欧米には、「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」ということわざがあります。
それほど、リンゴは健康に役立つフルーツです。
今回ご紹介する「朝リンゴダイエット」は、朝食をリンゴか、リンゴのジュースに置き換えるものです。
その優れた健康効果を生かし、健康的にやせることができます。
糖質制限でご飯などの主食をへらせば体脂肪がさらに燃焼する!
朝リンゴダイエットと合わせて行ってほしいのが、糖質制限食です。
糖質制限食とは、血液中の糖分量を上げる要因となる、糖質の摂取量をへらす食事法です。
糖質制限食では、糖質の多いご飯やパンなどの主食は、極力へらします。
一方、魚や肉などの料理は、ある程度好きに食べてかまいません。
糖質を制限すると、エネルギー源である血液中のブドウ糖が減少します。
すると、エネルギーを補うため、内臓脂肪や皮下脂肪に蓄えられた中性脂肪や、肝臓で合成されるコレステロールが脂肪酸に分解されて使われるようになります。
その結果、体脂肪をへらすことにつながるのです。
また、糖質を制限すると血糖値が上昇しないので、インスリンの分泌もおさえられます。
この結果、血糖値が安定し、血液中の中性脂肪値や悪玉のLDLコレステロールの数値が下がります。
これらのことが奏功して、健康的に減量することができるのです。
朝リンゴダイエット成功ポイント(1)血糖値を上げにくい食品はGI値を参考にして選べ!
糖質の含有量が同じでも、食後に血糖値を急激に上げる食品と、上げない食品があります。
食後、どの程度血糖値を上げるかを数値化したものが、GI(グリセミック・インデックス)値です。
GI値は、ブドウ糖を100とした場合のそれぞれの食品の値で、数値が高ければ高いほど、食後の血糖値の上昇が急激です。
糖質は、主食になる食品に多く含まれているので、なるべくGI値の低い食品を選ぶことが必要です。
目安としては、60以下のものがお勧めです。
次の表を参考にしてください。
主な食品のGI値一覧(100gあたり)

もう一つの目安は、その食品が白いかどうか、つまり、精製されているかどうかです。
精白米より玄米、食パンよりライ麦パンや全粒粉のパンのほうがGI値が低く、血糖値が上がりにくいのです。
すぐに切り替えることが難しければ、徐々に慣らしながら低GI値の食品へと切り替えていくといいでしょう。
精製された食品の代表が砂糖です。
白砂糖は、腸からの吸収が早く、急激に血糖値を上昇させます。
どうしても料理に甘みを加えたいときは、人工甘味料を用いてください。
朝リンゴダイエット成功ポイント(2)食物繊維→たんぱく質→糖質この順で食べて脂肪を防げ
ダイエットを成功させるには、食べる順番が大切です。
順番の原則は、「食物繊維→たんぱく質→糖質」です。
野菜やキノコ、海藻などの食物繊維が豊富な食品を先に食べることで、後に摂取する脂質や糖質の腸からの吸収を確実にゆっくりにさせます。
最初に野菜サラダを食べ始めたら、ほかの料理には手をつけず、それを食べ切ります。
手をつけた料理を食べ切るまでは、次の料理には手をつけません。
サラダやおひたしを食べ切ってから、次にメインのおかずを食べ切ると満腹感が出てきて、最後に残った主食をそれほど食べたいと思わなくなります。
そもそも、食事を始めてから満腹感を得るまで、20~30分かかります。
主食にたどりつくまでに、なるべく時間をかけるように心がけてください。
ダイエットでは、夜食は厳禁。
夕食から寝るまでの時間が3時間以下だと、吸収された糖質がエネルギー源としてほとんど使われず、中性脂肪として体に蓄積されてしまうためです。
朝リンゴダイエット成功ポイント(3)朝食抜き、早食い、どか食いを見直せ!
