解説者のプロフィール
スマホのヘビーユーザーに急増中の手首の腱鞘炎
かつては、料理人や理・美容師など、手を酷使する人に多い「職業病」といわれた腱鞘炎。この腱鞘炎が若者を中心にビジネスマンや主婦などに多発し、いまや「国民病」とまでいわれるようになっています。
その背景にはスマホやパソコンの普及がありました。すなわち、スマホやパソコンのやりすぎにより、腱鞘炎になる人が急増しているのです。
ビジネスマンは仕事でパソコンをよく使い、主婦はパソコンでネットサーフィンやネットショッピング、そして中高生はスマホが生活必需品となっています。
中高生もビジネスマンも主婦も、腱鞘炎の人はみなパソコンやスマホのヘビーユーザーばかりです。
ところが、この腱鞘炎という病気は、病院に行ってもなかなか治りません。たいていは湿布を出されるか、痛み止めの注射をされるだけ。それでもよくならないと手術をすすめられます。しかし、手術をしても再発率が高いのが実情です。
腱鞘炎の発症メカニズム

腱鞘炎は手首・ひじ・指の痛みに分けられ、指の腱鞘炎は「バネ指」と呼ばれる
そもそも、腱鞘炎とは、どのような病気なのでしょうか。
腱鞘炎とは、腱をおおう腱鞘に起こる炎症のことで、強い痛みや腫れ、熱感を伴います。
腱は筋肉と骨をつなぐ結合組織で、筋肉の動きを関節に伝えています。一方の腱鞘はトンネルのような形をしていて、何本もある腱がバラバラにならないように、あるいは腱がスムーズに動くよう固定しています。つまり、トンネル状の腱鞘の中を腱が通っていて、体を動かすと腱鞘の中を腱が行ったり来たりするのです。
私たちが手の指を動かすときは、指の腱鞘の中を腱が動いています。通常、腱は腱鞘の中をスムーズに動いています。このときはもちろん、痛みを感じることはありません。
しかし、指を速く動かせばそれだけ腱が腱鞘の中を激しく動き、動かす回数が多ければ腱と腱鞘がこすれ合う回数も多くなります。こすれ合いすぎると、腱や腱鞘が炎症を起こし、腱は太くなり、腱鞘は内腔が狭くなって動きがスムーズでなくなります。
こうなると余計に腱と腱鞘が強くこすれ合うようになり、炎症が悪化して、ついには指を動かすたびに「痛い!」となります。これが腱鞘炎です。
腱鞘炎は手に起こることが多く、痛みの元になっている炎症がある部位によって、手首の腱鞘炎、ひじの腱鞘炎、指の腱鞘炎の三つに大きく分けられます。指の腱鞘炎は「バネ指」とも呼ばれています。
アイヒホッフテストのやり方
前述したように、腱鞘炎は病院に行ってもなかなか治りません。しかし、腱鞘炎のタイプを見極め、正しいセルフケアを行えば、たった1分で治すことができます。

ここでは、代表的な腱鞘炎のチェック法と、結果に応じたセルフケアを紹介しましょう。
手首が痛む場合は、手首の腱鞘炎が単体で起こっている場合と、ひじの腱鞘炎が隠れているケースが考えられます。そこで、ひじの腱鞘炎の有無を調べ、手首単体なのか合併型なのかを判断する必要があります。
ひじの腱鞘炎の有無を見極めるには「アイヒホッフテスト」を行います。やり方は簡単です。
①手の親指を手のひら側に曲げる
②親指を隠すように手を握る
③ひじを伸ばした状態で手首を小指側に曲げる
このテストにより、手首の親指側に痛みが出る場合は、手首の腱鞘炎が単体で起こっています。
そのなかでも、親指を真っすぐ上に向かって伸ばすと痛む場合は、短母指伸筋の腱鞘炎と考えられます。短母指伸筋の腱鞘炎には、以下のセルフケアが有効です。
自分でできるテーピングのやり方

まず、手首の親指側にあるグリグリ(茎状突起)から親指の第一関節までを、反対の手の親指の腹で10~30秒もみほぐします。
次に、図のような大きさの伸縮性のあるテープを用意します。

①親指を小指側に軽く曲げ、Aのテープを爪の下から手首に向かって少し引っぱりながら貼る
②Bのテープの裏の紙を真ん中で破ってはがし、テープの両端を引っぱって伸ばす。テープの伸びた部分を手首のグリグリにやや強く当て、固定できるよう手首の半周を圧迫するように貼り、半周ははがれない程度に軽く貼る
③Aのテープがはがれないように、CのテープをAのテープの先端に巻く
たったこれだけで、腱鞘炎の痛みは1分で消えます。ぜひお試しください。
高林孝光(アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長)
1978年、東京都生まれ。東京柔道整復専門学校、中央医療学園専門学校卒業。2016年、車イスソフトボール日本代表チーフトレーナー。上肢のケガが最も多い球技スポーツであるバレーボールの同一大会で、異なるチームに帯同して全国2連覇した、日本初のスポーツトレーナー。