痛みが消えた!手術が不要になった!
変形性股関節症で私のもとに来院される患者さんはみな、「手術を避けたい」という切羽詰まった気持ちをお持ちになっています。
変形性股関節が原因で起こる痛みや歩行困難が激しくなってきた患者さんには、人工股関節の置換手術を勧めるのが、整形外科での通常です。
ただ、股関節の手術には、人それぞれに「旬」があり、その時期でない場合には、受けたくても受けられないかたも少なくありません。
最も多い理由は、育児や介護、あるいは仕事の関係で時間がとれないこと。
また、人工股関節には耐用年数があり、年齢が若いと再手術を覚悟しなくてはならないから、という人も少なくありません。
手術に対する恐怖が先立ち、なかなかその気になれないでいるかたもいます。
そんな患者さんたちに対し、私どもでは独自に開発した「ゆうきプログラム(学術名:PSTRエクササイズ)」という運動療法を指導することで、確実に成果を上げてきました。
ゆうきプログラムは、自宅で患者さんご自身が行う、痛みを伴わないエクササイズです。
ゆうきプログラムを開発した25年前から80%前後を保ってきた改善率は、最近になって94%程度にまで伸びています。
ゆうきプログラムで股関節の痛みが消えた、手術を回避できた、杖が不要になって歩行に不安や困難がなくなったという声は、枚挙にいとまがありません。
痛みの原因は靭帯にあった!
もともと高い水準にあった改善率が、さらに伸びたのは、次のような理由です。
それは「痛みの元凶が靱帯の拘縮にある」ことがわかり、その改善法を開発できたことです。
ちなみに、拘縮とは縮んで硬くなることをいいます。
関節が変形して痛みが生じると、一般には「無理のないように運動をして、周囲の筋肉を鍛えていきましょう」と言われることが大半です。
なので、靭帯という言葉が股関節痛と結びつかないかたも多いでしょう。
靱帯は関節内で骨と骨を結びつけている帯状、もしくはひも状の線維組織です。
もちろん、股関節にも靭帯が存在しています(下の図参照)。
それらの靭帯は、股関節を強固にすると同時に、その運動をコントロールする重要な役割を担っています。
当然、筋肉とも連動する関係にあります。
変形性股関節症の痛みが起こる主な原因は、筋肉のアライメント(力を一定方向に伝えていく機能)のくずれにあると考えられています。
関節の可動域が狭くなったり動きが悪くなったりすることで筋肉に炎症や拘縮が起き、正常なアライメントを維持できなくなります。
それが痛みを発生させていくのです。
そのため、整形外科医も、私ども治療師も、筋肉の拘縮を解消することを運動療法の主眼としてきました。
しかし、あるとき、ふと疑問に思いました。
確かに股関節周囲の筋肉をほぐし、鍛えることで、痛みが確実に軽くなったと患者さんはおっしゃいます。
でも、病気の状態がほぼ同じでも、改善までの早さや程度が患者さんごとにずいぶん異なります。
個人差はもちろんあるでしょうが、私は個人差以外にも理由があるはずだと思いました。
そうして行きついたのが、「靱帯」だったのです。
関節の動きが悪くなれば、筋肉だけでなく、筋肉と連動している靱帯の拘縮も進むはず。
にもかかわらず、靱帯の拘縮はそのままにして筋肉だけほぐしていても、アライメントの矯正ははかどりません。
靱帯の拘縮の度合いは、患者さんによって異なります。
その違いが、改善効果の差となって現れるのではないかと、私は考えました。

筋肉よりも靭帯の調整が先決
つまり、症状を軽くするには、筋肉より前に、靱帯をほぐして拘縮を取ることが先決なのです。
しかし、靱帯の拘縮を取る運動法が見つかりません。
自分で開発するしかないと、試行錯誤の末に生まれたのが、「8の字ゆらし」をはじめとした靭帯調整法と呼んでいる運動です。
新たにゆうきプログラムに加わったこの運動法の効果はめざましく、プログラム全体の有効性がさらに高まりました。
今回は、靭帯調整法を含む、変形性股関節症の人にぜひ試してほしい運動を紹介します。
股関節痛の改善に必ず力になりますので、ぜひお役立てください。
解説者のプロフィール

大谷内輝夫
ゆうき指圧院長。1953年生まれ。「ひざ、股関節の治療では日本で一番信頼される人になりたい」という志を胸に、日々ゆうきプログラムの研究や指導に当たっている。著書に『股関節痛の94%に効いた!奇跡の自力療法』(マキノ出版)などがある。
●ゆうき指圧
大阪府大阪市住吉区我孫子1-2-4
TEL 06-6607-1013
http://www.yukishiatsuseitai.com/