時代は変わっても根強い親の思い「結婚してほしい」
私は大学院生のころから、夫婦関係や結婚をテーマに研究を行ってきました。
昔から、子どもの結婚は親にとっても大きな関心事であることから、最近は「結婚と親子の関係」について研究しています。
そんな中、興味を持ったのが、「親同士のお見合い」です。
2000年に、北海道の結婚相談所が開催したのが始まりでした。
京都では2005年から一般社団法人良縁親の会が、親による代理お見合いの会を開催していると知り、去年から同会の協力を得て、そこに参加する親へのインタビューなどを行っています。
特に印象的だったのは、「結婚して子どもを持つというのは、人間としての使命だと思う」という親世代の声でした。
時代の移り変わりとともに、「結婚は個人の選択」という意識になってきていることは、親たちも十分理解しています。
それでもやはり「結婚するのが当たり前」という思いが、根強くあるのです。
男親の中からは、「氏(名字)を残してほしい」という率直な声も聞かれました。
結婚に対する意識は、親子で違う?
国勢調査によると、50歳まで一度も結婚したことのない人の割合を示す生涯未婚率は、2015年で男性23.37%、女性14.06%。
男性は4人に1人、女性は7人に1人です。
結婚しない人が増えている現代において、「『当然のこと』として結婚してほしい」という親の切実な願いが、親同士のお見合いというニーズを生んでいるのかもしれません。
子どものほうはというと、国立社会保障・人口問題研究所の調査で、「いずれ結婚したい」という人は9割弱に上っています。
ただ、これも時代とともに、「絶対にしたい」というよりは、「できれば、いずれはしたい」というニュアンスに変わっている可能性があります。
実際、良縁親の会に参加している親たちからは、「苦労して相手を見つけて釣書を持ち帰っても、子どもから無下に断られる」といった声も聞かれます。
一方、親の代理お見合いから、成婚に結び付いたカップルが多くいることも事実です。
親と子どもの意識の一致するところ、食い違うところはどこなのかを明らかにすべく、現在、親子双方へのアンケート調査を実施しているところです。
子どもの結婚には親子関係が影響する
結婚する・しない、できる・できないということは個人の問題として語られがちですが、生涯未婚率を下げるためには、長時間の残業や非正規雇用とそれに伴う不安定な収入、女性への家事労働負担の偏重など、むしろ個人ではなく、社会的に解決すべき問題が山積しているといえます。
社会の状況が変化し、昔は一般的だったお見合い結婚や職場結婚が減った今、結婚相手を見つける手段の一つとして、親の代理お見合いが存在することは、よいことだと考えます。
子どもに、異性の多い趣味の集まりや交流の場への参加を促すのも、お勧めです。
お見合いや結婚相談所の利用は、抵抗感や嫌悪感があっても、趣味や遊びを通してなら、自然に異性と交流しやすいからです。
インタビューをした親御さんで、子どもにもっと強く「結婚しろ」と言っておけばよかったという方がいましたが、言うべきか、言わないほうがよいのかは、お子さんとの関係にもよるので難しいところです。
おそらく、正解などないでしょう。
しかし、家族社会学には、幼いころから親子関係に満足してきた子どもは、自分の異性の親に似た配偶者を選び、自らが育てられた家庭を再現しようとする傾向が強いという研究があります。
つまり、子どもの結婚には、親の影響が少なからずあるということです。
子どもに結婚を勧めるのであれば、よい家族関係を築いている親のほうが、説得力があることは言うまでもないでしょう。
親子それぞれが抱く複雑な思いを、今後の研究で、より明確にしていくつもりです。
私がインタビューを行った「一般社団法人良縁親の会」については、次の記事で紹介されています。

解説者のプロフィール

大瀧友織(おおたき・ともおり)
大阪経済大学情報社会学部准教授。
2007年、大阪大学人間科学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(人間学)。
広島国際大学講師、大阪経済大学講師等を経て、2016年より現職。
専門は社会学。
婚活や夫婦関係について研究。