解説者のプロフィール

五味常明(ごみ・つねあき)
●五味クリニック
東京都新宿区百人町1-10-12
03-3368-5126
http://gomiclinic.com/index.html
五味クリニック院長。医学博士・流通経済大学客員教授。
日本心療外科研究会代表・体臭・多汗研究所所長。1949年、長野県生まれ。一橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。
便秘の人はにおい物質が大量発生
便、おなら、息や汗のにおい。こうした体のにおいの大本は、腸で作られます。
腸では、食べたもののカスが腸内細菌によって分解され、その際に、におい物質を発生します。炭水化物などは、主に善玉菌によって分解され、二酸化炭素やメタンといった、においの少ないガスを作ります。
一方、動物性たんぱく質や脂肪は、悪玉菌によって分解され、アンモニア、インドール、スカトールなどの、悪臭を放つにおい物質を発生させます。
このにおい物質の一部は、便やおならといっしょに排出されますが、大部分は腸から吸収され、門脈を通って、肝臓に運ばれます。門脈とは、胃や腸、膵臓、脾臓からの静脈が集まった血管で、栄養素を肝臓へ運ぶ役目をしています。
そして、におい物質は肝臓で分解されたり、ほかのものに合成されたりして、無毒化(無臭化)されます。例えば、アンモニアなら、肝臓で尿素に合成され、無臭化されて尿から排出されます。
しかし、無臭化できなかったにおい物質は再び腸に送られ、一部は便やおならとして排出され、残りは肝臓に戻り、再度、無臭化されます。
このように、腸と肝臓の間を物質が循環し、無臭化されたり再利用されたりするシステムを「腸肝循環」といいます。
この腸肝循環が正常に働いていれば、腸で発生したにおい物質がスムーズに無臭化され、便もおならも体臭も、そんなにくさくはありません。
ところが、腸肝循環の機能が落ちたり、腸内でにおい物質が過剰に発生したりすると、その処理が追いつかず、におい物質が直接血中に出てしまいます。
そして、血液とともに全身をめぐり、肺から息になって出ると、くさい口臭になり、汗として出ると、きついにおいの体臭になります。また、腸の中にもにおい物質がたくさんたまり、くさい便やおならになります。
便秘の人は、特に気をつけてください。便が長く腸内にとどまっていると、それが悪玉菌に分解されて腐敗し、におい物質が大量に発生するからです。

メカブ納豆が腸の善玉菌を増やす
便やおならや体臭のにおいの元を絶つには、どうしたらいいでしょうか。私は、次の3つが重要だと思います。
①腸内の善玉菌をふやし悪玉菌をへらす。
②便秘にならない。
③においの元である動物性たんぱく質や脂肪をとりすぎない。
そして、この①と②に効果があるのが、メカブに納豆を加えた「メカブ納豆」です。
メカブには、フコイダンやアルギン酸といったヌルヌル成分(粘性多糖体)が豊富に含まれています。これが腸内を潤し、便を軟らかくして便通をよくします。
また、ヌルヌル成分が、腸で発生したにおい物質を包み込み、便といっしょに排出します。こうして、におい物質が速やかに排出されれば、それだけ体内に吸収されるにおい物質がへります。
さらに、ヌルヌル成分は腸壁にはりついて、におい物質が直接、腸から血液に出るのを防ぎます。その結果、におい物質が門脈から肝臓に送り込まれ、腸肝循環が促進されます。
このヌルヌル成分は善玉菌のすみかにもなるので、善玉菌をふやす働きもあります。
一方の納豆は、どうでしょうか。納豆には、水に溶けない不溶性の食物繊維と、水に溶ける水溶性の食物繊維が、ほぼ2対1の割合で、バランスよく含まれています。不溶性は腸を刺激して腸の動きを活発にし、水溶性は便を軟らかくして便通をよくします。メカブ同様、便秘を改善する効果が大きいのです。
また、納豆菌は、腸内の善玉菌のえさとなる栄養を作り、善玉菌をふやす働きがあります。さらに、納豆に含まれるオリゴ糖は、善玉菌のえさになるので、やはり善玉菌をふやしてくれます。このように、納豆は腸内環境の改善に大変役立つのです。

メカブと納豆のヌルヌル成分が便臭を抑制
メカブ納豆の食べ方
メカブ納豆は、同量のメカブと納豆を混ぜて食べるとおいしくいただけます。1日に、それぞれ1パック(約50g)ずつとるといいでしょう。
それとともに、ふだんの食事では野菜や海藻類などをしっかり食べ、肉や揚げ物などをとりすぎないことも大切です。そうすることで、便臭やおなら臭ばかりか、体臭や口臭までへらすことができるのです。