食後すぐの歯磨きをやめよう
歯磨きをするのは、「食後の食べかすを取ること」だと思っている人が多いと思います。
しかし、歯磨きの本来の目的は、歯垢(プラーク)を取ることです。
英語ではプラークコントロール(plaque control)といい、近年、耳にする機会が増えているでしょう。
これまで、多くの日本人が行ってきた「食後の食べかす取り歯磨き」は、別の記事でお話ししたように、歯や全身の健康にとって危険です。
今日からはぜひ、「歯垢を取る歯磨き」を始めてください。
ムシ歯や歯周病の原因となる歯垢がたまりやすいところは、「歯と歯の間」と「歯の付け根」です。
これは、歯磨きだけでは、十分に除去することができません。
デンタルフロスという糸状の歯間クリーナーや、フロスとピックが一体化した糸ようじなどを使う必要があります。
デンタルフロスは両端を左右の中指に2~3回巻きつけ、歯と歯の間をスライドさせて使用します。
歯の詰め物がある人は、歯の間に糸ようじを出し入れするときに、フロスが切れたり、詰め物が外れたりする場合があるので注意してください。
デンタルフロスであれば、歯の横から糸を引き抜くようにするので問題ありません。
余談ですが、ブレスケア先進国の欧米では、日本人の口臭が最も強烈だと思われているそうです。
その原因は歯周病であり、食後すぐの歯磨き習慣にあると、私は考えています。
歯垢を取る歯磨き習慣
私がお勧めするのは、毛先が届かないところもきれいになる音波歯ブラシですが、通常の歯ブラシでも構いません。
その場合は、早く乾燥するナイロンのものを使い、1ヵ月程度で交換するようにします。
豚毛や馬毛を使った、高級歯ブラシは乾燥に時間がかかり、細菌が繁殖しやすいのでお勧めしません。
歯ブラシは鉛筆を持つように持ち、やさしくブラッシングするよう心がけてください。
歯垢を取る歯磨きに、唾液の分泌を促す「舌回し」を加えればなおよいでしょう。
口を閉じて舌を歯ぐきと唇の間に置き、歯ぐきに沿って舌をグルグル回します。
食前食後に、右回り、左回り、それぞれ10回ずつ行うよう習慣づけるとさらに効果的です。
完全にきれいにした歯に歯垢ができるまでは、およそ24時間といわれています。
そして、歯垢がいちばんできるのは、唾液がほとんど分泌されない就寝中です。
寝ている間、口の中では細菌が爆発的に増殖しているのです。
このことから、最も効果的なプラークコントロールは、「夜寝る直前」と「起床後すぐ」ということになります。
また、唾液の力が最も高まっているのが食後です。
食後はデンタルフロスを使って、歯に挟まった食べかすを取り、歯と歯の間に唾液が通る道を作ることで、先にご説明した唾液の恩恵を得ることができます。

寝起きに水を飲むのは厳禁!
最後に、一つ注意があります。
健康によさそうだと、朝起きたらすぐ水を飲むのは厳禁です。
寝ている間に口の中に細菌が増殖したまま水を飲めばどうなるか、想像するだけで怖いですね。
まずは、口の中をきれいにしましょう。
口の中の健康は全身の健康に影響します。
きちんとプラークコントロールができるかどうかが、健康寿命につながるということを覚えておいてください。
解説者のプロフィール

森昭
竹屋町森歯科クリニック院長。
大阪歯科大学卒業後、勤務医期間を経て、1995年に竹屋町森歯科クリニックを開院。2007年、MDE(メディカル&デンタルエステ)協会を設立し、唾液分泌を促進する予防歯科の普及に努める。『脳卒中で死にたくなければアゴを押しなさい』(マガジンハウス)、『歯はみがいてはいけない』(講談社)など著書多数。
●竹屋町森歯科クリニック
京都府舞鶴市竹屋20
TEL 0773-76-9186
http://morishika.main.jp/