解説者のプロフィール
梶原千譽(かじはら・かずしげ)
カジハラ治療院院長。鍼灸師。
●カジハラ治療院
東京都練馬区上石神井2-32-13 サンヒルズ上石神井101号
03-3929-7507
http://kajiharatiryouin.com/
首の前傾が全身の筋肉のこわばりを招く!
私の治療院には、脊柱管狭窄症に悩むかたがたくさん訪れます。皆さんに共通しているのは、背中から腰にかけての筋肉がガチガチにこわばっていて、ひどいコリがあることです。
このコリをほぐすと、脊柱管狭窄症に伴う症状を緩和させることができます。
現代は、パソコンやスマホを長時間使い続ける影響で、多くの人の姿勢が悪くなっています。特に目立つのが、頸椎(首の部分の背骨)の変形です。自覚の有無を問わず、スマホを使っているときは、皆さんたいてい頭が前に突き出し、首が前傾した状態になっています。
この姿勢で、長時間スマホを使っていると、その不自然な状態のままになってしまう人が少なくありません。首が前傾していると、当然、背すじは丸くなります。
しかも、この姿勢は、首の筋肉に必要以上の緊張を強いるため、首だけでなく全身の筋肉をかたくして、こわばりを引き起こします。
これは、脊柱管狭窄症に悩む人にとっては極めて重大なことです。背中から腰にかけての筋肉がガチガチにこわばっていれば、その中を通る神経の働きに、悪影響が及ぶだけではありません。血行も悪化してしまいます。
そこで、緊張した首のこわばりをほぐせば、全身の筋肉の緊張が緩和されます。その結果、血行もよくなるうえ、圧迫されていた神経の働きも正常に戻るのです。
そもそも、脊柱管狭窄症は、主に加齢などによって、神経が通っている脊柱管という管が狭まり起こります。
神経が圧迫された結果、腰から足にかけてしびれや痛みが出て、続けて歩けなくなります。これが、脊柱管狭窄症の特徴とされる「間欠跛行」です。首のこわばりをほぐし、背中や腰の緊張が緩めば、間欠跛行の改善も期待できます。
ただし、いったん固まってしまった首の緊張をほぐすのは、実は、簡単ではありません。単純な首のストレッチでは、なかなかほぐれないのです。いったんほぐれたように思えても、しばらくすると、元の悪い状態へ戻ってしまいます。
そこで、脊柱管狭窄症に悩むかたがたにお勧めして効果を上げている方法をご紹介しましょう。それが、「ひざ倒し」です(下図参照)。
この体操を行うと、首のこわばりがリセットされ、全身の筋肉の緊張を一挙にほぐすことができます。実行したあとは、ガチガチにこっていた腰の筋肉が、驚くほどやわらかくなっているでしょう。
この体操は、動作は単純ですが、体がかたい人や、背中のコリがひどい人は、両腕を上げることがかなりきつく感じられるかもしれません。それがひどい痛みでない限り、できるだけ腕を上げた状態で続けてください。
ひざ倒しは、朝起きたときや、寝る前などに行うと決めて、毎日、根気よく続けてみましょう。
「ひざ倒し」のやり方
❶直径10㎝ほどの太さになるように、バスタオルを丸める。
❷あおむけになったら、①のタオルを肩甲骨の下部に当てる。ひじを曲げて、手のひらが頭の両わき辺りに来るようにする。
❸両ひざをそろえて曲げたまま、左右に倒す。20~30回くり返す。



休憩なしで歩けて犬の散歩もできる!
では、ひざ倒しが効果を上げた体験をご紹介しましょう。72歳の男性の例です。
このかたは来院したとき、間欠跛行によって、10mも歩けない状態でした。そのたびに休憩しないと、歩き出せない状態だったのです。
そこで、このひざ倒しを続けてもらいました。
なにしろ、10mも歩けないのは不便ですから、ご本人も熱心にひざ倒しをやってくださったのでしょう。症状がみるみる改善し、今では、途中で休憩せずに歩けるようになりました。日課である犬の散歩もできるようになったと、とても喜んでおられます。
脊柱管狭窄症のかたは、ふだんからネコ背の姿勢を取りがちです。痛みやしびれを感じにくくするためにはやむを得ないのですが、そのままでは、首の前傾をなかなか矯正できません。
今回紹介したひざ倒しは、首のこわばりを一挙にリセットして、全身の筋肉を緩める方法です。根気よく続けることで、間欠跛行の解消が大いに期待できます。