試行錯誤の末に生まれたのが、「8の字ゆらし」をはじめとした靭帯調整法と呼んでいる運動です。
新たにゆうきプログラムに加わったこの運動法の効果はめざましく、プログラム全体の有効性がさらに高まりました。
今回は、靭帯調整法を含む、変形性股関節症の人にぜひ試してほしい運動を紹介します。
股関節痛の改善に必ず力になりますので、ぜひお役立てください。
股関節の状態に合わせた回復が見込める
現在、ゆうきプログラムの運動法は、300種類を超えています。
その運動はすべて、靱帯や筋肉の拘縮(縮んで硬くなること)をほぐし、それに伴う筋肉のアライメント(力を一定方向に伝えていく機能)のくずれを改善することにあります。
さらに、ゆうきプログラムはさまざまな角度から症状の改善にアプローチしています。
痛みが解消、あるいは軽くなり、手術を延期や回避できたかたも数えきれないほどいます。
一方で、手術が必要なときには、手術の前後にリハビリとして行うと、術後の回復が飛躍的に早くなるなど、股関節の状態に合わせた回復が見込めるのです。
総合的に股関節をよくしていく
運動法は以下の四つのカテゴリーに大別されます。
①荷重点調整法
荷重点とは、筋肉が体重などの負荷を受ける場所のこと。
アライメントがくずれると、この荷重点がずれて痛みを発生します。
そのずれを調整し、本来の場所に戻します。
②筋力間バランス法
筋肉には関節を曲げるときに働く屈筋、関節を伸ばすときに働く伸筋、横や斜めの動きを担う斜交筋があり、それぞれが適切な強弱を取ることでスムーズな動きが保たれています。
ところが、筋肉の拘縮やアライメントのくずれで、これらの力のバランスが悪くなると、関節に過剰な負担がかかり、変形に拍車がかかってしまいます。
筋力間バランス法は、力が強過ぎる筋肉は弱くし、弱過ぎる筋肉は強くして、正しいバランスを取り戻します。
③関節腔拡大法
股関節は、骨盤側の骨のくぼみに大腿骨の骨頭がはまる形でつくられています(別記事参照)。
関節腔は、その骨と骨の間のすき間のことです。
関節腔拡大法は、変形で狭くなったすき間を広げて滑液の循環を高め、軟骨への栄養補給や細胞の活性を高めたり、可動域の拡大を図ったりします。
④靱帯調節法(8の字ゆらし)
前項でもお話しした、関節の変形で拘縮した靱帯をほぐすのが、この運動の目的です。
この運動法の開発は、打ち損じたクギを抜く方法がヒントになりました。
木に打ちこんだクギは、ペンチで真っ直ぐ上に引っぱっても簡単には抜けません。
木の繊維がクギを締めつけているからですところが、釘の頭をペンチで挟み、8の字を描くようにぐるぐる回すと、容易に抜けるようになります。
これは力が奥まで届き、クギ先の周囲の木の繊維をほぐしてくれるからです。
クギを骨、木の繊維を靱帯に置き換えて考え、生まれたのが8の字ゆらしだったのです。
8の字ゆらしは股関節のみならず、ほかの関節における靱帯をほぐすのに有効です。
そして、そのことが股関節痛の改善にもよい影響を与えます。
というのも、変形性股関節症の患者さんは、痛みをかばうために無意識に他の関節に負担をかけています。
それが今度は、ひざや腰の靱帯の拘縮につながるのです。
股関節の病気なのに、ひざや腰に痛みが出てくるのは、このためです。
こうなると、股関節の状態だけをよくしても効果は上がらず、ひざ関節や足関節、腰も含めた総合的な改善が不可欠になってきます。
8の字ゆらしは、この面でも確実に力を発揮してくれるというわけです。
痛みを我慢してまで行わない
今回は、「五つの基本運動」と、「股関節の痛みを和らげる運動」「股関節の可動域を広げる運動」をそれぞれ一つずつ、合計七つの運動を紹介します(やり方は次の記事「ゆうきプログラムの行い方」参照)。
300超あるゆうきプログラムの中で、股関節に特に有効な、基本的なものになります。
五つの基本運動には、先の四つのカテゴリーの要素がすべて取り入れられています。
変形性股関節症に悩んでいるかたは、必ずこの基本運動を行ってください。
基本運動を毎日行うだけで、顕著な改善効果を得られたかたもめずらしくありません。
痛みが気になるかたは、股関節の痛みを和らげる運動を、足の開きが悪い人は可動域を広げる運動を五つの基本運動に追加して行ってください。
ゆうきプログラムは「一人で簡単にできる」「痛みを伴わない」点も重視して開発されており、どなたも安心して取り組むことができます。
運動は、特に指定がないかぎりはいつ行っても構いません。
ただ、以下の点には注意して行ってください。
・いずれの運動も、痛みを我慢してまで行わない。
・運動中に痛みが強くなってきた場合は、すぐに中止し、痛みが軽くなるか、なくなってから再開する。
・各運動ごとに指定してある回数を必ず守る。
・ベッドで行う場合は転落に十分注意する。床での転倒や滑りにも注意するように。
・高血圧やめまい、ふらつきがあるとき、発熱時など、体調が悪いときには行わない。
さあ、希望を持って始めましょう。
必ず道は開けます。
解説者のプロフィール

大谷内輝夫
ゆうき指圧院長。1953年生まれ。「ひざ、股関節の治療では日本で一番信頼される人になりたい」という志を胸に、日々ゆうきプログラムの研究や指導に当たっている。著書に『股関節痛の94%に効いた!奇跡の自力療法』(マキノ出版)などがある。
●ゆうき指圧
大阪府大阪市住吉区我孫子1-2-4
TEL 06-6607-1013
http://www.yukishiatsuseitai.com/