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【変形性股関節症の最新手術】キアリ骨盤骨切り術は関節温存手術

【変形性股関節症の最新手術】キアリ骨盤骨切り術は関節温存手術

変形性股関節症は、関節軟骨がすり減って痛みや炎症を起こす病気です。40~50代に発症しやすく、特に中高年の女性に多く見られます。放っておくと、初期、進行期、末期と症状が進んでいきます。痛みは悪化し、歩行障害などを招き、イスから立ち上がることさえつらくなったりします。【解説】井上明生(柳川リハビリテーション病院名誉院長)

解説者のプロフィール

井上明生
 柳川リハビリテーション病院名誉院長。変形性股関節症治療の権威。1961年大阪大学医学部卒業、1966年同大学院修了。ロンドン大学留学を経て、大阪大学整形外科准教授、久留米大学整形外科教授を歴任。2000年4月より、柳川リハビリテーション学院学院長、2001年4月より柳川リハビリテーション病院院長に就任。2011年4月より現職。変形性股関節症に対する「貧乏ゆすり(ジグリング)」の効果の研究と啓蒙に努めている。

大腿骨頭は、太ももの骨の先端の丸い部分のこと(股関節を構成する凸凹の、凸部分)

 股関節は、両足の付け根にある大きな関節です。上半身と下半身をつなぎ、身体を曲げる、反らす、歩く、立つなどのさまざまな動作にかかわる重要な関節です。
 この関節に痛みや違和感を覚えることは、ひざ関節に比べて少ないのですが、痛みが出ると、日常生活に支障をきたします。

 股関節痛の原因として代表的なのが、変形性股関節症です。これは、関節軟骨がすり減って痛みや炎症を起こす病気です。40~50代に発症しやすく、特に中高年の女性に多く見られます。
 変形性股関節症を放っておくと、初期、進行期、末期と症状が進んでいきます。痛みは悪化し、歩行障害などを招き、イスから立ち上がることさえつらくなったりするのです。
 進行を遅らせるためには、股関節にかかる負担を減らすことです。
 別の言い方をすると、痛みを伴うことは避けることです。具体的には、杖を使用する、歩く量を減らす、重い荷物は持たない、減量するなどを推奨しています。それと同時に、特に初期の患者さんに対しては、痛み取りの薬をむやみに処方することを避けるようにしています。

 それでは、ここで股関節の構造を示します。
 股関節は、下の図のように、臼蓋(寛骨臼)と呼ばれる股関節の骨盤側のくぼみに、大腿骨頭(太ももの骨の先端の丸い部分)がはまった状態になっています。そして正常な状態では、大腿骨頭の直径の約80%を臼蓋が覆っています。
 臼蓋と大腿骨頭は、それぞれ関節軟骨という弾力性のある組織で覆われ、さらに両者は関節包で包まれて関節液で満たされています。関節軟骨に関節液が潤滑油として働いているおかげで、関節は滑らかに動くことができるのです。

臼蓋などの形態異常が原因のものが圧倒的に多い

 変形性股関節症には、1次性と2次性のものがあります。
 1次性は、股関節の形態に異常はなく、ほとんどが加齢による変化ですが、一部、肥満や重労働などで、過大な負荷が股関節にかかって起こるケースもあります。それに対して2次性は、臼蓋などの形態の異常に原因があって起こります。

 欧米で多いのは1次性ですが、日本ではそのほとんどが2次性です。特徴的なのは、先天性股関節脱臼(出生時、または出生直後に股関節が外れた状態)の治療後や、先天性股関節脱臼の治療歴のない臼蓋形成不全が圧倒的に多いことです。

 変形性股関節症には、四つの病期があります。これは、あくまでレントゲン写真を見て分けられるので、診断にはレントゲン撮影が不可欠です。

➊前関節症期
 臼蓋形成不全など、股関節の形に異常があって、股関節に歩行時痛を覚えますが、レントゲン写真では、関節軟骨のすり減りなどの特有の関節症変化は見られません。
➋初期
 関節軟骨が傷ついて、すり減りだし、関節のすき間(関節裂隙)がやや狭くなっていて、歩行時痛があります。
➌進行期
 関節軟骨のすり減りが進んで、関節のすき間がさらに狭くなります。関節内で骨の一部がぶつかり合い、臼蓋や大腿骨頭に、骨棘というトゲ状の骨が見られるようになります。痛みや動きの制限が強くなります。
➍末期
 変形性股関節症の最終段階です。関節軟骨がほぼ失われ、骨同士がぶつかるようになります。安静にしていても痛みの出ることがあり、歩いたり立ったりしにくくなって、生活に支障をきたします。

自分の骨を使って治す関節温存手術

 変形性股関節症の治療法は、大きく分けて三つあります。
①人工関節置換術(人工関節に置換する方法)
②関節温存手術(自分の骨を使っての手術)
③保存療法(杖の使用、装具、運動療法など)

 保存療法を続けても改善されない場合は、手術が検討されます。
 手術には、大きく分けて、関節を温存する関節温存手術と、人工関節に置き換える人工関節置換術があります。
 人工関節置換術は、劇的な改善が見られますが、人工関節に寿命があり、長期的には再置換手術が必要になる確率が高くなります。
 そこで、私たちは関節を温存する手術の一つ、キアリ骨盤骨切り術(以下、キアリ手術)を多用しています。この手術は、初期から進行期、末期にまで有効で、うまくいけば一生に一度の手術で済みます。

 キアリ手術は、骨盤を横に切り、下骨片(下側の部分)を内側にずらして臼蓋の面積を広げます。そうすることで、体重のかかる面が広がって、股関節の負担を軽減する手術です。
 キアリ手術は、病期が初期であれば、年齢は問わず誰にでも行える手術です。何歳であっても、股関節の形を整えることができます。病期が進行・末期の段階では、一応、適応は60歳以下としていますが、他の手術と違って、手術後、新たに股関節の軟骨を再生させることができるのが、大きなメリットです。

 しかし、切った骨がくっついて軟骨が再生するためには、患者さんの修復力や術後のリハビリテーションが重要になります。そのため、治療期間が長くかかります。
 加えて近年、私たちは、手術後のリハビリテーションや、「なるべく手術をしたくない」という患者さんに対し、「貧乏ゆすり(ジグリング)」という治療法を指導し、成果を上げています。

 貧乏ゆすりは、すり減った軟骨を再生させることによって、変形性股関節症の進行を止めたり、遅らせたりする効果があります。それらのことはレントゲン写真によって実証されました。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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