痛みの緩和には温めることが重要
加齢とともに増える症状で、最も多くの人を悩ませている一つが、ひざの痛みです。
長く歩くと痛む、階段の上り下りがつらいなどが主な症状で、つらい上に生活するのにも不便を強いられるため、お困りの人が少なくありません。
そんな人に、ぜひお勧めしたいのが「ショウガ風呂」です。
ショウガには、多くの薬効成分が含まれています。なかでも、特有の辛味のもとであるジンゲロンやジンゲロール、ショウガオール、カプサイシンには、体を温める強力な作用や痛みを鎮める作用があります。
痛みの緩和には、温めて血行を促すことが重要です。血行が悪いと、体は血管を広げて血流を促す物質「プロスタグランジン」を出します。プロスタグランジンには、痛みを引き起こす作用もあるため、血行が悪いと体の反応として痛みが起こるのです。
そんなときショウガ風呂に入ると、お風呂の温熱作用に加えて、前述したショウガの成分が皮膚から吸収されて、非常に高い温熱効果や保温効果が得られます。すると、血流がよくなり、痛みが治まるのです。
ショウガ風呂を習慣にすることで、がんこなひざの痛みもかなり軽減されていきます。
実際、当クリニックに来院する患者さんにも、「ショウガ風呂でひざ痛がらくになった」という例がたくさんあります。
ショウガには、鎮痛薬として有名なアスピリンの8割程度の鎮痛効果があることがわかっています。また、ガンの末期のひどい痛みでも、ショウガで和らぐことが報告されています。それほど優れた鎮痛効果を持つだけに、ショウガはひざの痛みにも高い効果を発揮するのです。
ショウガ風呂のやり方

腰痛や関節痛にも著効
ひざの痛みの基盤には、多くの場合、加齢とともにひざが変形して起こる変形性ひざ関節症があります。
この場合、変形したひざ関節をショウガ風呂で治すことはできませんが、痛み自体を和らげるのには大変有効です。
89歳のHさん(女性)は、ひざの痛みとともに、足の指の付け根が痛いとお困りでした。
そこで、ショウガ風呂をお勧めしたところ、毎日ショウガ風呂に入るとともに、朝と晩にショウガ足浴をされたそうです。
おかげで、2週間でひざや足の指の付け根の痛みが取れ、おまけに5回あった夜中の頻尿が2回に収まるようになったと、大喜びされていました。
なお、皮膚が弱い人はまれにショウガ風呂でかぶれたり、ヒリヒリ感じたりすることがあります。ご心配の場合は、ショウガの量を加減して使うか、または、ショウガの搾り汁を腕の内側に塗って15分置くパッチテストを行い、異常がないかどうか確かめてください。
ショウガ風呂は、ひざ痛だけではなく、腰痛やそのほかの関節痛、生理痛、冷えによる腹痛などにも非常に有効です。
また、お風呂に入れないときは、ショウガ足浴だけでも効果があります。洗面器に42℃くらいの熱めのお湯をはり、すりおろしたショウガ一片をガーゼにくるんで輪ゴムで留め、洗面器に入れます。この洗面器に両足を足首まで入れ、10分ほどつかると体全体が温まります。
ショウガは、食べれば体の内側から体を温め、お風呂に入れれば体の外側から体を温めてくれる優れた食品です。私も毎日必ずショウガをたっぷり取って日々の健康に役立てています。ぜひ、ご活用ください。
解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
帝京大学医学部卒業後、大学病院での研修を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで診療を行う。
近著に『病気にならない蒸しショウガ健康法』(アスコム)がベストセラーに。
●石原新菜 オフィシャルサイト
https://www.ninaishihara.com/