中高年は股関節周辺の筋肉が硬くなりがち
体の柔軟性は、人によりさまざまですが、共通していえることは、年齢とともにだんだん硬くなってくるということです。
その上、中高年になると、普段体を動かさない人が増える傾向があります。皆さんの中にも、一日の大半をテレビの前で過ごしているという人が、いるのではないでしょうか。
体を動かさないと、関節の動きが悪くなります。すると動くのがおっくうになり、体はますます硬くなっていくのです。
関節の曲げ伸ばしは、骨についている筋肉の動きによって行われます。ですから、この筋力が衰えてしまうと、関節の動きが思うようにいかなくなります。そのため、硬くなり、動かしにくくなった体に柔軟性を取り戻すには、まず、衰えていた筋肉を無理なく鍛えることが大切なのです。
特に、中高年に多いトラブルの一つが、股関節が硬くなり、動かしにくくなるというものです。股関節やその周囲の筋肉が硬くなり、股関節を支えたり動かしたりする力が衰えると、歩行時に股関節が痛んだり、腰痛、ひざ痛、足首痛が起こったりする原因にもなります。
それにより、ますます動くのが嫌になり、股関節がいっそう硬くなるという悪循環に陥ってしまうのです。
股関節は、日常の多くの動作に影響する大切な部分です。股関節の動きが悪いと、足を上げにくくなるので、階段の上り下りがしにくくなったり、平らなところを歩くだけでも、つまずきやすくなったりします。また、立つときにもどこかに手をつき、やっと立ち上がるという感じにもなります。
このような日常生活だけでなく、ゴルフなどのスイングをする場合も、重要になるのは股関節の柔軟性です。股関節がうまく動かないと、腰もスムーズに回転しません。
股関節と内転筋群の位置
開いた骨盤も引き締まる
このゴム風船を使って行う股関節の風船つぶし整体では、主として内転筋群を鍛えることができます。
内転筋群は、骨盤の下から始まって、太ももの内側を通り、ひざのほうへと伸びている筋肉です。内転筋群は、股関節を曲げたり、旋回したりするときに、重要な働きをするのですが、この太ももの内側を通る筋肉は、普段の日常生活では、なかなか鍛える機会のない筋肉でもあるのです。
特に、座りっ放しでいる時間の増える中高年の場合、最も衰えやすい筋肉の一つといえるでしょう。
内転筋群が弱った人は、必ずといっていいほど、骨盤がゆがんで開いている傾向があります。骨盤が開くと、股関節の収まりが悪くなります。正常な股関節では、大腿骨の骨頭(上端の丸い部分)の約3分の2が、骨盤の臼蓋(骨盤の受け皿)の中に包まれています。これにより、姿勢が安定するのです。しかし、内転筋群が衰えると、骨盤の臼蓋から骨頭が離れてしまうため、骨盤が歪み、その影響が全身に表れます。
そのため、骨盤が開いている人は、ひざ痛やO脚を招きやすく、ネコ背にもなりやすいのです。また、下腹がポッコリ出るような姿勢になることで、代謝が悪くなり、太りやすくなります。
内転筋群を鍛えると、股関節が正常な状態で維持されるようになり、骨盤も締まるので、股関節の動きがスムーズに動かしやすくなるのに加え、姿勢がよくなり、ひざ痛やO脚、ネコ背も解消していきます。また、血行もよくなるので、体が冷えにくくやせやすい体質になってくるのです。
風船つぶし整体によって股関節の動きがよくなると、歩き方がまず変わってきます。足の運びがらくになり、立ち上がるときや階段の上り下りも、スムーズになります。また、体のバランスが自然に取れるようになるので、姿勢もぐっとよくなることに気が付くはずです。
最近、股関節に痛みを感じる、動かしにくくなったと感じる人は、一度この風船つぶし整体を試してください。
風船つぶし整体のやり方

解説者のプロフィール

花谷 貴之
1973年生まれ。国士舘大学体育学部卒業。トレーニングマシンや筋力測定器などを販売する会社に入社し、トレーニング理論や運動学に精通する。その後、柔道整復師の資格を取得。現在は埼玉県富士見市で花谷接骨院を運営する。
股関節の衰えを予防するには、日ごろから適度な運動をして、股関節周辺の筋肉を鍛えてサポート力を高めることです。
しかし、そうはいっても、適当な運動がなかなかわからない、毎日続けるのは大変だという人も多いでしょう。そのため、私が中高年の人に特にお勧めしているのが、「風船つぶし整体」です。
股関節を柔軟にする風船つぶし整体は、ゴム風船を股に挟んでつぶし気味にし、腰を回すだけという簡単な運動です。この方法は、安全にでき、しかも短時間で効果を得られるというメリットがあります。
膨らませたゴム風船は、空気の反発力を持っていますが、その力は、運動に不慣れな人でも、たやすくつぶせる程度です。とはいえ、ゴム風船を股で挟み、力を入れてつぶした状態を保持しようとすると、筋肉には適度な負荷がかかります。つまり、ゴム風船は、強過ぎず弱過ぎず適当な負荷をかけることができる、最高のトレーニングマシンといえるのです。