解説者のプロフィール

宮本啓稔(みやもと・けいじ)
●新宿西口治療院
東京都新宿区西新宿7丁目9-15 ダイカンプラザビズネス清田ビル505
0120-070-600
https://www.sn-chiryo.com/
新宿西口治療院院長。鍼灸・マッサージ師。整体師。
幼少の頃から武道や整体に親しむ。こりの真の原因である「筋肉・骨膜の癒着」に対するアプローチを考案。あらゆる病や不定愁訴に対応できる独自の理論と手法を日夜研究し治療に生かしている。
寒い季節はむくみが悪化しやすい
夕方は足が張って痛い、靴がきつくなる。そんな「むくみ」に悩む人は少なくありません。
むくみは、血液やリンパ液(体内の老廃物や毒素、余分な水分を運び出す体液)の循環が悪くなることによって起こります。
血液やリンパの循環が悪くなると、細胞の隙間に余分な水分が滞ります。これが、むくみの正体です。
血液は心臓の力で押し出されて全身を巡りますが、心臓の力が届きづらい体の末端では、筋肉の力も使われています。血管周辺の筋肉がポンプのように収縮して、血液を心臓へ送り戻すのです。リンパも、この筋肉のポンプ作用によって流れています。
寒い季節や冷房の効いた部屋でむくみが悪化するのは、寒さで筋肉がこわばってポンプ作用が低下し、血液・リンパの循環が悪くなるためです。
東洋医学では、この血液・リンパの循環不良を起こしやすい体質を「虚証」と呼びます。
虚証の人は、やせた体格、青白い顔色、乾いてたるんでいる皮膚、体力がなく疲れやすい、食べるのが遅く量が少ない、胃腸が弱い、といった特徴があります。
また、虚証の人は、加齢とともにむくみが悪化しがちです。そのほか、デスクワークなどの偏った姿勢や運動不足の状態が続くと、筋肉のポンプ作用がうまく働かず、むくみが起こりやすくなります。
尾骨のこりやゆがみを温めて解消する
そこで今回、むくみの予防と改善のためにお勧めするのが「塩カイロ」です。
塩カイロは、塩灸をアレンジした、手軽なセルフケアです。
塩灸は、へその上に和紙を敷いて塩を載せ、塩の上にお灸を据えて温める健康法です。体を深部までじっくり温めるのに、非常に効果的です。
塩カイロは、お尻にある尾骨を温めます(下の写真参照)。
尾骨は退化したしっぽの名残りの骨で、整体の世界では昔から「感情の発露」といわれてきました。
犬はうれしいときはしっぽを振り、おびえたときはしっぽをおなかの下へ丸めます。これと同じように、人間も内面の状態が尾骨周辺に現れると考えられたのです。
実際に、うつ状態の人やストレスがたまっている人は、尾骨周辺がこったりゆがんだりしている場合が少なくありません。中には尾骨そのものがねじれている人もいます。
尾骨周辺のこりやゆがみは、デスクワークなどを長時間続けたときにも起こります。
そもそも尾骨周辺は、おわんのような形をした骨盤の底にあるため、濁った血液がたまりやすい部分です(汚れた血液は底の部分に沈殿します)。
また自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)の末端でもあるため、ここの循環が滞ると自律神経の失調が起こり、体の調子が悪くなったり、むくみが生じやすくなります。
尾骨周辺を塩カイロで温めることにより、こりやゆがみが解消し、自律神経のバランスが整って、血液やリンパの流れが改善するのです。

冷え症や座骨神経痛、腰痛やひざ痛も改善
塩カイロでは、フライパンで10~15分間、じっくりと熱した塩を使います。この塩による熱は、遠赤外線を発し、電気による温熱器などの熱よりも、体になじみやすいのです。
これをキッチンペーパーに包み、封筒に入れたら、塩カイロの出来上がりです(基本的な作り方や、はり方は下記参照)。
塩カイロは、夜寝るときに尾骨へ当ててください。肌着の上から、もしくは肌に直接、医療用テープで留めます。
冷めてからも効果は持続していますので、日中もそのまま当て続けてかまいません。
塩も、毎回捨てずに何度も炒り直して使い回して大丈夫です。むしろ、何度も熱を加え続けることによって、より効果が高まります。
忙しい朝に塩カイロを使いたいときは、封筒に入れたままの塩をレンジで温めてもかまいません。ただこの場合、少し効果は落ちます。
毎晩、塩カイロを尾骨に当てて眠れば、1ヵ月半~2ヵ月ほどでむくみは改善するはずです。
むくみの改善よりも先に、気持ちよく眠れるようになったという人も少なくありません。
そのほか、冷え症や生理痛、座骨神経痛、頭痛、肩こり、腰痛、ひざ痛、便秘などの症状から、自律神経失調症やうつなどにも、塩カイロは効果が期待できます。
寒さでむくみが悪化しやすいこの季節、ぜひ塩カイロで体を温め、老廃物をスッキリ出して、気持ちよく快適な体でお過ごしください。
「塩カイロ」の作り方と使い方」
【材料】(1個分)
・天然塩…50~60g
・キッチンペーパー…1枚
・紙の封筒(使い捨てカイロの大きさ程度のもの)…1枚

【作り方】
❶塩をフライパンに入れ、中火で5~10分から炒りする。

❷①の塩を、霧吹きで軽く湿らせたキッチンペーパーで包む。

❸②を封筒に入れれば、塩カイロの出来上がり!

【貼り方】
封筒の中心が尾骨にくるようにして、塩カイロを医療用テープで直接肌にはりつける。
※写真は服の上からはっています。
ポイント
● 塩の温度が下がってきたら、中のキッチンペーパーを取って温度を調整するとよい(塩はそのまま封筒に入れておく)。
● 塩は、炒り直せば、再使用できる。
● 再使用時に限り、塩の入った封筒をそのまま電子レンジで温めてもよい。500wで30秒から1分ほどの加熱が目安。