解説者のプロフィール

劉莉亜(りゅう・りあ)
●劉先生鍼灸院
神奈川県小田原市栄町1-4-5倉持ビル4F
0465-24-2122
http://www.ryu-sensei.com/
劉先生鍼灸院院長。
1982年、中国医科大学医学部卒業。96年、愛知医科大学で医学博士号を取得。2001年、劉先生鍼灸院を開設。中国遼寧中医大学名誉教授。
さまざまな症状が首の不調に起因する
私は神奈川県小田原市で、頸椎症専門の鍼灸院を開業しています。神奈川県内や東京などの近隣のかたはもとより、大阪や北海道など、日本全国から多くの患者さんが、日々来院されています。
患者さんのほとんどは、「どこに行っても治らなかった」という悩みを抱いており、わらをもつかむ思いで、私のもとにたどり着いたかたがたです。
症状は、首の痛みに限りません。高血圧、不整脈、不眠、頭痛、めまい、耳鳴り、うつ状態、目の症状、顎関節症、股関節痛、腰痛、更年期障害など、さまざまです。
これらの病気や症状のほとんどは、首の不調に起因すると私は思っています。病気や体調不良の90%は、頸椎(首の骨)や、その周辺の筋肉や筋膜、靱帯といった軟部組織が損傷したり、かたくなったりすることが原因と考えられるのです。
それなのに、めまいや耳鳴りが起これば耳鼻咽喉科、うつ状態になれば心療内科、顎関節症になれば歯科というように、原因である首は診てもらうことなく、出ている症状の専門科を受診することが多いでしょう。
各科の医師は、自分の専門分野に照らし合わせた治療しか行わないので、首の問題は見過ごされてしまいます。そして、確固とした原因が見つからなければ、「老化」とか「自律神経失調症(体の諸機能を調整する自律神経の不調)」などと片づけられる場合が多いのです。
私は鍼を打つことによって、頸椎や周辺の軟部組織のバランスを取り、全身の不調を改善に導く治療を行っています。
私の治療院の場合、週に1回の鍼治療を3ヵ月受けてもらうと、ほとんどの症状が改善に向かいます。さらに、鍼治療のあと、自宅でケアを行うと、治療効果が上がります。
驚くほど早く症状が回復する!
そのセルフケアとして、私が患者さんに勧めているのが、「足の指回し」です。
鍼を打ったあと、次回の治療までの間に、熱心にセルフケアを行う患者さんは、驚くほど早く回復します。
このセルフケアは、中国の医師に教えてもらいました。
私はいつも、インターネットで中国の医師や治療家のかたがたと交流しています。話題の中心は、新しい治療法や、患者さんに勧めやすいセルフケアなどです。そのなかで最近、1人の中国人医師と、頸椎治療について雑談しているとき、「頸椎の調整に、足の親指(母趾)を使うといい」と教えられたのです。彼自身、患者さんに勧めて効果を上げているとのことでした。
それでは、首を調整する足の指回しのやり方を説明します。
首の右側が痛い場合や、右半身にしびれなどの症状がある場合、右足の親指を刺激します。左に症状が出ている場合は、左足の親指を刺激してください。
首の真ん中、もしくは左右両方に症状があるときは、両足の親指を回しましょう。

❶手で足の親指をつかんで、指先の方向に引っ張る。足の親指のつけ根が重だるくなるまで、100回ほど続ける。
❷親指を回す。最初は小さい回転で、しだいに大きく回していく。時計回りに10回、反時計回りに10回。
❸足の裏を伸ばすように、足の5本の指を手でつかんで反らす。
首の神経や血管の圧迫を解き全身症状を改善

足の親指のつけ根を刺激する
なぜ、首の不調を改善するために、足の親指を回すのでしょうか。
ご存じのように、足には全身を投影する反射区があり、首に対応しているのが、足の親指のつけ根なのです。
頸椎症によってさまざまな症状に苦しんでいる人は、首の骨の周辺にある筋肉群が、こり固まっています。
首の反射区である足の親指を回して、やわらかくすることで、首の骨の周辺にある筋肉群を、緩めることができます。そうすることで、頸椎が圧迫から解放され、さまざまな症状が改善に向かうのです。
頸椎は、7個の椎骨が連なって構成されています。その周りを筋肉や筋膜、靭帯などの軟部組織が覆って、頸椎を守っているのです。
ところが、なんらかの原因で、軟部組織が損傷したり、かたくなったりすると、頸椎がねじれてゆがみます。すると、頸椎の中を通っている神経や血管が圧迫され、首の痛みだけでなく、先述したような全身症状が現れるのです。
現代人の生活には、首を痛める原因があふれています。パソコンやスマートフォンの長時間使用、通勤電車での居眠り、短時間睡眠による疲労の蓄積などなど。スポーツや、テーマパークのアトラクションのなかにも、首に大きな衝撃を与えるものがあります。
現在、首に不調がない人も、病気と痛み、老化予防のために、ぜひ足の指回しを習慣にしてください。
今回ご紹介した足の指回しのほか、足の裏の親指のつけ根に、お灸をするのもいいでしょう。