1年に361日働く私の唯一の健康法
私は、根っからの仕事人間。
仕事が大好きなんです。
休みを取るのは、年末年始の4日間だけ。
睡眠時間は、平均4~5時間です。
普段は、朝9時半頃に起床し、シャワーを浴びて、午前中はエッセイの執筆をしたり、漫画のアイデアを練ったり、絵コンテを描いたりと、1人でできる作業をします。
仕事場に行くのは、午後1時頃。
それから夜11時頃までアシスタントと漫画を描き、歩いて15分の自宅へ帰ります。
帰宅後は、お酒を飲みながら映画を観て過ごし、就寝は午前時頃。
長年、そんな生活を続けています。
趣味のゴルフを除けば、運動らしい運動は、ほとんどしていません。
自宅と仕事場を徒歩で往復する以外は、ほぼ座りっぱなしの生活です。
50代の頃、「運動をしなければ」と、スポーツクラブに入会したものの、結局5回しか行かずに退会しました。
わざわざ運動のために時間を割くのはもったいない、そんな暇があれば仕事がしたい、と考えてしまうのです。
そんな私が唯一、続けている健康法が、毎朝のシャワータイムに行う「ひざ裏伸ばし」です。
シャワーを浴びるとき、ひざの屈伸運動を何回か行ったあと、立ったまま全身を洗うのです。
足先やくるぶしを洗うときも、ひざの裏をピンと伸ばしたまま、前屈して洗います。

前屈をすると指先が軽々と床に着く
シャンプーをする間は、スクワットのようにひざを軽く曲げて、中腰の姿勢をキープします。
これは、太ももの筋肉を鍛えるためです。
「シャワーを浴びている間、何もしないのはもったいない。
短い時間でも、シャワーを浴びながら、ちょっとした運動ができるのではないか」と思い立ち、5年ほど前から始めました。
ひざ裏伸ばしを始めた当初は、体が硬く、前屈をしても指先がひざくらいまでしか届きませんでした。
ところが、毎朝ひざ裏伸ばしを続けるうちに、徐々に体が柔らかくなり、今では指先が軽々と床に着くまでになりました。
いきなりひざ裏を伸ばそうとせず、「イテテ」と感じる手前で止めておくのがコツです。
中腰姿勢でのシャンプーも、最初は1分も続けられませんでしたが、今は余裕で、髪をすすぎ終わるまで姿勢を保てます。
足腰の筋力が鍛えられたおかげか、ゴルフで斜面から打つときも、フォームが安定し、しっかり構えて打てるようになりました。

ひざを曲げて人を描くととたんに老けて見える
私が、ひざ裏伸ばしを思いついたきっかけは、お年寄りの姿勢でした。
人間は年を取ると、直立できなくなります。
漫画を描くときも、ひざを軽く曲げて人間を描くと、とたんに老人のように見えるのです。
逆に言えば、ひざを真っすぐに描けば、老けているようには見えません。
つまり、足腰を鍛えて、ひざ裏の柔軟性を高めれば、ひざがピンと伸びて若々しく見えるわけです。
だから私は、普段立っているときも、ひざ裏にぐっと力を入れて、真っすぐ伸ばすように心がけています。
実際、私が同窓会に行くと、同級生の中ではいちばん若く見られます。
漫画家は室内にこもって仕事をしているので、あまり紫外線を浴びないこと、そして姿勢に気をつけていることが、若く見える理由かもしれません。
先日、人間ドックを受診しましたが、中性脂肪と血圧が少し高めで、やや脂肪肝ぎみな点を除けば、まったくの健康体。
医師からは「脳梗塞と十二指腸潰瘍、蓄膿症の跡が残っていますが、もう治っています」と言われました。
人間の体には自然治癒力が備わっているので、放っておけば治る、と気楽に考えています。
健康の秘訣は、ストレスをためないことでしょうか。
私の場合、映画を観ながらの寝酒が毎日のストレス解消になっていますし、夜型で睡眠時間はやや不足ぎみではありますが、同じリズムで毎日を過ごしている点が、健康につながっていると思います。
忙しくても、運動が嫌いでも、毎朝のシャワー中のひざ裏伸ばしのように、無理なくできる方法はあると思います。
皆さんもぜひ、自分に合った、無理なく続けられる健康法を探してください。
解説者のプロフィール

弘兼憲史
1947年、山口県生まれ。早稲田大学卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)に入社し、73年に退社。74年『風薫る』にて漫画家デビュー。代表作に『課長島耕作』から30年以上続く「島耕作シリーズ」や『人間交差点』など。近著に『弘兼流60歳からの手ぶら人生』(海竜社)など。