解説者のプロフィール

本多京子(ほんだ・きょうこ)
実践女子大学家政学部食物学科を卒業後、早稲田大学教育学部体育生理学教室研究員を経て、東京医科大学で医学博士号を取得。NPO日本食育協会理事。プロ野球のほか、ラグビー、スキー、相撲などスポーツ選手に対する栄養指導の経験を有する。テレビや雑誌での健康と栄養に関するアドバイスやレシピ作成など幅広く活動。
10代の若者も高齢者も必要なたんぱく質量は同じ
筋肉を増やすには、必要なことが2つあります。1つは、筋肉に適度な負荷をかける運動を定期的に行うこと。もう1つは、毎日の食事でたんぱく質をしっかり取ることです。
たんぱく質は筋肉や骨、皮膚や毛髪、臓器、血管や血液、ホルモンや酵素など、体のあらゆる材料となる重要な成分です。人体を構成する成分のうち、水を除いてもっとも多いのが、たんぱく質。
たんぱく質は英語でプロテインといいますが、その語源は古代ギリシャ語のプロテイオスからきています。プロテイオスとは「第一の」「第一人者」という意味。まさに、私たちの体をつくるためにいちばん大事な成分なのです。
ところが日本人、特に中高年の女性は、たんぱく質の摂取量が不足しがちです。
一般に、女性は1日に50g、男性は60gのたんぱく質が必要といわれます。この必要量は、10代の若者も高齢者も変わりません。
しかも、これは現状の筋肉量を維持するために最低限必要な摂取量で、筋肉を増やしたいならば、運動を行いながら、この1.2~1.5倍の量のたんぱく質を取る必要があるのです。

筋肉を増やすには、1日60~75g程度のたんぱく質が不可欠。1缶で約30gのたんぱく質が摂取できるサバ缶は、筋肉の強い味方!
肉食だけではたんぱく質不足になる
50〜60gのたんぱく質を取るには、1日に卵1個、牛乳をコップ1杯半、魚を小1切れ、豚肉を60g(薄切り3枚)、豆腐3分の1丁と、ご飯を茶碗に3杯食べて、ようやくクリアできます。牛肉のサーロインステーキだけで換算すると、1日300g食べなくてはいけません。こう説明すると、大半の人は、たんぱく質が不足しているのではないでしょうか。
たんぱく質を摂取するには、肉や魚介類、卵や乳製品、大豆製品など、たんぱく質が豊富な食品を毎日の食事バランスよく取ることがたいせつです。しかし現代人の食生活では、魚介類を食べる機会が減っています。「魚は調理がめんどう」と敬遠されがちなうえ、外食や市販の惣菜類にも魚のメニューは少ないからです。
そこで、手軽に魚を食べることができる方法としてお勧めしたいのが、サバやサケなど「魚の水煮缶」を活用することです。
魚の水煮缶には、メリットがたくさんあります。まず、保存がきき、調理が簡単でアレンジも自在なこと。水煮缶は、魚が旬の時期に鮮度のよい状態で加工されているので、栄養価も高いのです。缶詰の魚は骨ごと食べられるので、カルシウムを効率よく取ることができるうえ、魚の脂肪には、脳の老化予防に役立つDHAや血管の若さを保つEPAも豊富。味付けも濃くなく、塩分過多の心配もありません。

サバ缶は、筋肉ばかりか脳も喜ばせる優秀食材。脳の老化を防ぐ成分、DHAとEPAがたっぷり!(DHAとEPAの1日の摂取量目安は2つ合わせて1000mg)
1日5分の筋トレとたんぱく質の摂取で筋肉量が増えた!
たんぱく質は一度にたくさん取るよりも、1日3食、均等に分けて取るのが効果的です。
加えて、筋肉を使う運動の前後30分以内に、たんぱく質を取るのがポイントです。筋肉は運動で損傷を受けたあと、修復される過程で、太く強くなります。そのとき、体内にたんぱく質がじゅうぶんにあると、より効果的に筋肉が増やせるのです。
私自身も、1日5分の筋トレを行い、その30分以内にたんぱく質を取る生活を半年間、試してみました。その結果、体重は増えずに体脂肪率が減り、筋肉量が増えました。
皆さんもぜひ、しっかりたんぱく質を取ることを心がけながら、運動に取り組んでみてください。
一般的なサバ缶の主な栄養成分

魚の水煮缶を100個ストックしている
“筋トレ生活”の際に、役立ったのが「サバの水煮缶」です。もともと我が家では、魚の水煮缶を日々の食卓で大いに活用しています。家には災害に備えて缶詰を200個くらい常時ストックしていますが、その半分は魚の水煮缶です。缶詰は賞味期限年ごとに棚に分けて保存し、定期的に買い足しながら、賞味期限が近いものから順に使っています。
3歳になる孫にも、離乳食の時期から魚の水煮缶を与えているので、孫も魚が大好物です。
サバ缶はそのまま食べてもおいしいですが、今回は、サバの水煮缶を使ったお勧め料理を2品ご紹介しましょう。
いちばん簡単なのは、「なんちゃってあら汁」です。味噌汁を作る要領で、水にネギや豆腐など好みの具を入れて煮込み、味噌を入れるタイミングで、サバの水煮缶を汁ごと加えます。夏場は冷やして、ご飯にかけて冷汁風にアレンジしても、おいしくいただけます。筋トレ生活中のたんぱく質補給にぴったりです。
「サバカレー」も、家族から好評のメニューです。ご飯にかけるほか、市販の蒸し豆などを入れて水分が少なめのドライカレー風に仕上げると、パンに挟んでサンドイッチにして食べることもできます。
火を使わずに調理したいときは、甘酢であえた薄切りたまねぎを、サバの水煮缶にかけるのがお勧めです。サラダ感覚でさっぱりといただけ、魚くささが苦手なかたでも食べられると思います。
筋肉が喜ぶレシピ【なんちゃってあら汁】

【材料】(1人分)
普段の味噌汁の材料
サバ缶 1缶(190g程度)
【作り方】
❶好みの具をお鍋に入れ、火を通す
❷火を弱めて、少なめの味噌とサバ缶(缶汁ごと)を入れる
❸汁が再び温まったらできあがり
プロテインパウダーの誤った摂取法は肥満や臓器の負担にも
なお、最近ではパウダー状のサプリメントなどでプロテインを摂取するかたも増えているようです。
プロテインパウダーは、大豆やミルクなどのたんぱく質から作られており、カロリーを控えて質の良いたんぱく質を取りたい人にはいいと思います。普段の食事では不足している分量を知ってから、不足分を補うようにしましょう。
食事でたんぱく質が足りている人が過剰に取ると、体脂肪の増加につながったり、肝臓や腎臓に負担がかかったりすることもあります。また、特定のアミノ酸をサプリメントで摂取する場合も、食事からのたんぱく質摂取をチェックしてから取るべきだと思います。
編集部員もサバ缶に舌づつみ!

筋力の衰えを気にする編集部員も、サバ缶の大ファン。たんぱく質補給のために、最近よく食べているのが「たんぱく質の三色丼」。本多先生の「たんぱく質が豊富な食品をバランスよく摂取するのが大事」とのアドバイスを守るべく、サバ缶、納豆、卵を、ご飯にたっぷり載せています。(伊藤)
「朝食や、トレーニングからの帰宅後などに、サッとよそって食べられるので気に入っています」