解説者のプロフィール
竹井仁
1987年、理学療法士となる。1997年、筑波大学大学院修士課程修了(リハビリテーション)。2002年、東邦大学大学院医学研究科医学博士(解剖学)学位授与。現在、首都大学東京大学院人間健康科学研究科理学療法科学域ならびに健康福祉学部理学療法学科教授。著書『筋膜博士が教える決定版自分でできる!筋膜リリースパーフェクトガイド』(自由国民社)は30万部を超えるベストセラー。
太りやすくなった原因は筋膜のよじれだった
40代以降になると、多くの人が次のような不調を訴え始めます。
□食べる量は変わらないのに、だんだん太ってきた。
□下腹がポッコリ出ている。
□肩がこるし、腰は痛む。
□体が重くて、すぐに疲れる。
こうした体の変化は、年齢によるものと思われがちですが、実は「筋膜」のよじれが原因です。
ですから、「老化現象だからしかたがない」「自分では解決できない」とあきらめる必要はありません。
筋膜のよじれを解きほぐす「筋膜リリース」を行うことで、見違えるほど体が変わります。
姿勢が美しくなって、体が軽く、しなやかに動くようになるのです。
その結果として、体重も自然に減っていきます。
私は、テレビ番組などで、こりや痛みを解消する筋膜リリースの効果を紹介してきましたが、ここでは、やせるメカニズムについて詳しく説明しましょう。
日常の何気ない癖で筋膜がよじれてしまう
筋膜は、文字どおり「筋肉を包んでいる膜」で、筋肉を構成する筋線維の中まで入り込んでいます。
そして、くまなく全身に張り巡らされていることから、「第2の骨格」とも呼ばれています。
筋膜には次の5種類があります。
①皮下脂肪の中にある浅筋膜
②筋肉の上をボティスーツのように覆っている深筋膜
③筋肉の表面を薄く包み込む筋外膜
④筋外膜が筋肉の中に入り込んで、筋線維の束を包む筋周膜
⑤筋周膜が筋線維の束に入り込んで1本1本の筋線維を包む筋内膜
私たち人間の体には約650個の筋肉(骨格筋)があり、すべての筋肉がバランスよく日常生活で使われていれば、筋膜も滑らかに動く状態が保たれます。
しかし、ほとんどの人が偏った筋肉の使い方をしています。
仕事や家事でいつも前かがみになっていたり、テーブルでほおづえを突きながらテレビを見たり、ショルダーバッグをいつも同じほうの肩にかけたりしていませんか。
こうした何気ない癖が長期間にわたって何度も繰り返されることで、筋膜はよじれてしまうのです。
筋膜は、縦・横・斜めといろいろな方向でつながっているため、1カ所でよじれると、悪影響は関節を飛び越えて、ほかの部分の筋肉にまで及びます。
そして、腕が上がらなくなったり、腰が曲がらなくなったりして、体が動く範囲が狭くなり、痛みも生じるのです。
同時に、柔軟性が低下することにより、一部の筋肉しか働かなくなり、そこに負荷が偏って大きくかかるようになれば、疲れやすくなります。
すると、体を動かすのがおっくうになって、消費するエネルギーが減り、太ってくるわけです。
加えて、体をあまり動かさなければ、骨盤周辺の筋肉が衰えて、骨盤が傾きます。
それに伴って、背中が丸まって、下腹がポッコリと突き出した姿勢になり、おなかやお尻には脂肪がついてきます。
筋膜ってなに?どこにある?

筋膜リリースがすべて解決する
このような「太る」「疲れる」「動けない」という不調をすべて解決するのが、筋膜リリースです。
布にできたシワをアイロンで伸ばすように、筋膜をさまざまな方向に伸ばして滑らかにします。
筋膜が滑らかになって、筋肉が本来の動きを取り戻すと、「歩く」「立ち上がる」といった日常動作で働く筋肉が増加します。
たくさんの筋肉がしっかりと柔軟に働くことで、負担が分散されるだけでなく、エネルギーが活発に使われるようになります。
つまり、体が疲れにくくなって、エネルギー代謝が上がるのです。
人間とは、できなかったことができるようになると、もっとやりたくなる生き物です。
こりや痛みが消えて体を楽に動かせるようになれば、運動したり外出したりして体をもっと動かしたくなるわけです。
すると、どんどんエネルギー代謝が上がって、脂肪が減少していきます。
以上のことから、筋膜リリースを行うだけで、体が軽く、しなやかに動くようになり、続ければ誰もが確実にやせられると、私は断言できます。
筋膜リリースのやり方を、別記事で紹介しますので、ぜひその効果を実感してください。