砂糖なしの「あんこ」なのに甘い!!栄養満点!
「あんこ」というと、砂糖が多い印象をお持ちのかたが多いのではないでしょうか。血糖値や肥満を気にして、控えているかたもいるかと思います。
そんなかたにもお勧めできるのが、砂糖を使わず、糀で甘味を出す「発酵あんこ」です。
私は「食とアートで、体と心を整えること」を柱に活動しています。料理教室で、発酵あんこの作り方を教えたら大反響! 甘くておいしいばかりか、体調がよくなったという声が続出しています。
発酵あんこが、砂糖を使わず甘いのは、理由があります。
糀の菌が作り出す「酵素」の働きで、アズキのでんぷんが分解され、ブドウ糖になるので、発酵あんこはほんのり甘いのです。
発酵あんこを食べたかたからは、「砂糖なしと気づかなかった」「胸やけしない」「簡単にできて保存できるのがうれしい」「日がたつにつれ味がまろやかになる」といった声をいただいています。
あんこには砂糖が多く使われているので、罪悪感を持ちながら食べている人も多いかと思います。
しかし、「発酵あんこ」なら、そんな心配もいりません。
お伝えしたように、糀には、でんぷんやたんぱく質を分解する酵素が、100種類以上も含まれています。そのため、発酵あんこなら、アズキをそのまま食べるよりも、アズキの栄養を、しっかり吸収できます。
糀自体にも、ビタミンB群やオリゴ糖、アミノ酸など、脳と腸に必要なほとんどの栄養素が含まれているので、発酵あんこには精神安定効果も期待できます。
肌がきれいと言われる!妊婦さんも便秘知らずに
私が、発酵あんこなど糀の発酵食に心をひかれたのは、6〜7年前の“塩糀ブーム”がきっかけでした。
楽しみに市販の塩糀を食べてみたのですが、残念ながら私が期待した味ではありませんでした。そこで「おいしい糀調味料を自作できないかな」と考えるようになったのです。
糀とご飯で作る甘酒をもとに、塩糀、醤油糀などを作ってみたところ、他の調味料がいらなくなるほどのおいしさにビックリ! それから、糀を使った調味料や発酵食への関心が広がっていきました。
糀を生活に取り入れてしばらくたった頃、体の不調をほとんど感じなくなったことに気がつきました。
私も家族もカゼをひかなくなり、予防接種を受けなくても、インフルエンザにかからなくなりました。
分解力の強い糀ですから、体の毒素も分解してくれて、免疫力が上がったのかもしれません。
料理教室に通っている妊婦さんは「糀を取るようになり、便秘や肌荒れがなくなった」と喜んでいます。
また、私は化粧をほどんどしませんが「肌がきれい」とよく言われます。目立つシワもありません。そういえば、そばかすも薄くなってきています。
更年期世代ですが、気になる症状もなく、元気に過ごしています。

罪悪感を持たず甘いものを楽しめる
私はもともと、介護老人施設や透析クリニックで管理栄養士をしていました。そのときに「食べ物が偏ると、考え方が偏りやすい」と気づき、食と心の関係に関心を持つようになりました。たとえば、甘いものばかり食べて、カルシウムが不足すると、イライラしやすくなります。栄養素をバランスよく取ることが、心の安定につながるのです。
一方、病気を治すために「これもダメ、あれもダメ」と食べ物を制限するのは、患者さんにとってストレスになります。禁止するのでなく、「ここまでは食べていいですよ」という適量を示すと、患者さんは「前の病院ではダメと言われたのに、食べていいんですね」と安心されます。
人間にとって食べる喜びはたいせつなものです。ストレスを感じず、食事を楽しみながら、必要な栄養素をバランスよく取るために、「発酵あんこ」を始め、糀の発酵食はとても役立ちます。
手間なし「発酵あんこ」の作り方
「ジッパー付きの袋」を使ってアズキを発酵させる方法を紹介します。
ジッパー付きの袋を使えば、雑菌の侵入を防げるので、衛生的に発酵あんこを作れます。
完成後の急冷や、冷蔵・冷凍も、容器を変える必要がないので速やかにできます。
材料

