘れて帰るほど痛みが軽減した例があります。
前述したように、腰腿点は、左右の手の甲に二つずつ、合計で四つあります。この四つのツボを同時に刺激できる簡単な方法があります。
まず、左右の指を組み合わせて手を組み、手のひら同士は離します。そのままひじを張り、親指以外の指を軽く立てるようにしてグッと手の甲に押し込むと、四つの腰腿点が刺激されます。
これが、基本の手の組み方になります。基本の手の組み方をすれば、多少ツボの位置がずれていても、効果が得られます。
次に、呼吸と合わせて前屈を行います。前屈が不安な人は、イスに腰掛けた状態で行ってもよいでしょう。
腰腿点のツボ刺激は、腰が痛いときに行えば、痛みがすぐに和らぎます。また、腰痛が起こりそうなときに事前に行えば、痛みを防ぐことができます。腰に負担がかかりやすいデスクワークや、車の運転の合間などにも、お試しください。
腰痛に悩まされている人の中には、ふとんから起き上がるのが不安だという人が少なくありません。そんなときは、ふとんに寝た状態で腰腿点を刺激してみましょう。
あお向けで行う方法は、以下のとおりです。
①あおむけに寝て、ひざを立て、手を基本の形に組み、手のひらを足のほうへ向ける。
②ひじを張り、腰腿点を刺激しながら、ゆっくりとひざを左右交互に倒す。
③①~②を5回くり返す。
また、日常で体をひねるときに、腰に不安が生じるという人は、左の写真1の姿勢で、上体ごと腰をゆっくりと左右に振ってください。腰痛が起こりにくくなっていきます。
内田式腰腿点のツボの位置

「腰腿点の刺激」のやり方

ネコ背の矯正にもなる
腰痛の原因はいろいろありますが、私自身は、お尻の筋肉のたるみと、悪い姿勢が深く関係していると考えています。
基本の体操を行うときは、左右のかかとを着けて、お尻を締めて、胸を張るようにすると、お尻の筋肉が鍛えられます。今は痛みがなくても、腰痛予防のために、ぜひお試しください。
お尻を締めたまま腰腿点を刺激すれば、お尻、腰、背中の筋肉をバランスよく使うことになります。
腰痛の予防・改善だけでなく、ネコ背の矯正や、年配者の腰の変形の予防にもお勧めです。
解説者のプロフィール

「即効性がある」と内田先生
内田輝和
1949年生まれ。倉敷芸術科学大学教授。関西鍼灸柔整専門学校卒業。
鍼メディカルうちだを岡山と東京に開設。
『10秒顔さすりで老眼、近視、緑内障はよくなる』(主婦の友社)など、著書多数。
●鍼メディカルうちだ
http://medical-uchida.com/