さまざまな生活習慣病の予防・改善に役立つ
日本で古くから飲まれてきた甘酒が、現在、健康に役立つ食品として脚光を浴びています。
便秘の改善や疲労回復、生活習慣病の予防など、さまざまな効果があることがわかってきたのです。
ヨーグルトや納豆といった発酵食品が体によいのは知られていることですが、甘酒も米麹を用いた発酵食品の一つです。
麹とは、「コウジカビ」を穀物に植え付けて繁殖させたものの総称です。
このコウジカビを米に生やしたものが米麹で、日本酒や甘酒、本みりん、純米酢、麹みそなどの製造に使われます。
ちなみに、豆にコウジカビを生やしたものは豆麹、麦に生やしたものは麦麹となり、それぞれ豆みそ、麦みそ作りなどに使われます。
甘酒には、二種類あります。
酒かす甘酒と、麹甘酒です。
酒かす甘酒は、酒かすを水で溶いて、砂糖などの甘味料を加えて作ります。
酒かす甘酒にはアルコールが若干含まれますから、子どもやお酒に弱いかたの飲用には注意が必要です。
一方、麹甘酒は米麹を発酵させて作ります。
麹甘酒の甘味は、麹菌の酵素が米のでんぷんをブドウ糖やオリゴ糖に分解してできた、自然で穏やかなものです。
また、アルコール分は含まれません。
麹甘酒の甘味は砂糖代わりになるほど濃厚ですが、同じ重量で見ると、糖質とカロリーが砂糖に比べて格段に低いのも特徴です。
麹甘酒に含まれるオリゴ糖は、腸での吸収が穏やかという特徴があります。
また、血圧の上昇を抑えるペプチドという成分が含まれており、急激な血糖値の上昇を抑え、高血圧の予防・改善に役立つといわれています。
甘酒(麹甘酒のこと。本特集ではこれ以降「甘酒」と略)は甘味を楽しみながらおいしく栄養補給して体力向上・健康維持に役立つ優れた食品なのです。
ガンの進行が抑えられている人もいる!
また、甘酒には、次のような健康維持に欠かせない栄養素や効果があります。
●ビタミンB群
ビタミンB群は代謝(体内での化学変化)や消化に必要で、不足すると肥満や免疫力低下などを招きます。
美肌づくりにも欠かせない栄養素です。
●アミノ酸
筋肉や細胞の材料となり、新陳代謝(体内での新旧の入れ替わり)を活発にします。
保湿作用もあるので、肌ツヤがよくなり、弾力のある美肌をつくってくれます。
甘酒はこれらのビタミンB群やアミノ酸が豊富で、とても消化吸収がよいので、体に負担をかけずにすばやく栄養補給ができます。
また、オリゴ糖が含まれている甘酒は、腸内細菌のエサとなり、腸内環境を善玉菌優位にします。
その結果、消化吸収・排せつ力が高まり、便秘も解消してきます。
病気や病原菌に対抗する体の働きである免疫は、腸にその半分以上が集中しています(腸管免疫系)。
腸内環境がよくなることで、腸管免疫系も活性化します。
そのためでしょうか、私の麹教室の生徒さんたちからは、甘酒をはじめとした発酵食品を取っていたら、アトピーやぜんそく、花粉症などのアレルギー症状が緩和されたという人の話をよく耳にします。
なかには、ガンの進行が抑えられているという人もいるのです。
凍らせることで保存性が高まる
甘酒は発酵食品なだけに、冷蔵庫の中でも発酵が進んで味が変化し、長く保存ができません。
そこで私がお勧めしているのが、甘酒を凍らせた「甘酒氷」です。
凍らせることで保存性を高め、いつでも甘酒を手軽に取ることができます。
もちろん、栄養成分も変わりません。
凍らせることによってシャーベットのような食感となり、おいしさが倍増します。
私はプラスチックの保存ケースに入れて凍らせておき、スプーンですくって食べたり、料理に使ったりします。
また、製氷皿でキューブ状の甘酒氷をたくさん作って、ジッパー付きの袋で保存しておくと、より手軽に利用できるでしょう。
甘酒氷を、角砂糖感覚で煮物を作るときに入れるのもいいですし、野菜や果物と一緒にミキサーにかければ簡単にスムージーができます。
離乳食が食べられる年齢でしたら乳幼児でも食べられますが、キューブタイプはのどに詰まらせる心配もあります。
あまり冷たいのもよくないので、溶かしてから食べさせましょう。
おいしいからといってたくさん食べてしまう人もいるようですが、糖質を含むだけに、食べ過ぎると太ります。
甘酒氷の目安の摂取量は1日2〜3個。
それ以上食べたいときは、ケーキやごはん、砂糖と置き換えるのが効果的です。

解説者のプロフィール

小紺有花(ここん・ゆか)
発酵食大学教授。
麹料理研究家。麹のおいしさや麹文化の素晴らしさを伝えるため、金沢を拠点に、麹料理の教室やワークショップなどを多数開催。近著に『しょうゆ麹&甘酒も。簡単で本当においしいレシピ93 塩麹のおつまみとおかず』(河出書房新社)。
●発酵食大学
https://hakkoushoku.jp/