数秒間刺激するだけで痛みが瞬時に解消する!
私たちは、ある一定の年齢になると、体の機能や器質が衰退してきます。これにより、体に痛みやしびれを感じることが多くなるのです。高齢になって痛みやしびれが発生するのは、不可避なことといってもいいでしょう。
ところが、腰や足に痛みやしびれを感じて整形外科に行くと、大半の人は脊柱管狭窄症と診断を受けます。近年は、レントゲンやMRI(核磁気共鳴画像装置)などの機器による検査が発達しており、その結果、脊柱管が衰退して狭くなっている状態が確認されるためです。
こうした脊柱管狭窄症に対し、整形外科では有効な治療法として手術が選択される場合が少なくありません。しかし、ほんとうに手術が有効なのかどうか、私ははなはだ疑問を感じています。なぜなら、手術を行っても痛みやしびれが再発することが、非常に多いからです。
ところで、脊柱管狭窄症になって脊柱管の神経根が圧迫されると、ふくらはぎの外側や、太ももの裏側などの下肢(下半身)に激烈な痛みを感じるようになります。これは、座骨神経から分かれた神経が下肢に向かって走っており、その神経の走行に異変が起こるからです。
特に、歩き続けたり、立ち続けたりすると痛みがひどくなります。こういうときに、前かがみの姿勢になると、痛みが治まることが多いのです。前かがみになると、脊柱管の狭まっていた部分が広がり、緩みます。この結果、痛みやしびれの原因である神経根の圧迫が抑制され、痛みが治まるのです。
また、ひざを曲げてしばらく休んでも、痛みは治まります。このときの状態を観察すると、ひざの少し下にある総腓骨神経周囲の筋肉が伸展しているのがわかります。筋肉の緊張がほぐれるため、総腓骨神経が支配している筋肉内の血液循環が改善し、痛みが治まるのでしょう。したがって、脊柱管狭窄症と診断されたときは、総腓骨神経の辺りを自分で圧迫しても痛みが軽減します。
しかし、このポイントを的確に見つけるのは、一般の人には難しいかもしれません。そこでお勧めしたいのが、私が考案した手の甲刺激です。
手の甲刺激は、「ペイン・シフト」という理論に基づいています。ペインは英語で「痛み」のこと、シフトは「変える、置き換える」という意味です。つまりペイン・シフト理論とは、「どんな痛みでも、痛みのない状態に変えてしまう治療法」という意味です。ツボ療法と似ていますが、全く異なります。
具体的には、症状別に存在する手の甲のポイントを、数秒刺激するだけ。それで、痛みが瞬時に解消するのです。では、ポイントをお教えしましょう。
痛む部位別にポイントは4ヵ所
脊柱管狭窄症の場合は、薬指を刺激します。そのポイントは、痛む部位別に4ヵ所あります。
まず、
【腰全体が痛い場合】は、①の薬指第2関節のやや下の真ん中です。
【大腿部の外側からひざ関節のわきにかけて痛みがある場合】は、②の薬指第2関節やや下の小指側を押します。
【ひざの下辺りから、ふくらはぎにかけて痛む場合】には、③の薬指第2関節やや上の真ん中から少し中指側に寄ったところです。
【ひざの下辺りから、すねにかけて痛む場合】には、④の薬指第2関節やや上の真ん中から少し小指側に寄ったところを刺激します。
1ヵ所だけでなく、複数箇所を刺激してもけっこうです。
刺激を与えるポイントには、押したときに、ほかとは違う「特異な痛み」があります。それは、熱いような、何かが突き刺さるような痛みです。刺激は、指先か、ボールペンの先、はしの先、つまようじのお尻の部分などを使います。
刺激のやり方は、皮膚に対して直角に当てて、強めにギュッと力を入れてください。指先なら5〜8秒、ペン先などでしたら1〜2秒、一定の方向に一定の力をかけます。
例えば、右足に痛みが出ていたら、右の薬指を刺激するというように、患部と同じ側を刺激するのが基本です。1日に何度でも刺激してください。
ところで、この手の甲刺激とともに、脊柱管狭窄症の痛みを和らげるうえでお勧めなのが、足に使い捨てカイロを貼るという方法です。ひざを曲げたときに、ひざ裏に腱が左右に飛び出すのがわかると思います。カイロを貼る場所は、その左右の腱に沿って、太ももの内側、外側の2ヵ所です。日常的にカイロを貼って温めておけば、痛みが緩和されます。
手の甲刺激のやり方

解説者のプロフィール
大津整骨院院長
石橋輝美(いしばし・てるみ)
●大津整骨院
神奈川県横須賀市大津町2-1-21
TEL 046-836-0062