解説者のプロフィール

神橋勝俊(かんばし・まさとし)
●神橋筋整体院
奈良県御所市大広町269
0745-62-3838
https://www.katutoshikanbashi-seitai.com/
神橋筋整体院院長・柔道整復師。
2007年、柔道整復師免許習得。整骨院勤務を経て、13年に独立し、現在は奈良県御所市で「神橋筋整体院」を開業。筋肉と腰痛との関連に着目し、脊柱管狭窄症をはじめ、さまざまな腰痛持ちの人たちから支持を得ている。
大腰筋がかたくなりネコ背になる人が多い
私の整体院には、整形外科で脊柱管狭窄症と診断され、手術を勧められた患者さんがよく来られます。皆さん、手術は受けたくないからです。
そういう患者さんに、私が勧めているのが、おなかの深部にある大腰筋(下図参照)を緩める「大腰筋緩め」というストレッチです。大腰筋を緩めることで、脊柱管狭窄症の痛みやしびれが消え、手術を回避できた人は少なくありません。
大腰筋は、腰椎(背骨の腰の部分)と大腿骨(太ももの骨)をつないでいます。正しい姿勢を保ったり、太ももを引き上げたりするときに使われる、とても重要な筋肉です。
ところが、大腰筋が緊張してかたくなると、背中が引っ張られて丸くなります。また、足が上がりにくくなるので、階段を上りにくくなったり、つまずきやすくなったりします。
■大腰筋の位置

脊柱管狭窄症の患者さんの多くは、大腰筋がかたくなっている傾向があります。そのため、だんだんネコ背になっていきますが、なんとか姿勢を保持しようと、おなかを前に突き出し、背中を反らせた姿勢を取るようになります。
しかし、脊柱管狭窄症の人が背中を反らせると、脊柱管がよけい狭くなって神経が圧迫され、しびれや痛みの症状が強くなります。
ですから、大腰筋を緩めることが必要なのです。
このときに大事なことは、お尻や太ももの裏の筋肉もいっしょに緩めることです。
大腰筋がかたい人は、腰周りの柔軟性がなくなって、お尻や太ももの筋肉もかたくなっているからです。これらの筋肉がかたいと、骨盤が引っ張られて後ろに傾き、大腰筋が動きにくくなります。また、歩くときの衝撃や重力の負荷をうまく吸収できず、症状が悪化しやすくなります。
脊柱管狭窄症を改善するには、大腰筋とお尻、太ももの筋肉を緩めるストレッチを行うのが効果的なのです。
「大腰筋緩め」のやり方
大腰筋緩めは何種類かあります。それらの要素を満たすストレッチを紹介しましょう
❶片ひざ伸ばし
❶あおむけになって両足を伸ばします。

❷右ひざを曲げて両手で肩のほうに引き寄せ、左ひざを伸ばして20秒保持します。そのとき、左ひざをしっかり伸ばします。そうすることで、左右の足が反対方向に引っ張り合い、左右の大腰筋が伸びます。

❸左右の足を入れ替えて同様に行います。これを数回くり返すことで、大腰筋が伸びて徐徐に緩んできます。

片ひざ伸ばしのポイント
伸ばした足が床から浮かないようにひざをしっかり伸ばすことです。そうすると大腰筋がよく伸びます。また、ひざを曲げて引き寄せることで、お尻や太ももの裏の筋肉も伸びます。
❷足首つかみ
足首つかみは、主にお尻の筋肉を緩めるストレッチですが、大腰筋や太ももの裏の筋肉を緩める効果もあります。
❶イスに座って背すじを伸ばし、右足首を左ひざの上に乗せます。
次に、右足首を左手でつかみ、右ひざに右手を当てます。
❷右ひざを下方に押すと同時に、右足首を胸のほうに引き寄せ、背すじを伸ばしたまま上体を倒して20秒保持します。

❸これも左右の足を入れ替えて同様に行います。いずれも、左右1回ずつを1セットとして、朝晩に3セットずつ行います。
足首つかみのポイント
押す力と引く力を拮抗させましょう。
10年間頼っていたコルセットが外せた!
大腰筋緩めを行うことで、脊柱管狭窄症が改善した例を紹介しましょう。
Aさん(75歳・女性)は、10年前に病院で腰部脊柱管狭窄症と診断されました。手術はしたくないと、痛み止めの薬を飲んだり、牽引などの保存療法を受けたりしてきました。また、ほかの整骨院でも施術を受けて、この10年間、コルセットを外したことがなかったそうです。
昨年8月、私の整骨院に初めて来院された際は、腰の右側に強い痛みがあり、右足にはしびれがありました。Aさんは週に1回施術を受けながら、自宅でも熱心に大腰筋緩めをされました。
すると1ヵ月後、まず右足のしびれがなくなりました。その後、腰の痛みが出たり出なかったりをくり返しましたが、3ヵ月めには痛みがほとんど消え、コルセットを外せるようになりました。施術に通う頻度も減って、治療は5ヵ月で終了。痛みも不安もなくなったと、喜んでおられました。
脊柱管狭窄症に限らず、腰痛のある人は、大腰筋がかたくなっています。足腰が痛かったら、大腰筋緩めを試してみるといいでしょう。症状が取れて、姿勢もよくなります。ただし、痛みが強くなる場合は、無理をして行わないでください。