解説者のプロフィール

波多野賢也(はたの・けんや)
美容整体サロン・アクアヴェーラ代表。
骨格と筋肉のゆがみを解消する美容整体を得意とする。保健体育教員やメディカルトレーナーを務めた経験と理学療法の知識と施術経験から生まれた独自の「美バランス」理論を基にしたオリジナル美容グッズの開発も手掛ける。著書に『1日1分でお腹やせ!下腹ぺたんこポーズ』(池田書店)、『ひじの向きを変えるとキレイにやせる!』(三笠書房)などがある。
押し出された子宮が下腹ポッコリの正体
「ダイエットして体重は落ちたのに、下腹が全然引っ込まない」「全体的にはそれほど太っていないはずのに、おなか周りだけポッコリ出ている」
そんな悩みを持って私の美容整体サロンにいらっしゃるかたがたくさんいます。
実は、スリムで美しいプロポーションに見えるために重要なのは、体重よりも、骨格です。
体重が変わらなくても、骨格を整え、内臓や筋肉、脂肪が本来あるべきところに収まると、見違えるようにシルエットがすっきりとしてきます。
なかでも骨格の要となるのが、骨盤です。
骨盤は、背骨のいちばん下部である仙骨、仙骨の左右にある腸骨(いわゆる腰骨)、骨盤の底に当たる座骨、骨盤の前側で骨盤をつなげている恥骨といった複数の骨が、強靭なゴムひものような靭帯で組み合わさってできています。
そのため、普段の姿勢や動きの癖、加齢による筋肉の衰え、さらには重力など、さまざまな要因で、骨盤が開いてしまいます。特に女性の骨盤は、出産時に赤ちゃんの頭を通すため、もともと開きやすくできているので、その傾向が強いのです。
骨盤は大切な臓器を守る防御壁でもあります。本来、しっかり締まってまっすぐに立った骨盤では、中央に子宮と卵巣、下部に膀胱、背中側に直腸(大腸の出口)があり、大腸の上に胃が載っています。
ところが、骨盤が開いて容積が大きくなると、本来骨盤の上にあるべき大腸や胃を支えきれなくなって内臓全体が下垂してきます。その結果、骨盤中央にあった子宮が前方に押し出されてしまうのです。これが下腹ポッコリの正体です。
また、子宮や卵巣は、子孫を残すための重要な臓器です。そのために、頑丈な骨盤の中央で物理的な衝撃や冷えから守られていました。
骨盤の中央から押し出されて無防備になった子宮を衝撃と冷えから守ろうと、体は下腹部にクッションと断熱剤になる脂肪を蓄えようとします。
さらに、内臓が下垂して、骨盤の底を支えている骨盤底筋の負荷が増すと、尿もれや便秘などを起こしやすくなったり、骨盤が後傾してネコ背になったり腰痛を起こしたりといった影響も出てきます。

面積が最大の筋肉で内臓を引き上げる
これらの元凶である骨盤のゆがみを、最も簡単に、合理的に解消できるのが、「下腹ぺたんこポーズ」です。
骨盤と肩甲骨をしっかり締めた姿勢で腹式呼吸をしながら圧をかけることで、たった1ポーズで、骨盤と肩甲骨のゆがみと開きを改善する「姿勢矯正」、腸腰筋や骨盤底筋、横隔膜、脊柱起立筋といったインナーマッスル(体の奥にある深層筋)を鍛えて体の軸を取る「体幹トレーニング」ができます。
ポイントは、かかとをつけてつま先を90度に開くことです。この状態でかかとを離さないようにつま先立ちをしようとすると、内ももにある内転筋に力が入ります。内転筋は、骨盤の下から内ももを通る筋肉で、骨盤を締めて立てるのに重要な役割をしている筋肉です。
骨盤を締めてまっすぐに立てることで、背筋の自然なS字カーブが戻ってきます。
同時に腹式呼吸で大きく横隔膜を動かすことも重要です。横隔膜は、肋骨の下部についている、体内でいちばん広い面積を持つ筋肉で、胃の入り口につながっています。腹式呼吸で、息を吸ったときに下がり、吐いたときに上がります。
勢いよく息を吐いて横隔膜を引き上げ、おなかをぺたんこににしたまま7秒キープすることで、上からも内臓をグッと引き上げつつ、骨盤をギュッと締めて下からおなかを絞り上げるイメージでポーズを取ると効果的です。
下腹ぺたんこポーズを続けていると、骨盤が締まってまっすぐに立ち、内臓の位置が正しく収まってスリムに見えるだけでなく、血流や代謝もよくなるため、結果的に体脂肪や体重も減ってきます。
実は、この下腹ぺたんこポーズは、産後太りで悩んでいた妻のために考案したもので、妻は20㎏の減量に成功しています。
つらい食事制限で、やせたのだかげっそりしてやつれたのだかわからないようなダイエットでは本末転倒です。骨格から体形を変え、美しく健康になる下腹ぺたんこポーズをぜひ取り入れてください。

腹式呼吸で横隔膜を動かして内臓を引き上げる
1日1分でポッコリおなかがすっきり!「下腹ぺたんこポーズ」のやり方
1回15秒でできるので、1日4回、合計1分でOK!
※①~③を朝、晩2回ずつ行う。

❶かかとをつけてつま先を90度に開いて立って腕を上げ、手のひらを前に向けて重ねる。3秒で鼻から息を勢いよく吸う。

❷かかとをつけたままつま先立ちをして、口から息を3秒で吐ききり、おなかをできるだけへこませながら縦に伸ばす。

❸息を吐ききったところで息を止め、上体を反らしてさらにおなかを縦に伸ばした状態を7秒キープする。
■ポーズを取るとよろけそうになるときは?

*つま先を90度に開いて、かかとをつけた姿勢が最優先。
*おなかを縦に伸ばしながら、1cmでもよいのでできる範囲でかかとを上げる。
*それでも不安定なら、腕を上げずにイスの背などをつかみながら行うとよい。