中国に古くから伝わる究極の健康法
日本人の多くが悩んでいる腰痛、肩こり、ひざ痛などの症状を改善するポイントは、ズバリ「肩甲骨(背中の上部左右にある一対の骨)を動かすこと」です。
私は長年、医薬品業界に勤め、西洋医学、東洋医学、構造医学などを学んできました。2003年には、中国政府認可国際中医師A級ライセンスを取得しました。
中医学とは、数千年の歴史がある中国の伝統医学で、人間が持っている自然治癒力を高めることで治癒に導くものです。漢方薬、鍼灸、気功なども中医学に含まれます。
この中医学の世界では、2000年以上も昔から、「肩甲骨をほぐすと健康になる」と伝えられてきているのです。

ではなぜ、肩甲骨をほぐすと体によいのでしょうか。
左右それぞれの肩甲骨の内側、心臓の裏側に当たる部分には、膏肓というツボがあります。膏肓は、薬も鍼も届かないほど深いところにあるツボとされ、「治療の施しようがない」という意味の慣用句、「病膏肓に入る」にも使われているほどです。
この大変難しいツボである膏肓をほぐすことができるのが、2000年以上前から伝わる究極の健康法、「腕振り」なのです。
腕を振って肩甲骨を動かすことで、膏肓がほぐれ、背中や肩、首のこわばりが取れます。同時に、肩甲骨の周りにある大きな筋肉「僧帽筋」もほぐれて全身の血流がよくなり、免疫力(病気に対する抵抗力)のアップにつながります。
こうした作用により、さまざまな症状が改善すると考えられています。
私が中医学を学ぶ中で、初めて腕振りと出合ったとき、本当に腕を振るだけでつらい症状が取れるのか、にわかには信じられませんでした。
しかし、腕を振れば膏肓が刺激されることは理解できたので、自分自身で試してみることにしました。実は、10代のころにスポーツで傷めた右肩の古傷が、30代になってから激しく痛むようになっていたのです。
効果はてきめん。「こんなに簡単なことで?」と驚くくらい、長年苦しんでいた肩こりや肩の痛みがどんどん改善していき、バレーボールやソフトボールなどのスポーツをまた楽しめるようになったのです。
ところで私は、「自分の体は自分で守る」を合い言葉に、「バランス健康法」という健康法を提唱しています。
これは、自分の体を知り、心と体のバランス、骨と筋肉のバランス、重力バランス、気・血・水(体の中でのエネルギー、血液、体液の巡り)のバランスなど、さまざまなバランスを改善して、私たち一人一人が持つ「自分で治る力」を引き出そうというものです。
国際中医師A級ライセンスを取得後は、「バランス経絡体操」と名付けた体操教室を立ち上げ、腕振りをはじめとする、さまざまな体操の指導を始めました。
その教室の生徒さんからは、個人差はありますが、腰やひざ、首の痛みが改善しただけでなく、「高かった血圧が下がり安定した」「骨密度がアップした」「5㎏やせた」「バストがBカップからDカップになった」「O脚が改善した」といった、うれしい報告がたくさん届いています。
目安は3分で200回。無理のない範囲で行う
最近、「未病」という言葉を見聞きすることが珍しくなくなってきました。未病とは、「はっきりとした病気ではないが、まったくの健康でもなく、放置すると病気になるだろうと予測される状態」のこと。ストレスの多い現代社会では、未病と考えられるさまざまな不調を訴える人が増えています。
こうした未病にも、腕振りは有効です。しかも、「足を骨盤幅に開いてバランスよく立ち、両腕を同時に振る」というシンプルさ。骨盤幅とは、具体的には、両ひざの間を握りこぶし1個分開けて立つことです。いつでもどこでも手軽にできて、お金もかかりません。
私の教室では、3分間で約200回を1セットとして、1日3セット行うことを推奨していますが、まずは1日1分でも構いません。無理せず、できる範囲で行い、徐々に回数を増やしていくことをお勧めします。
もっとがんばれる人は、1日5セット(約1000回)以上振ると、さまざまな症状の改善により効果が期待できます。
受講者の中には、赤信号を待っている間や、食事の支度の合間など、ちょっとしたすき間時間に腕振りを習慣付けて、毎日続けている人もいます。
私自身が、腕振りで、長年苦しんできた肩こりや肩の痛みから解き放たれました。1人でも多くの人が、私と同様に、痛みやつらさから解放されるよう願ってやみません。

腕振りのやり方


解説者のプロフィール

北濱みどり
グリーン健康会代表・社会福祉士。国際中医師A級ライセンス取得。著書に『1日3分「腕振り」で肩こり・腰痛がとれる!』(KADOKAWA)がある。
●グリーン健康会
http://www.green-kenko.com/index.html