体重の増加には、食事の量や質だけではなく、食習慣も大きく影響します。
避けたいのが、朝食抜き、早食い、どか食いといった食習慣です。
朝食を抜くと、前夜の夕食から次の食事まで、半日以上何も食べないことになります。
すると、胃腸は、次の食事でエネルギーを最大限に吸収しようとして、太りやすくなるのです。
早食いで、よくかまずに飲み込むように食べると、脳の摂食中枢が満腹信号を出す前に食べすぎてしまいます。
朝食を抜いたり、昼食の時間がずれたりすると、肥満を招くどか食いをしたくなるので、注意しましょう。
外食で、ラーメンやカレーライスなど、炭水化物が多い単品料理を食べるのは、栄養バランスの面からも厳禁です。
どうしても食べたい場合、海藻サラダなど、食物繊維を含む低カロリーメニューも頼み、そちらから先に食べるようにしましょう。
朝リンゴダイエット成功ポイント(4)日野原先生も実践していた「腹7分目」で健康長寿
カロリー制限によって寿命が延びることは、各種の動物実験でわかっています。
近年、最も注目されたのがアカゲザルの研究です。
1989年から、アメリカの研究グループが、アカゲザルの食事を通常量の70%に制限し、その影響をその後20年追跡。
その結果、20年経過時点の生存率は、通常のえさを食べたグループが63・16%、70%制限グループが86・84%と、かなりの差が出ています。
しかも、70%制限グループは、通常グループに比べて、ガンや糖尿病などの病気になりにくいのです。
顔つきや毛並みなどの見た目は、もっと顕著で、老人と若者ほどの差が現れています。
私の人生の目標でもある、聖路加国際病院院長の日野原重明先生(故人)は、100歳を迎えた後も、現役の医師として活躍されていました。
先生の摂取エネルギー量は、70歳以上の男性のエネルギーの所要量の70%でした。
以来、「腹7分目が適正」と皆さんに自信を持って推奨するようになりました。
朝リンゴダイエット成功ポイント(5)まずは現状の5%のダイエットを目指せ!
ダイエットを行うとき、20歳の体重に戻すのが理想とよくいわれます。
しかし、中高年になってから、30~40年前の体重に戻すのは無理というものです。
100歳を超えて健康で人生を謳歌しているかたを、私は「百寿者」と呼び、尊敬しています。
百寿者は、若いころから現在に至るまで、ほとんど体重の変化がありません。
日野原重明先生も、20歳のころと変わらない体重を維持しているといいます。
体重は一定の範囲内で維持することが大切。
中高年以降の極端な体重の増減は、命にかかわる問題になりかねません。
そこで、中高年のかたは、現状の体重の5%減を目指してください。
5%の減量に成功するだけでも、高かった血糖値や悪玉コレステロール値などが、基準値内に収まってくるでしょう。
それが達成できたら、次に、「5年かけて5年前の体重に戻しましょう」と指導しています。
解説者のプロフィール

白澤卓二(しらさわ・たくじ)
●お茶の水健康長寿クリニック
東京都千代田区神田駿河台2-8 瀬川ビル7F
03-5577-4970
https://ohlclinic.jp/
●白澤抗加齢医学研究所
https://www.shirasawa-acl.net/
お茶の水健康長寿クリニック院長。白澤抗加齢医学研究所所長。医学博士。
1958年、神奈川県生まれ。82年、千葉大学医学部卒業。90年、同大学大学院医学研究科博士課程修了。東京都老人総合研究所を経て、2007~2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。
17年、お茶の水健康長寿クリニックを開院。日本ファンクショナルダイエット協会理事長、日本アンチエイジングフード協会理事長、ミシガン大学医学部神経学客員教授も務める。
テレビや新聞、雑誌での医学解説でも活躍。著書・監修書は300冊を超える。『白澤卓二教授の朝りんごダイエット』(マキノ出版)など。
出典『白澤卓二教授の朝りんごダイエット』(マキノ出版)