余分な角質が取れ、足裏の感覚が鋭くなる
私たちの脳は、二足歩行になったことで、目覚ましい進化を遂げてきました。直立した二足歩行では、手の指が自由に使えます。また、四足歩行に比べて、不安定な体を上手に制御する必要が生じました。それらの要因が、空間認知と身体制御をつかさどる小脳を発達させたのです。
加えて、足裏がさまざまな刺激を受けるようになります。その豊富な足裏からの情報が、脳を活性化させたのです。
私たちの足裏の神経は、地面の傾きや段差、すべり具合、靴や靴下、ストッキングをはいたときの感覚など、歩行時に多くの情報を脳に伝えてくれます。
それを脳が瞬時に処理し、どのように体を動かすべきかの指令を、全身の各部位に向けて出します。それにより、私たちは不安定な道でも、転ばずに歩くことができるのです。
ロボットは、人間のようには細やかな動きはできません。これは、足裏の感覚と脳とが、人間ほど密接につながっていないからです。
私たち人間も、年齢を重ねるにつれ、歩き方がぎこちなくなったり、ちょっとした段差でつまずきやすくなったりします。これは一般的には、加齢による筋力低下が原因だと考えられていますが、それに加え、足裏の感覚が鈍くなっていることも大きな一因でしょう。
「歩けなくなるとボケる」とはよくいわれますが、それはまさに、歩行時の足裏からの情報がなくなることによって、脳が衰えてしまうからなのです。
そのため、頭脳明晰なままに長生きするには、足裏の感覚を鋭敏にすることが重要です。その方法としてお勧めなのが、足裏をブラシでみがくことです。
足裏をブラシでみがくと、刺激が脳に伝わり、脳が活性化してボケを防ぎます。加えて、余分な角質も取れるので、足裏の感覚もより鋭くなるのです。
足裏ブラッシングの効果

全身の毛細血管が再生し冷え症も改善

床に置く形の足裏ブラシもある
最近の研究では、足裏みがきが新たな効果をもたらすことも判明しました。
上の表をご覧ください。足裏をブラシで刺激すると、血液中の酸素濃度が上がっているのがわかります。
また、別の実験によれば、足裏をみがくことによって、足裏以外にある毛細血管も再生することも確認できました。
毛細血管は、私たちの健康を維持するうえで、重要な器官です。老化などによって、毛細血管が傷ついたり、欠損したりすると、その部分には酸素や栄養素がじゅうぶんに届かなくなります。それが、病気や痛みの原因になることがあるのです。
足裏みがきで、血中の酸素濃度が上がり、全身の毛細血管が再生すれば、健康維持に役立つことは間違いありません。
さらに、足裏みがきには冷え症改善の効果もあります。被験者に足裏みがきを1ヵ月続けてもらったところ、ほぼ全員がひざ下の体表温度が上昇し、日常的に冷えを感じにくくなったのです。いずれの実験も、床に置く形の足裏ブラシで行いました。
私自身も、足裏みがきを実践していますが、さまざまな健康効果を実感しています。なかでも特に感じるのが、睡眠の質の向上です。足裏みがきを習慣にする前と比べ、明らかに睡眠が深くなり、翌朝スッキリとした気分で起きられるのです。おかげで、疲れもたまりにくくなりました。
両足の足裏全体を、1分ずつブラシでみがいてください。毎日続ければ、体が変化していくのを感じられるはずです。
解説者のプロフィール

黒川伊保子
1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、14年にわたり人工知能の研究開発に従事。2003年、(株)感性リサーチを設立。人工知能の研究成果をマーケティングに導入し、感性分析の第一人者となる。近著に『家族脳:親心と子心はなぜこうも厄介なのか』(新潮社)などがある。