骨盤の関節を温めると、痛みが改善
寒さが厳しくなるこれからの季節、使い捨てカイロを利用する人が増えてきます。最近では、大きさや形のバリエーションが豊富になり、体の各部位をカイロで温めることが可能になってきました。
皆さんは、カイロをどのように使っているでしょうか。
おそらく、ひざが痛ければひざに貼り、手がこわばれば手に握り、おなかが冷えればおなかに貼る、というように、症状のある場所を温めている人が多いと思います。
しかし、カイロを使う場所として私がお勧めするのは、「痛いところ」ではありません。痛みを感じる場所と、痛みを引き起こしている場所は、必ずしも一致しないからです。
お尻の割れめの上端と、ウエストの間あたりに、カイロを貼ってください。ここには、骨盤を構成する仙骨と腸骨の連結部、仙腸関節があります。この仙腸関節こそが、全身の痛みや不調をつかさどる重要ポイントなのです。
ここで、骨盤について簡単に説明しましょう。
骨盤は、背骨と下半身の骨をつなぐ、体の土台となる骨です。前述したように、中心にある仙骨と、両側に張り出した腸骨は、仙腸関節でつながっています。実をいうと、この仙腸関節の動きは、全身の動きと深いかかわりがあるのです。
仙腸関節の動きが悪いと、その影響は全身に及びます。ほかの関節の動きも悪化し、筋肉が緊張して血流も悪くなって、痛みやしびれが発生します。
私は、仙腸関節を整える手技を治療に取り入れています。患者さんの仙腸関節の動きがよくなるにつれ、痛みやしびれが軽減していくのを、日々、目の当たりにしています。仙腸関節の動きがスムーズになると、全身の関節の動きがよくなります。筋肉の緊張が取れ、血流もよくなって痛みが改善するのです。
骨盤カイロのやり方

骨盤カイロは即効性が特長
治療の補助となるセルフケアとして、私が患者さんにお勧めしているのが、仙腸関節の上にカイロを貼って温める「骨盤カイロ」です。カイロの熱で、仙腸関節の働きが回復します。そうすると、全身の関節や筋肉、神経の緊張が緩和し、脊柱管狭窄症をはじめとした、痛みやしびれが改善するのです。
患者さんのなかには、「腰が痛いのでカイロを貼っているが、改善しない」というケースが見られます。これは、貼る位置を間違えている可能性があります。腰の上のほうが痛い場合でも、カイロは必ず骨盤に貼りましょう。仙腸関節を温めて、機能を回復させることが、この療法のポイントです。
骨盤にカイロを貼ったうえで、痛みのある腰や足にカイロを追加して貼るのは、問題ありません。各自で、症状がより楽になる方法を工夫してください。
「楽になった」「つらくなった」という感覚を大事にして、セルフケアの方法を少しずつ調整していきましょう。基本は守りつつ、自分なりにアレンジすることも大事です。
骨盤カイロは、非常に即効性があります。冷えが原因の痛みなら、カイロを貼ってすぐに症状が軽減することも少なくありません。
もちろん、その場で効果を実感できなくても、長期間続けることで仙腸関節の動きがよくなり、症状が改善に向かうでしょう。少なくとも、1ヵ月は続けてみてください。
筋肉が緩み、血行がよくなることで、内臓の働きや心身の安定をつかさどる自律神経のバランスも整います。
現代人は、多忙でストレスがたまりやすく、自律神経のバランスが乱れがちです。骨盤カイロを行うことで、自律神経のバランスが整い、免疫力も高まります。カゼやインフルエンザが流行する季節には、骨盤カイロを予防対策の一つとして取り入れてください。
また、骨盤を温めると、全身の血流がよくなるので、代謝が高まります。いわゆる「やせ体質」になって、ダイエット効果が現れる人も少なくありません。
カイロを使うときに注意していただきたいのは、低温ヤケドです。直接肌に貼ることは、絶対に避けてください。必ず衣服の上から貼り、肌着の場合は、2枚以上重ねた上から貼りま
しょう。また、カイロは朝起きたときに貼り、夜寝る前にはがしてください。
熱は皮膚を乾燥させるので、カイロが当たる部分には、保湿効果のあるクリームなどを塗って保護するといいでしょう。
解説者のプロフィール
田村 周
1976年山口県生まれ。聖マリアンナ医科大学卒。山口大学医学部総合診療部、長崎医療センター総合診療部、仁徳会周南病院、樹一会山口病院などを経て、山口嘉川クリニック開業。