深層筋を強化して股関節を柔軟にする!
腰痛の改善には、足腰にしっかり筋肉をつけることが先決だと、思っている人が多いのではないでしょうか。実はその前に、しなくてはならない重要なことがあります。それは、股関節の調整です。
ご存じのとおり、股関節は骨盤と足をつなぐ、体で最も大きな関節です。それだけではありません。常に上半身の体重を受けながら姿勢を保ち、歩行を可能にしているのも、股関節の複雑な動きがあってこそなのです。
そうした過剰な労働によって、年齢とともに股関節の軟骨や接合部の骨がすりへります。また、悪い姿勢や歩き方の影響で、股関節の可動域が狭くなるなどして、股関節痛や腰痛が起こります。
これまでに、私は2万人近くの患者さんに接してきましたが、腰痛を訴えるかたのほとんどは、股関節の可動域が狭く、その動きがスムーズではありません。同時に、股関節痛と腰痛は併発して起こることが多いこともわかっています。具体的には、股関節痛のある7割から8割の人に、脊柱管狭窄症が見られるのです。逆にいえば、股関節を調整することで、難治性の腰痛である脊柱管狭窄症にも効果が期待できるわけです。
股関節の調整は治療院でも行いますが、家庭でも継続して行うことが大切です。そして、私が自宅でできる運動として勧めているのが、「脚長差の調整運動」と「8の字ゆらし」です。いずれも、運動中に痛みが出ないので安心です。
この2つの運動は、とりわけ股関節の靭帯(骨と骨との連結を支持する繊維組織)の働きを整えます。また、深層筋(インナーマッスル)を強化して、椎間板(背骨のクッションの役目をする円盤状の軟骨)への圧力を均等にし、腰椎や股関節の動きに柔軟性を持たせます。
腰のこわばりが取れ間欠性跛行が改善!
「脚長差の調整運動」は、その名のとおり、足の長さの左右差を調整する運動です。そもそも腰痛に悩む人の多くが、足の長さが左右で違います。これは、股関節の可動域が狭くなって骨盤の位置がずれているためです。その骨盤のずれを、横向きに寝て片足を前に出し、肩を背中側に倒すことで調整します。
一般的には、短いほうの足を上にして横向きに寝るのが基本です。どちらの足が短いか、自分でわからない場合は、いすに座って足を組んだときに、上になったほうの足を上にしてください。
2〜3分、姿勢をキープしたら終了です。体操前にはそろっていなかった内くるぶしの位置がそろい、足の長さが均等になっているはずです。
一方、「8の字ゆらし」は、まず、いすに浅く座って、お尻の両わきに両手をつき(または、いすをつかみ)、かかとを少し浮かせます。そして、へそを中心に前後と左右に8の字を描きます。このときに肩を動かすと、椎間板が動かないため、腰椎と股関節が調整されません。両手をいすにつくのは、肩が動かないようにするためです。
また、できるだけ大きく8の字を描くことで、腰椎や股関節を支える深層筋が動いて、靭帯が無理なく調整されます。靭帯や、関節を覆う関節包が調整されると、腰椎や股関節の不安定さが解消されます。
1日に一度、脚長差の調整運動を行ってから8の字ゆらしを行うのがお勧めですが、どちらか1つの運動を続けても効果が期待できます。ただし、痛みが激しいときや、熱感があるときは休みましょう。万が一、運動中に痛みが強くなった場合は中止してください。
この2つの運動をくり返し行うと、股関節の位置や動きがよくなります。その結果、脊柱管狭窄症の、腰を反らすと誘発される痛みも出にくくなるはずです。腰のこわばりも取れて、間欠性跛行や座骨神経痛による腰から足にかけてのしびれも改善します。
年だからと決してあきらめずに、ぜひ股関節のゆがみを自分で調整し、脊柱管狭窄症の痛みやしびれを解消してください。
「足の左右差」の調整運動のやり方

8の字ゆらしのやり方

解説者のプロフィール

大谷内輝夫
ゆうき指圧院長。1953年生まれ。「ひざ、股関節の治療では日本で一番信頼される人になりたい」という志を胸に、日々ゆうきプログラムの研究や指導に当たっている。著書に『股関節痛の94%に効いた!奇跡の自力療法』(マキノ出版)などがある。