股関節痛の原因の9割は筋肉にあり
突然ですが、あなたの足首は軟らかいですか? まずチェックしてみましょう。
実は、足首の柔軟性やゆがみは、「股関節痛」にも、大いに関係しているのです。
当院の患者さん、Tさんの例を紹介しましょう。Tさん(72歳・女性)は2年前、股関節に痛みが出て、変形性股関節症と診断されました。ウオーキングが趣味でしたが、痛みで歩けなくなり、当院に来院しました。
全身状態をチェックすると、足首が硬く、外側に傾いていました。そこで、股関節の筋肉をゆるめる施術や足首の調整を行い、自宅で足首の「テコ回し」をしてもらいました。
すると、次の治療のときには歩ける状態まで改善し、3ヵ月後にはほとんど痛みがなくなったのです。
股関節痛の原因はいろいろありますが、外傷やリウマチなどの病気を除くと、9割は筋肉が正常に働いていないために起こる、筋肉性の痛みです。こういった股関節痛に効果があるのが、テコ回しです。
股関節の痛みなのに、なぜ?と思うかもしれません。しかし、足首の状態が悪いと、股関節や骨盤を治療しても、根本的な快癒につながらないのです。
足首は体の土台となる関節で、常に重力の負荷がかかっています。加えて、年齢や運動不足によって、だんだん柔軟性が失われていきます。
そこに悪い姿勢が加わると、足首がゆがみます。姿勢が悪く、足の外側に体重をかけて立ったり歩いたりしていると、足がO脚になり、足首が外側に傾く「O足首」になってしまいます。その逆のケースでは、「X足首」になります。
すると、筋肉のバランスがくずれ、それがひざや股関節をゆがませて、痛みが出てくるのです。実際に、股関節痛のある人の多くは、足首にも問題を抱えています。
足首の柔軟性のチェック方法

ひざ痛や腰痛にも効果あり
テコ回しは、左右の手で足首をテコのようにして回します。これで足首が柔軟になると、正常な筋肉運動ができるようになり、筋肉の伸縮性が戻ってきます。すると、ひざ関節や股関節の可動域(動かせる範囲)が広がり、周辺の筋肉が正常に使われるようになります。
筋肉性の痛みは、筋肉が伸びたり縮んだりしたままのときに起こります。したがって、筋肉が正常に使われて筋力と柔軟性が高まれば、痛みはなくなります。
もう一つは、テコ回しが、二つの関節をまたいでついている筋肉「二関節筋」に働きかけることです。
下肢には、二関節筋がいくつもあります。例えば、大腿直筋という筋肉は、骨盤のわきの出っ張ったところから、股関節とひざ関節をまたいで、ひざ内側のやや下についています。
変形性股関節症では、股関節の変形は小さいのに、激しい痛みが出ることがあります。これは、二関節筋の走行ラインのずれと、異常負荷によって起こる筋肉の痛みです。
テコ回しをすると、足首だけでなく、すねの骨も回転するように動きます。それによって、大腿直筋のような二関節筋の伸縮運動が正常になり、筋肉がほぐれて痛みが和らぐのです。
痛みが軽くなれば、体も動かしやすくなり、歩いたり外出したりしやすくなります。するとさらに足首が柔軟になり、下肢(足)に筋力がついてくる、といういい循環が生まれます。
また、足首のゆがみは、股関節痛だけでなく、ひざや腰の痛みの原因にもなります。股関節に問題のない人でも、足首の柔軟性が低かった人は、テコ回しをすることをお勧めします。

岩間良充
鍼灸整骨院ホスピスト院長。柔道整復師、ケアマネジャー。手技療法を得意とし、これまでに延べ20万人以上の患者を治療。肩、腰、ひざなどの痛みの根本改善に心血を注いでいる。『しつこい腰痛は腹をもめば治る!』(マキノ出版)など、著書多数。