MENU
脊柱管狭窄症の原因「ストレス」の解消で悪化予防!手術後の回復も早くなる!

脊柱管狭窄症の原因「ストレス」の解消で悪化予防!手術後の回復も早くなる!

脊柱管狭窄症とは、神経の通り道となっている脊柱管が変形して狭くなり、神経を圧迫して痛みやしびれを起こす病気です。その典型的な症状として、「間欠性跛行」が挙げられます。これは、歩いているうちに痛みやしびれで歩けなくなり、再び歩くまでにしばらく休む必要が生じるというものです。【解説】大谷晃司(福島県立医科大学教授)

解説者のプロフィール

大谷晃司
福島県立医科大学医療人育成・支援センター兼整形外科教授。
1990年、福島県立医科大学医学部卒業。14年より現職。
専門は、脊椎・脊髄の外科、高齢者の整形外科、慢性疼痛の治療。
共著に『長引く腰痛は脳の錯覚だった』(朝日新聞出版)がある。

原因不明の腰痛の多くに心理的ストレスが関与

 脊柱管狭窄症は、神経の通り道となっている脊柱管が変形して狭くなり、神経を圧迫して痛みやしびれを起こす病気です。
 その典型的な症状として、「間欠性跛行」が挙げられます。これは、歩いているうちに痛みやしびれで歩けなくなり、再び歩くまでにしばらく休む必要が生じるというものです。

 脊柱管狭窄症の治療法としては、薬物療法のほか、コルセットを使った装具療法や神経ブロック注射などがあり、まずは経過を観察します。
 一方、日常生活では、立ちっぱなしの姿勢を避ける、体を後ろに反らす姿勢を取らない、といったことに注意することが重要です。

 こうした治療や日常での留意を行っても症状が進行し、足のしびれがひどくて歩けなくなるどころか、尿が出にくくなる「膀胱直腸障害」が起こってきたら、手術を検討することになります。
 もちろん、手術が奏功すれば問題ありません。しかし、なかには、手術が成功して脊柱管の狭窄が解消されたのに、思ったように痛みやしびれが回復しないケースもあります。

 また、もともと狭窄がひどくない軽症の患者さんでも、治療やセルフケアがうまくいかず、痛みやしびれが解消しないケースが見受けられます。
 このように、なかなか痛みやしびれが解消しないというケースにおいて、大きく影響していると考えられるのが、「心理的なストレス」なのです。

 脊柱管狭窄症に限りませんが、近年、腰痛と心理的なストレスの関係が、特に注目を集めています。
 例えば、3ヵ月以上痛みが続く慢性腰痛の場合、その大半の原因はよくわかっていません。実は、こうした原因不明の慢性腰痛の多くに、心理的ストレスが関与しているのです。

 火事場のばか力をご存じでしょう。極端に追い詰められると、ふだん以上の力が出せることをいうものです。同様に、私たちの脳には、その必要があれば、痛みをあまり感じないようにさせるシステムが存在しています。命が危険にさらされた場合などに痛みを抑制する神経伝達物質が脳で作られ、必死で逃げる・闘うといった行動を取れるようにしているのです。

 そのシステムは、私たちの脳で稼働しています。具体例を挙げると、スポーツ選手が試合中に激しく相手とぶつかって、ケガや骨折をすることがあります。試合中は、痛みをあまり感じなかったり、骨折していても、試合終了まで動けてしまうことも珍しくありません。これも、試合終了まで、痛みを抑制する脳のシステムが働いていたから起こることです。

自分の好きなことをしてプラス思考を心がけよ

 ところが、強い心理的ストレスが加わると、痛みを抑制する脳のシステムが機能低下を起こします。痛みを抑制する神経伝達物質を脳内で作ることができなくなり、痛みを通常以上に感じてしまうのです。本来1でよいはずの痛みを、10にも100にも感じてしまいます。

 慢性腰痛のなかには、こうした心因性の腰痛もあることがわかっています。脊柱管狭窄症においても、「手術をしたのに痛みもしびれも全然なくならない」という症例について、こうした心因性のものである可能性もあるでしょう。
 ただ、重要なのは、慢性腰痛にしても、脊柱管狭窄症にしても、その真の原因が心理的ストレスかどうかではありません。「強い心理的ストレスがかかった状態では、治りが悪くなり、痛みやしびれを感じやすくなる傾向がある」という点なのです。

 脊柱管狭窄症の手術が成功したあと、心理的ストレスを感じている人と、そうでない人とでは、術後の経過が違ってくる可能性があります。ですから、脊柱管狭窄症をより早く快方に向かわせるためには、できるだけ心理的ストレスがかからないようにすることが重要です。

 複雑な現代社会に生きる私たちは、常になんらかのストレスにさらされています。これを解消するとはいっても、なかなか簡単ではないでしょう。
 とはいえ、それほど難しく考える必要はありません。ストレス解消の方法は、人によりさまざまです。まずは「自分の好きなことをする」ことを心がけましょう。日ごろ控えている甘い物を食べたりお酒を飲んだりするのでもいいですし、腰の負担にならない程度に体を動かすのもよいでしょう。

