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電子顕微鏡で乳酸菌の増加を確認 「昆布酵母」は冷蔵庫で発酵を!

電子顕微鏡で乳酸菌の増加を確認 「昆布酵母」は冷蔵庫で発酵を!

私の勤める高校では、バイオ技術の習得を目的としたバイオサイエンス科があります。私は主に、発酵食品を教材にした微生物(乳酸菌や酵母など)の応用法や、食品製造学などを教えています。今回私は、コンブを水に漬けて発酵させ、微生物の変化を調べました。【解説】山下昭(大阪府立園芸高校バイオサイエンス科講師)

発酵に詳しい大阪府立園芸高校バイオサイエンス科講師の山下先生

コンブに付着している野生の乳酸菌が増えた

私の勤める高校では、バイオ技術の習得を目的としたバイオサイエンス科があります。
私は主に、発酵食品を教材にした微生物(乳酸菌や酵母など)の応用法や、食品製造学などを教えています。

最近、家庭で簡単にできるというコンブ由来の天然乳酸菌と酵母が、話題になっていると聞き、興味を持ちました。

コンブというと、「だし」のイメージが強く、健康効果についてはあまり知られていないかもしれません。

実のところコンブは、アルギン酸やフコイダンなどの水溶性食物繊維のほか、さまざまなミネラル成分を含む、栄養価の高い食品です。
さらに近年では、血圧や血中コレステロール値を下げる作用、免疫機能を増強する作用などが確認され、機能性食品としても注目されています。
また、発酵させたコンブには、より高い健康効果が期待されているのです。

今回私は、コンブを水に漬けて発酵させ、微生物の変化を調べました。
 
まず、コンブを水に漬け、培養を行いました。
コンブを水に漬けて密閉し、摂氏5度の冷蔵庫で低温培養することによって、コンブに付着していた野生の乳酸菌が増殖します。

低温で空気(酸素)を遮断して培養する理由は、腐敗の防止です。
摂氏20~25度で培養すると、乳酸菌よりも生育の早い、細菌やカビなどの好気性微生物が繁殖する危険性が高まるのです。
ですから、一般の家庭で安全にコンブを発酵させるには、時間はかかっても冷蔵庫での培養がお勧めです。
腐敗を防ぎ、乳酸菌の生育が助長されます。

乳酸菌が増えると、培養液の㏗値が下がります。
㏗とは、その液体が酸性なのか、アルカリ性なのかを表す尺度で、0~14までの数値で示します。

真ん中の7が中性です。
㏗が7より小さいと酸性で、数値が小さくなればなるほど酸性の性質が強くなります。
7より大きいとアルカリ性で、こちらは数値が大きいほどアルカリ性の性質が強いことを表します。

さて、実験の結果ですが、1ヵ月後には、pH値が下がって酸性が強くなり、雑菌の数は少なく抑えられていました。

冷蔵庫で発酵させて保存すること!

リンゴなどの果物と比べると、コンブは糖分が少ないため、乳酸菌や酵母の増加は極めて緩やかです。

低温で2週間から1ヵ月の培養では、ブクブクと泡が立ったり、シュワシュワと音がしたり、酸っぱい味やにおいがしたり、ということもありません。

「コンブ酵母」を使って、パンを焼いたりヨーグルトを作ったりする目的でなければ、この状態で利用することができます。
そのまま飲んだり、料理に使ったりして摂取してください。

私は、電子顕微鏡での撮影がしやすいように、コンブ酵母の乳酸菌や酵母をよりいっそう増やす方法を考えてみました。

乳酸菌や酵母のエサとなる糖分などを増やして腐敗も防ぐため、コンブの量を2倍にし、水道水200㎖につき、市販の食酢を1㎖加えました。
そして、摂氏25度の保温庫に入れて培養したのです。

すると、3日後にはブクブクと気泡が発生し、酵母の増殖によるアルコール発酵現象が見られました。
また、同時期から㏗値も低下し、乳酸菌も着実に増殖したことがわかりました。

しかし、培養の温度を上げると、発酵が早く進みますが、腐敗の危険性は高まります。
実際、私が行った今回の方法でも、同じ条件で培養したにもかかわらず腐敗した瓶がありました。

これからの季節は特に、家庭で安全にコンブ酵母を作るには、冷蔵庫での培養が安心です。
コンブだしのかわりに冷蔵庫に保存しておき、日常的に利用するといいでしょう。

コンブ酵母の拡大写真。大きい物が酵母、小さい物が乳酸菌

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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