大さじ1杯のハチミツをぬるま湯に溶かして飲む

「どうにかしなければ!」
10年前、私は人生で最大の「85.6kg」という体重になってしまい、焦りました(身長は173cm)。
もともと72kgくらいでしたが、仕事のため、夕飯の時間が遅くなりがちだったり、から揚げが好きで、夜中に冷蔵庫の中のから揚げをつまんだりなど、太ってもおかしくない食生活を送っていました。
それに加えて、最低でも1日60本吸うほどのヘビースモーカーだったのが、思い立って禁煙したところ、ますます体重が増えて、85.6Kgになってしまったのです。
おなかが出っ張り、体が重いのはもちろん、体調も悪化してきました。
原因不明のがんこな湿疹が全身にでき、胸焼けや片頭痛もひどくなりました。
健康診断では、中性脂肪値が585mg/dlという、とんでもない数値でした(正常値は150mg/dl未満)。
「体を根本的に改善するしかない」と痛感し、ダイエットを決意したのです。
そのころ、私は会社勤めをやめて、翻訳家として活動しようとしていたところでした。
すると、絶好のタイミングで、あるダイエット本の翻訳を手がけることになりました。
英国の薬剤師で、栄養学の専門家でもあるマイク・マッキネス氏の著作で、邦題は『冬眠式プラスハチミツダイエット』(バベルプレス)という本です。
このダイエットの基本は、「寝る前にハチミツを大さじ1杯程度取って、十分な睡眠を取る」だけ。
これだけで、余分な体脂肪が効率よく燃やされ、ダイエットにつながるそうです。
食事はバランスよく食べればよく、無理な制限は必要ありません。
むしろ、きちんと食べることが条件です。
さらに気に入ったのは、「運動しなくてもいい」ということ。
運動すればより効果的ですが、必須条件ではないのです。
それにしても、「寝る前に甘いものを取る」とは、従来のダイエットの常識からいうと、真逆です。
しかし、翻訳をしながら、そのメカニズムが理解できると
「なるほど!スジが通っている」と思えました。
そこで、翻訳作業と同時進行で、このダイエットにチャレンジすることにしました。
ハチミツは天然のものがよいとのことですが、品質の判断はむずかしいので、信頼できそうなデパートの食品売り場や、スーパーマーケットなどで、500gで1100円くらいのものを買っています。
寝る1時間ほど前に、そのハチミツを大さじ1杯ほど、マグカップに入れたぬるま湯に溶かして飲みます。
食事は特に減らしていませんが、肉に偏っていたのを改め、野菜と魚を多くしました。
睡眠は、少なくとも6時間、可能なときは8時間、ぐっすり寝るようにしました。
運動は一切していません。
脊柱管狭窄症の母もダイエットに成功

始めて半年くらいは、ほとんど体重が変わりませんでした。
ところがその後は、毎晩、寝ている間に、必ず0.5~0.7kg減るようになったのです。
多いときは、一晩で2kg減ったこともあります。
そして、ダイエット開始から1年半後には15kg減って、70kgになりました。
以後も減り続けて、3年後に68kgになり、今もそれを維持しています。
25%だった体脂肪も、16~18%になりました。
それとともに、湿疹はきれいに消え、胸焼けや片頭痛も出なくなりました。
便秘気味だったのも改善されました。
以前は、朝目覚めても、すぐには起き上がれなかったのが、スパンと起きて活動モードに入れます。
中性脂肪値は、ダイエットを始めた翌年に249mg/dl、3年後には111mg/dlと正常範囲になりました。
このダイエットは、私の母にも効果がありました。
実は私の母は、脊柱管狭窄症になって運動ができず、太り気味になって困っていました。
そこで母にも勧めたところ、52.9kg(身長151cm)だった体重が、2年4ヵ月で47kgまで落ちました。
運動しないでやせることができ、体調もよくなって喜んでいます。
この方法はとても簡単ですが、始めて半年~1年ほどは、体重が減らない「体の準備期間」があるようです。
そこであきらめずに続けるのがコツだと思います。
食事と睡眠に留意した上でプラスするとよい(田井祐爾・田井メディカルクリニック院長)
睡眠中も、体内ではさまざまな生命活動が行われています。
なかには、睡眠中にこそ活発になるものもあって、その一つが「成長ホルモン」の働きです。
成長ホルモンは、睡眠中に最も多く分泌され、細胞の新生や修復のために働いています。
成長ホルモンは、寝入ってから3~4時間の間に、急速に深い眠りに入ったときにたっぷり分泌されます。
ですから、特にこの時間帯の睡眠の質をよくすることが、成長ホルモンの分泌と働きを促すカギになります。
このことは、健康の維持・増進に重要な意味を持ちますが、同時に余分な体脂肪を減らすことにも関係します。
睡眠中の脂肪燃焼を進めるためには、十分な成長ホルモンの分泌が必要です。睡眠の質が悪いと、成長ホルモンの分泌が不十分になるからです。
つまり、睡眠の質をよくすることが、寝ている間の脂肪燃焼を促すことにつながるのです。
睡眠中に成長ホルモンの分泌を促して脂肪燃焼につなげるには、3食をバランスよく取り、特に夕食時に食べ過ぎないことが大切です。
その上で、芳賀さんのように、寝る1時間ほど前に、大さじ1杯程度のハチミツを取ると、寝ている間の脂肪燃焼効率がよりよくなります。寝る前にハチミツを適量取ると、その糖分が速やかに肝臓に蓄えられます。
脳が使用する主要エネルギーは、肝臓に蓄えられた糖なので、それをハチミツで補給することで、睡眠の質がよくなり、成長ホルモンの分泌が促されます。
それが、脂肪の燃焼につながるわけです。
ハチミツは、ビタミン・ミネラル、アミノ酸、そして各種の無機・有機化合物などを含み、抗酸化作用や抗菌作用も持つので、肝臓を元気づけるためにも役立ちます。
その意味でも、睡眠の質の向上に貢献します。
ただし、現在食べ過ぎている人が、その習慣を改めないまま、寝る前のハチミツをプラスするだけでは、かえって逆効果になりかねません。
あくまでも、1日3食のバランスの取れた食事が前提になります。
夕食に重い食事を取っている人は、朝・昼と均等のボリュームに近づけ、特に夕食では、ごはんなどの炭水化物を控えめにすると、より効果的です。
同時に、睡眠の質をよくするために、寝るときは部屋を真っ暗にしてください。
また、寝る前の時間帯に、パソコンやスマートフォンの光を見ないようにすることもポイントです。
このダイエットは、糖尿病の人でも行って構いませんが、条件があります。
「バランスの取れた食事(糖尿病の食事療法)」という前提を守った上で、現在の食事にハチミツをプラスするのではなく、砂糖などの糖分を控え、寝る前のハチミツに置き換えてほしいのです。
ハチミツ摂取後の血糖値の上昇は、ブドウ糖に比べてゆるやかだったという小規模な研究報告もあります。
ですから、砂糖と置き換えて大さじ1杯程度のハチミツを取るのなら、糖尿病の人にも勧められます。
こうした前提や条件を守った上で、ハチミツダイエットを、肥満の改善・解消や、健康増進に役立ててください。