アズキ…100g(市販のゆでアズキでも可。その場合は250g)
乾燥糀(生糀でも可)…100g

(1)鍋にアズキと水300mlを入れ沸騰させ、5分ほどゆでたら、エグみを抜くためザルにあける。一晩アズキを水に浸してからゆでると、より抜けやすい

(2)鍋にアズキを戻し、水300mlを入れ沸騰させたら、弱火にして40〜60分煮つめ、アズキを柔らかくする。水が蒸発しないよう、必要なら水を足す

(3)柔らかくなったアズキをジッパー付きの袋に入れ、ベチャッとした、あんこのような感触になるまでもみつぶす

(4)ほぐした糀を加え、アズキともみ混ぜる。まんべんなく混ざるとマッシュポテトのような感触に。パサパサ感が気になる人は湯を大さじ1入れる

(5)袋の空気を抜き、密封する

(6)炊飯器に、60度くらいの湯を、❺の袋がじゅうぶんつかるくらい入れる。「熱くて指が入れられないギリギリの温度」が目安。その後、袋を入れる

(7)炊飯器を保温モードにしたら、蓋は閉めず、濡れふきんをかけて、8時間置き発酵させる。発酵させるとあんこの水気が増す

(8)取り出した袋を、氷水で10分急冷する。急冷後は冷蔵庫で保存し、1〜2週間で食べきる。袋のまま保存しても容器に移してもよい

甘くておいしい発酵あんこの完成!!
魔法瓶を使ってアズキを柔らかくする方法

魔法瓶に、アズキと容器いっぱいの熱湯を入れ、一晩置く。魔法瓶の容量はアズキの10倍以上(100gなら1L以上)がよい

アズキをザルにあける。指でつぶせるくらい、ホロホロだとよい。硬ければ魔法瓶にアズキを戻し熱湯を入れ、しばらく待つ
甘みと滑らかさが増す「粉末糀」
発酵あんこを作るときに、糀をミルミキサーやペッパーミルで粉砕した「粉末糀」を使うと、甘味やまろやかさが増し、見た目も滑らかで、本物のあんこのようなポクポクした食感になります。また、粉末糀を使うと熟成が早まるので、発酵時間を短くすることができます。糀のツブツブが気になるかたは、ぜひ試してください。

「さらしあん」でさらに時短

アズキを粉末状にした、市販のさらしあんを使うと、アズキを柔らかくする作業が省け、さらに時短になります。
さらしあんを使った発酵あんこの作り方

【材料】
さらしあん…100g 糀…100ℊ 熱湯…200ml
【作り方】
(1)鍋にさらしあんと熱湯を入れ、よく混ぜる

(2)60度くらいまで冷めたら、糀を入れ混ぜる

(3)ジッパー付きの袋に入れる
この後は手間なし「発酵あんこの作り方」の
手順(5)〜(8)と同じ
食べ方いろいろ

お湯でゆるめて「おしるこ」に

「ヨーグルト」に入れて

豆乳でゆるめて冷凍し「アイス」に

「トースト」に塗って
解説者のプロフィール

高山益実(たかやま・ますみ)
食とアートで心を彩る暮らし「食心のアトリエ」を主宰。
管理栄養士、認定心理士、認定コーチ。
食は体だけでなく心に大きく影響を与えていると考え食と心の両方から栄養を考える。
病院、医院、専業主婦、介護老人福祉施設勤務、透析クリニック栄養指導を経験。
食と心の繋がりに着目したセラピーレッスン、パステルアートなどのヒーリングレッスンを行う。
甘酒や発酵あんこのワークショップを定期開催。
近著は『栄養満点!体調良好!作って美味しい甘酒調味料』(ごきげんビジネス出版)。