解説者のプロフィール

五十嵐ゆかり(いがらし・ゆかり)
●五十嵐ゆかりオフィシャルブログ
https://lineblog.me/igarashiyukari/
料理研究家・管理栄養士。
フードクリエイティブファクトリー所属。老若男女、幅広い世代に向け、「楽うまヘルシーな時短ごはん」をモットーに、日々の暮らしに取り入れやすい健康レシピを数多く提案。省庁や全国自治体との企画・レシピ開発や講演、執筆など、精力的な活動を行っている。著書に『食材の栄養素を最大限に引き出す便利帖』(永岡書店)などがある。
たんぱく質と同時摂取で免疫力アップ!
食欲が落ちると、さっぱりとした麺類を食べがちです。食事が炭水化物に偏ると肥満の原因になるうえ、栄養のバランスが悪くなり、ますます体調をくずしやすくなります。
体調管理のためにお勧めしたいのが、ゴーヤのスライスを酢漬けにした「酢ゴーヤ」です。
しかし、ゴーヤ特有の苦みが苦手というかたも、少なくないでしょう。そこで役立つのが、酢漬けにする方法です。ゴーヤは、酢に漬けることで苦みが和らぎ、食感もやわらかくなるので、生のままよりも食べやすくなります。
酢ゴーヤは、酢だけで漬けてもいいのですが、少々酸味が強くなります。そこでお勧めなのが、ハチミツです。酢とハチミツを混ぜて甘酢にすると、味がまろやかになります。また、乾燥コンブを入れると、旨み成分のグルタミン酸が、ゴーヤの苦みを和らげてくれます。
酢ゴーヤは、冷蔵庫で3日ほどおいてから食べましょう。漬けている間は時折、容器を上下に振って混ぜると、酢が全体に浸透しやすくなります。出来上がったら、2週間くらいで食べ切ってください。
食感がかたくて食べにくいようなら、スライスしたゴーヤを電子レンジ(600W)で1分ほど温め、粗熱が取れてから酢に漬けるといいでしょう。ゴーヤをゆでると、ビタミンCなどの水溶性の成分が水に溶け出てしまうので、注意しましょう。
酢ゴーヤは、料理にも応用が効きます。サラダのトッピングにしたり、ナムルや白和えに加えたり、ゴマやキムチなどと和えたりしてもいいでしょう。
また、酢ゴーヤは、豆腐や肉類、卵など、たんぱく質が豊富な食材といっしょにとると、ビタミンCが持つ免疫増強作用との相乗効果が期待できます。ですから、酢ゴーヤチャンプルーにするのもお勧めです。
漬け酢にもゴーヤの成分が溶け出ていますから、酢の物やドレッシングに活用しましょう。健康効果を得るには、一度にたくさん食べるより、少量でも毎日続けることが重要です。
なお、ゴーヤはずっしりと重くて全体の緑が濃く、ツヤやハリがある物、イボがかたくて密集している物を選ぶといいでしょう。
ビタミンCの含有量はトマトの5倍!
ゴーヤに含まれる栄養素で特徴的なのは、ゴーヤ特有の苦み成分である、モモルデシンという物質です。モモルデシンには、血圧や血糖値を下げる作用があるとされ、生活習慣病の予防にも役立ちます。
また、ゴーヤは、各種ビタミンやミネラルも豊富です。なかでも多いのが、βカロテンとビタミンCです。
βカロテンは、カロテノイドという色素の一つで、強い抗酸化作用があるとされています。これが、必要に応じて体内でビタミンAに変わることで、皮膚や粘膜を丈夫にします。また、目の機能アップも期待できます。ちなみに、油といっしょにとると、その吸収率がアップします。
ビタミンCは、「美肌ビタミン」として知られるように、コラーゲンの生成を助けたり、メラニン色素の生成を抑えたりする働きが期待できます。
また、ビタミンCは熱に弱い栄養素ですが、ゴーヤのビタミンCは熱に強いという特長を持つため、加熱してもほとんど壊れません。その含有量はなんと、トマトの5倍に及びます。ですから、炒めたりスープに入れたりして食べるのもいいとり方でしょう。
一方、ゴーヤを漬ける酢にも、すばらしい作用が期待できます。
まず、酢に含まれる酢酸には、血中の余分な脂肪や内臓脂肪を減らす効果が確認されています。また、食後の血糖値の急上昇を抑える効果も報告されています。
さらに、胃腸を刺激して食欲を促す作用や、クエン酸による疲労回復作用など、その働きは多彩です。
ですから、ゴーヤと酢を組み合わせた酢ゴーヤは、病気・美容・ダイエットに役立つ、まさに一石三鳥の健康食といえるのです。
暑さに負けない体をつくるためにも、ぜひ、今が旬のゴーヤを酢漬けにして、毎日の食事に取り入れてください。

加熱してもビタミンCが壊れにくい!
基本の酢ゴーヤの作り方

エネルギー:160kcal 塩分:0.0g(全量)
【材料】(作りやすい分量)
・ゴーヤ…中1本(正味約200g)
・酢…150ml程度(容器の大きさにより調整)
※穀物酢、米酢、黒酢、リンゴ酢、ワインビネガーなど、お好みの物でOK。
・ハチミツ…30g
※糖分が気になる場合は、ハチミツのかわりに乾燥コンブ(5×5cm程度)を漬けると、苦みが和らいで食べやすくなる。

【作り方】
❶ゴーヤは縦半分に切って種とワタを取り除き、2mm幅に切る。

❷煮沸消毒した容器(ジッパーつきの保存袋でも可)に酢とハチミツを入れて混ぜ、①のゴーヤを加える。

❸ふたをして冷蔵庫で保存する。合わせ酢が漬からなくても、数日経つとゴーヤの水分が出て、漬かるようになる。

※3日後から食べられる。1~2週間は日持ちする。
※取り出す際は清潔な箸などを使う。
※残った漬け酢は、ゴーヤを漬けるのには再利用しない。
残った漬け酢の活用法
漬け酢にも各野菜の栄養成分が溶け出しています。余すことなく使い切りましょう。
■味を調えてドレッシングにする
砂糖や塩、油を加えればサラダにピッタリ!
■薄めて飲む
胃を痛めないよう、水などで4~5倍に薄めてください。
■炒め物に回しかける
油っこさが和らいで、さっぱりします。
■炊飯時に加える
米1合につき大さじ1程度。酸味は飛び、風味が残ります。