解説者のプロフィール

武鈴子(たけ・りんこ)
●東京薬膳研究所
東京都渋谷区広尾1-1-35-504
03-6427-7563
http://www.yakuzen.info/
東京薬膳研究所代表。食養研究家・薬膳研究家。
日中医薬研究会会員。1937年、鹿児島県生まれ。全国各地で「薬膳と健康」に関する講演活動を行う。『からだに効く和の薬膳便利帳』(家の光協会)など著書も多い。
お寿司に添えるガリ(甘酢ショウガ)にはどんな健康効果がある?
日ごろ、私たちがなにげなく取っている食品の中にも、いろいろな薬効を持つものがたくさんあります。
それらを組み合わせることで、さらにすぐれた薬効を得ることができます。
その代表例といえるのが、「酢とショウガ」の組み合わせです。
酢とショウガで作るものといえば、まず思いつくのが、お寿司に添えるいわゆるガリ、甘酢ショウガではないでしょうか。
普段気軽に食べていますが、甘酢ショウガは、立派な薬膳料理です。
私は、お寿司屋さんに行くと、山盛りにしてもらって三度もおかわりします。
では、この甘酢ショウガには、どんな薬効があるのでしょうか。
まず、酢には、すぐれた殺菌力があることが知られています。
ですから、食中毒の予防などに効果的です。
このことは、薬膳の理論からもいえます。
酢とショウガはそれぞれに「解毒作用」がある
薬膳の理論では、食品の味を五つに分類して働きをとらえます。
この理論によると、酢のように酸味の食べ物は、五臓のうちの「肝」の働きを助けます。
肝は、体内の解毒を一手に引き受けています。
ですから、肝の働きを強くする酢は、体の解毒作用を高める食品といえるのです。
このほか、酢には、血液をサラサラにする効果や、疲労回復を促す効果もあります。
一方、ショウガは、漢方薬に使う生薬の一種として、非常に古くから知られています。
その代表的な作用は、弱った胃腸の働きを助けることです。
解毒作用にすぐれているのもショウガの特徴です。
魚貝類の中毒を防ぐと同時に、食品のくさみを消して食べやすくする「消臭作用」もあります。
ショウガは、体を温める食品の代表でもあります。
カゼをひいたときにショウガ湯を飲むのは、体を温めるとともに胃腸を守り、回復を促すという意味で、実に理にかなっています。
このように、酢とショウガの作用を挙げてみると、「解毒作用」が共通していることに気付きます。
ショウガの甘酢漬けは、両者の作用が相乗的に働いて、高い解毒効果が期待できる食品です。
昔から、生魚を使うお寿司に甘酢ショウガが添えられてきたのは、まさしく先人の知恵といえるでしょう。
私たちにとって、こうした解毒作用は、食中毒を防ぐというような意味以外にも、必要性が大きいのです。
私たちの生活は、さまざまな有害物質に囲まれています。
体内では、代謝(体内で行われる物質の処理)の過程で害になる物質も作られます。
日常的にショウガの甘酢漬けを食べることは、それらの影響を抑制し、健康な体を維持するのにたいへん役立ちます。
このほか、甘酢ショウガの常食は、血行促進や疲労回復、健胃・整腸、体の保温などにも効果があります。
ガリ(甘酢ショウガ)は手作りできる!
甘酢ショウガは、自分でも簡単に手作りできます。
用意するものは、ショウガ、塩、酢、ハチミツ(または黒砂糖)です。
普通のひねショウガでも作れますが、新ショウガのほうが軟らかくておいしいので、手に入る季節は新ショウガを使うといいでしょう(※)。
また、2倍、3倍量で作ることも可能です。
甘みは、栄養面を考えると、白砂糖よりも、黒砂糖かハチミツをお勧めします。
酢は、米酢、穀物酢、黒酢など一般的なものであれば、どの種類のものでも構いませんが、醸造酢を使ってください。
詳しい作り方は、下のコラムを参考にしてください。
なお、ハチミツは加熱すると成分が壊れるために酢だけを加熱していますが、黒砂糖を使う場合は酢と黒砂糖を一緒に火にかけてひと煮立ちさせてください。
四~五日後から食べられます。
衛生面に気を付ければ、1年ほど保存できるので、新ショウガの季節にまとめて作ると便利です。
日がたつと、ピンク色から黄色や白に変わりますが、薬効には変わりありません。
毎日の食事とともに、一つかみくらいの量を目安として、常食するといいでしょう。
※新ショウガの旬は6〜8月ごろ

甘酢ショウガの作り方
【用意するもの】
*量は倍量、3倍量などまとめて作ってもよい
・新ショウガ……250g
・塩……大さじ1/2
・酢……1カップ
・ハチミツ……3/4カップ
(黒砂糖を使う場合は1/2カップ)

