たたみの縁にすらつまずいた
70代の後半に、頸椎椎間板ヘルニア(首の部分の背骨の間でクッションの役割をしている椎間板がつぶれて飛び出し、神経を圧迫して痛みが起こる病気)になりました。
整形外科で診てもらうと、「頸椎ヘルニアが悪化すると歩けなくなるから、あまり動かずに安静にしてください」と言われました。言われたとおり、できるだけ安静にじっとして過ごしていたのですが、しだいに全身の筋肉がこり固まってしまったのです。
首を動かすと痛いので、顔が上げられません。下を向いているうちに、背中が曲がり、腰もひざも曲がってしまいました。
こんな姿勢では、足もしっかり上げられません。たたみの縁のほんのわずかな段差にすら足が引っかかってつまずき、何度も転倒をくり返していたのです。寝たきりになるのでは、と近所の人が心配して様子を見に来てくれるほど、よく転ぶことで有名になっていました。
いちばん困ったのが、道を歩くときです。顔を上げて前を向くことができないので、対向車が来るのが見えないのです。数歩歩いては立ち止まり、横向きに顔を回して、前方を確認し、また数歩歩くような状態でした。
どちらかというとせっかちなほうなので、早く行きたいと気持ちは焦るし、事故は怖いしで、つらかったです。
そんなとき、川村 明先生に、「このままでは寝たきりになってしまう」と、「ひざ裏伸ばし」を勧められました。
私はそれまで特に運動をしていたわけでもなく、「ヨガ」という言葉さえ知りませんでした。けれども、長年お世話になっている川村先生が勧めてくださったのだからと思って、ひざ裏伸ばしをやってみることにしたのです。80歳のときでした。
4ヵ月で背すじが伸び自転車に乗れた
週1回、レッスンに通い、先生に言われたとおり、家でもお風呂上がりに自分で「壁ドン」「壁ピタ」「1・2・3体操」を毎日ちゃんとやりました。
最初から体がやわらかかったわけではありませんが、無理せずできる範囲でいいと川村先生に言われていたので、体操を続けるのは苦ではありませんでした。ひざ裏伸ばしを続けているうちに、4ヵ月ほどで背中と腰が伸び、顔も上げられるようになりました。高かった血圧も下がってきました。
自転車にも乗れるようになったのですが、小雨が降る中、自転車をこいでいたら、水たまりでタイヤが滑り、激しく転倒してしまいました。
自転車が壊れるほどの勢いで転んだにもかかわらず、とっさに自転車から飛び降りた私はスッと立っていて、どこにもケガ一つせずに済んだのです。
これからもひざ裏伸ばしを続けて、元気でいたいと思っています。

両手の力だけで足とお尻を浮かせて支える脚前挙は、今のところ末永さんだけができるスゴワザ
ひざ裏を伸ばすと背すじも伸ばせる(かわむらクリニック院長 川村 明)
末永さんは、私がAKヨガ(川村式アンチエイジングヨガ)の指導を始めた5年前から、ずっと続けてくださっています。
とても真面目で言われたことをきちんと守って実行されるかたなので、頸椎ヘルニアでかかった整形外科の医師に言われた「動かしすぎない」という指示を守りすぎ、できるだけ動かないようにしていた結果、全身の筋肉が萎縮し、こり固まってしまっていました。
あれだけ背中が曲がってしまうと、「壁ピタ」で壁にかかとと頭をつけることもできません。最初は背中だけが壁についている状態でした。
けれども、末永さんは毎日毎日ちゃんとひざ裏伸ばしを続けて、少しずつ腰を伸ばせるようになっていったのです。たとえ背骨自体がつぶれて変形していても、背骨を支える筋肉をしっかり働かせることができれば、背すじは伸ばせるのです。
今では開脚前屈も脚前挙も見事にできるようになりました。
実は脚前挙は、腕の力よりも腹筋が必要な動作です。「壁ドン」「壁ピタ」「1・2・3体操」は、腹筋の強化にも有効です。5年以上毎日コツコツと続けてきた末永さんの腹筋は、シックスパック(六つに割れた腹筋)になっています。
何歳からでも体は必ず変わります。80歳から始めた末永さんが私に教えてくれました。
足の裏を持って顔も胸もペターッと床につく末永さんの開脚前屈