 ある慢性腰痛の患者さんのケースでは、イヌを飼い始めたら、世話に夢中になっているうちに痛みがすっかり解消しました。ほかにも、飲み会に行って愚痴を聞いてもらったら、よくなったという人もいます。ぜひ、自分なりのストレス解消や気分転換の方法を探してみてください。

 また、できるだけプラス思考に努めることも大切です。痛みやしびれがつらいときも、「しびれて困るけれど、まだ、歩けるからいい」と考えましょう。間欠性跛行になっても、「10分しか歩けない」と嘆くのではなく、「まだ、10分も歩ける!」と楽天的に考えるのです。できるだけポジティブな方向に考える習慣をつけることは、痛みを減らす助けとなるのです。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

関連記事
セルフケアとして、私が患者さんにお勧めしているのが、仙腸関節の上に、使い捨てカイロを貼って温める「骨盤カイロ」です。カイロの熱で、仙腸関節の働きが回復します。そうすると、全身の関節や筋肉、神経の緊張が緩和し、脊柱管狭窄症をはじめとした、痛みやしびれが改善するのです。【解説】田村周(山口嘉川クリニック院長)
更新: 2019-12-23 09:59:03
システマでは、闘い続けるために体を整える方法が確立されています。痛みが生じている場合、腰や背中の筋肉がかたく緊張しています。その緊張を緩めたくても痛む腰を刺激することはできないとき「おなかもみ」が役に立ちます。【解説】北川貴英(ロシア武術「システマ」インストラクター)
更新: 2019-09-10 22:10:00
毎日根気よく続けるようになって数週間経ったころでしょうか。以前よりも腕が軽くなってきたように感じました。かたかった背中の筋肉、肩の緊張もほぐれてきて、ついには腰や足の痛みをほとんど感じなくなっているのに気がつきました。【体験談】井川京子(仮名・主婦・75歳) 
更新: 2019-09-10 22:10:00
オクラ水を飲み始めたのが、今年の6月末です。同時に別の本に書いてあった、脊柱管狭窄症に効くストレッチを行っています。また近所にある温泉に足しげく通いました。こうした生活を始めて1ヵ月が経過し、驚いたことにお尻からつま先にかけてのしびれと痛みは、ほとんど消えているのです。【体験談】岡本ハルミ(仮名・主婦・81歳)
更新: 2019-09-10 22:10:00
私たちは患者さんに高負荷の運動をしてもらい成果を上げてきました。しかし脊柱管狭窄症の患者さんの場合、痛みを伴うほど過度に行うと、逆に症状を悪化させてしまうことがあるのです。そこで、私がお勧めしたい体操が、「水平のポーズ」と「でんでん体操」です。【解説】田島文博(和歌山県立医科大学医学部リハビリテーション医学講座教授)
更新: 2019-09-10 22:10:00
最新記事
私は鍼灸師で、日本で一般的に行われている鍼灸治療のほか、「手指鍼」を取り入れた治療を行っています。手指鍼はその名のとおり、手や指にあるツボを鍼などで刺激して、病気や不調を改善する治療法です。【解説】松岡佳余子(アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師)
更新: 2020-04-27 10:34:12
腱鞘炎やバネ指は、手を使うことが多いかたなら、だれもが起こす可能性のある指の障害です。バネ指というのは、わかりやすくいえば、腱鞘炎がひどくなったものです。腱鞘炎も、バネ指も、主な原因は指の使いすぎです。痛みやしびれを改善する一つの方法として、「手首押し」をご紹介します。【解説】田村周(山口嘉川クリニック院長)
更新: 2020-03-23 10:16:45
筋肉がこわばると、体を支えている骨格のバランスがくずれて、ぎっくり腰を起こしやすくなります。ぎっくり腰に即効性があるのが、手の甲にある「腰腿点」(ようたいてん)という反射区を利用した「指組み」治療です。この「指組み」のやり方をご紹介します。【解説】内田輝和(鍼メディカルうちだ院長・倉敷芸術科学大学生命科学部教授)
更新: 2020-03-02 10:09:34
慢性的な首のこり、こわばり、痛みといった首の不調を感じたら、早めに、まずは自分でできる首のケアを行うことが大切です。【解説】勝野浩(ヒロ整形クリニック院長)
更新: 2020-02-25 10:06:07
首がこったとき、こっている部位をもんだり押したりしていませんか? 実は、そうするとかえってこりや痛みを悪化させてしまうことがあります。首は前後左右に倒したりひねったりできる、よく動く部位です。そして、よく動くからこそ、こりや痛みといったトラブルを招きやすいのです。【解説】浜田貫太郎(浜田整体院長)
更新: 2020-02-17 10:18:14

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル