モヤモヤ血管とは 不要な病的血管のこと

モヤモヤ血管とは、不自然に増殖した異常な血管のこと(オクノクリニック運営・モヤモヤ血管コラムより)
関節痛というと、ひざや腰、股関節の痛みが多いように感じますが、実は、首の痛みに悩むかたも少なくありません。
寝違えのように数日で治まればいいのですが、数ヵ月から数年続くケースも多いのが現状です。
整形外科にかかると、「レントゲンを撮っても異常ありません」といわれて湿布を出され、けっきょく症状は改善しないという声もよく聞きます。
実際には、骨が変形していても痛くないケースがあり、逆に骨に異常がなくても強い痛みを感じる場合もあります。ですから、レントゲン撮影だけでは、痛みの原因はわかりません。
多くの患者さんは、「原因不明の痛みが一生続くのでは」と不安な気持ちになっているでしょう。
しかし、私は、長引く痛みの原因のほとんどが「モヤモヤ血管(不要な血管)」にあることを発見し、論文にまとめました。その研究論文は、国内外のさまざまな医学雑誌に掲載されています。
モヤモヤ血管をへらすことで、長引く痛みの9割が改善ができます。私が病院で行っているのは、血管に管を入れるカテーテル治療や、注射による治療ですが、患者さんに、自分で痛みを軽減する方法も紹介しています。
それは、痛みを感じる患部を圧迫するという方法です。
モヤモヤ血管がある場所は、「押すと痛い」という性質があります。そこで、押して痛い場所を圧迫するのです。すると、一時的にモヤモヤ血管への血流が遮断されます。
モヤモヤ血管は、正常な血管よりも細くて弱いので、一時的に血流が途絶えるだけで、機能が停止します。また、継続して圧迫することで、モヤモヤ血管自体が消えることもあります。
モヤモヤ血管を自宅で治す方法とやり方

モヤモヤ血管を解消するセルフケア方法を説明しましょう。
後頭部から首にかけて、まんべんなく押していきます。押したときに、痛みがあるポイントを見つけてください。痛い場所は、1ヵ所とは限りません。
痛い場所を見つけたら、1ヵ所につき10秒以上、痛みを感じる程度の力で、ギューッと押し続けます。
押す時間が短かったり、もんでしまったりすると、モヤモヤ血管の血流を助長することになります。
必ず10秒以上、手を動かさずに、圧迫してください。痛みが悪化しないかぎり、1日何回行ってもかまいません。
モヤモヤ血管が痛みを引き起こす3つの理由
ここであらためて、モヤモヤ血管について少し詳しくお話ししましょう。
人間の体には、2種類の血管があります。
一つは、生命維持に役立つ正常な血管(生理的血管)、もう一つは病気を悪化させる病的な血管(病的血管)です。
生理的血管は、生まれつき備わっていて、心臓から体の末端まで整然と走っています。体の隅々まで酸素と栄養素を行き渡らせる、パイプ役です。
それに対し、病的血管は、絡まった糸のようにグチャグチャで、酸素や栄養素を運べません。こうした病的血管を、私は「モヤモヤ血管」と呼んでいます。
そして、このモヤモヤ血管こそ、痛みの原因なのです。
なぜモヤモヤ血管が、痛みを引き起こすのでしょうか。
理由は三つ考えられます。
(1)モヤモヤ血管が炎症を起こす細胞の供給路になる
炎症とは、組織が赤く腫れて熱を持つ状態で、症状として「痛み」が発症します。
炎症があるところには、必ずモヤモヤ血管があります。
モヤモヤ血管が、炎症細胞を呼び込み、そこから痛み物質が放出されるのです。
(2)モヤモヤ血管の周りに神経線維がふえる
体の基本ルールとして、血管ができると、血管に寄り添うように神経線維ができます。
モヤモヤ血管とともにふえてしまった神経から、痛みの信号が出ていると考えらます。
(3)無駄な血流がふえて、低酸素になってしまう
モヤモヤ血管は、栄養や酸素を届けるパイプとしての役目を果たしません。
そのため、モヤモヤ血管の周辺の細胞は、低酸素になります。低酸素状態では、乳酸などの物質が発生し、これが痛みの原因となるのです。
モヤモヤ血管ができる原因と症状
では、なぜモヤモヤ血管ができるのでしょうか。
人間の体は本来、モヤモヤ血管ができないしくみになっています。
ところが、40歳を過ぎるころから、そのしくみがくずれてくるのです。モヤモヤ血管が肩関節にでき、強い痛みを生じるのが、四十肩とか五十肩などと呼ばれる症状です。
モヤモヤ血管ができる要因として、「悪い姿勢」や「くり返される負担」も挙げられます。
例えば、パソコンやスマートフォンを使うときの、首を前に突き出す姿勢は、首や肩にモヤモヤ血管を生じさせます。また、清掃や介護の職に就く人は、中腰の姿勢での力仕事をくり返すため、腰にモヤモヤ血管ができるのです。
軽度のうちなら、セルフケアでモヤモヤ血管を減少できます。痛みが重症化しないうちに、痛いところに手を当てて、圧迫するようにしましょう。
重症になると、病院での治療が必要です。運動器カテーテル治療という、もやもや血管を治療するために開発された治療法が効果的です。
運動器カテーテル治療は様々な痛みに対応しています。自分の痛みも対象になるの?という方はぜひ専門の医療機関を受診してみてください。
解説者のプロフィール

奥野祐次(おくの・ゆうじ)
オクノクリニック院長。
慶応義塾大学医学部卒業。2008年より、クリニカETにて放射線科医としてカテーテル治療に従事する。2012年、慶応義塾大学医学部医学研究科修了。研究テーマは「病的血管」「Nature Medicine」を始め、複数の国際医学誌に論文を執筆。江戸川病院運動器カテーテルセンター・センター長を経て、2017年にOkuno Clinic.横浜センター南を開院。2018年に同クリニック、東京六本木ミッドタウン前、東京白山を開院。運動器のさまざまな痛みを抱える患者を治療している。「名医のTHE太鼓判!」(TBS系)などに出演中。
●オクノクリニック
東京都港区六本木7-8-4 銀嶺ビル4F
TEL 0120-305-598
https://okuno-y-clinic.com/
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