ひどいニキビ肌が治り女子学生も大喜び!
私は長年、食生活に無理なく酢を取り入れる方法を提案してきました。
というのも、酢は健康効果が高く優れた発酵調味料であるというのに、特に若い世代には、苦手とするかたが多いように思われるからです。
今回のテーマである「酢ニンジン」は、そんな酢と、薬効高いニンジンを組み合わせた、栄養学的に優秀なレシピです。
私はこれに、さらに油を加えた「酢ニンジンの油和え」を提案したいと思います(作り方は下記参照)。
私が酢を勧めるようになったきっかけは、それこそ何十年も前のこと。大学で教鞭を執っていたころ、学生たちと、酢の効能について調査をしたのです。
学生を、毎日積極的に酢を摂取する班と、摂取しない班の二つに分け、2週間後の変化を比較しました。すると、酢を摂取した班の学生に、明らかな健康効果が現れたのです。
特に印象的だったのは、ひどいニキビ肌の女子学生です。顔だけでなく、背中まであったボツボツが、すっかりキレイになりました。本人も、びっくりするやら、喜ぶやら。これを機に、酢の研究に本腰を入れるようになったのです。
酢は、防腐・殺菌や疲労回復、食欲増進をはじめ、代謝促進、降圧、血糖値降下など、数々の優れた作用を持ちます。
料理への使い勝手もよく、どんな野菜と組み合わせてもおいしいものですが、ニンジンといっしょにとるのは機能的な側面からも理にかなっています。
というのも、生のニンジンにはアスコルビナーゼという酵素が含まれており、これはビタミンCを破壊する作用があります。酢は、このアスコルビナーゼの働きを抑制する働きを持つため、ニンジンと組み合わせることで、その欠点を補うことができるというわけです。
粘膜が丈夫になって肌にハリが出たと実感
一方で、ニンジンも大変栄養価の高い食材です。ニンジンの主要な栄養素は、βカロテンという色素成分で、その含有量は野菜の中でもトップクラス。βカロテンは、体内に入るとビタミンAに変換されるので、ニンジンはビタミンAが非常に豊富な野菜といえます。
ビタミンには脂溶性と水溶性があり、ビタミンAは脂溶性です。油といっしょにとることでより体に吸収されやすくなります。私が酢ニンジンに油を加えるのは、そのためです。
講演会などでは常々、「毎日1/2本のニンジンを食べればほかの食事からとる分も合わせて、1日に必要なビタミンAが摂取できる」と勧めています。 しかし、ニンジンもまた、好みの分かれる食材です。かくいう私も、ずっと苦手でした。積極的にとるようになったのは、40代のころからです。
当時の私は、忙しさによるストレスのせいか、肌が荒れていました。額やほおに吹き出物がたくさん現れ、それはひどい状態でした。加えて、論文の執筆などで座りっぱなしの生活もよくなかったのでしょう、便秘も悩みの種でした。
しかし、できれば薬ではなく食事の改善で治したいと思い、酢とニンジンを合わせてせっせと食べていたところ、お通じがよくなり、ほどなくして肌荒れも解消。それ以来、スベスベでシミが少ない白肌を維持できています。私は、84歳になりますが、肌がキレイですねとほめられることもあるのです。
酢と、ニンジンに含まれるビタミンAは、いずれも皮膚の新陳代謝を促す作用があります。私自身も、目・口・鼻などの粘膜が丈夫になり、肌にハリが出たという実感があります。しばらく食べないと、こわばるような感じがして、肌の弾力性が失われるのがわかるのです。
食物繊維も、便秘の改善に役立ちました。生ニンジンに含まれる食物繊維総量は、2.4~2.8gと、野菜の中でも多いほうです。水溶性と不溶性の食物繊維を両方含むので、便をやわらかくしてかさを増やしお通じをスムーズにします。
酢とニンジンの合わせ技による健康効果を、皆さんもぜひ、実感してください。
酢ニンジンの油和えの作り方

【材料】(2食分)
ニンジン…大1本、酢…大さじ1
ゴマ油…適量、塩…小さじ1/2、黒コショウ…適宜
【作り方】
❶ニンジンをせん切りにする。
❷ボウルに①と塩を入れてもみ、30分おいてから水気をしぼり、酢とゴマ油で和え、器に盛る。好みで黒コショウを振る。
※皮はむいてもむかなくてもよい。
※3〜4日は日持ちする。冷凍保存も可能。その場合は電子レンジで加熱して食べる。
※生食がかたく感じられる場合は、ニンジンを加熱して使ってもよい。
解説者のプロフィール

落合敏(おちあい・とし)
●NHP OCHIAI Office
http://www.nhp-ochiai.jp
管理栄養士・栄養学博士。
日本栄養・食糧学会終身会員。千葉大学看護学部非常勤講師、千葉県立衛生短期大学教授、茨城キリスト教大学教授などを経て、(有)NHP OCHIAI Officeを設立。メディア出演・著書多数。子供の食育をはじめ、自身の経験をもとにした介護にまつわる食育など、現在では講演活動に力を入れている。