解説者のプロフィール

角田朋司
つのだ小児科医院副院長。
1962年、福島県立医科大学卒業。1967年、同大学大学院(小児科)博士課程修了。医学博士。1970年、つのだ小児科医院を開業し、2004年まで院長を務める(現在は息子である角田真司氏が院長)。漢方(東洋医学)の専門知識を生かして東洋医学と西洋医学の両面から診察し、両医学の利点を生かした診療を行っている。2011年からつのだ助健堂整膚治療院勤務。整膚博士、整膚教授。主な著書に『未病の治し方』(源草社)、『自分で出来る整膚健康法』(角田広子氏との共著)、『絆を育む整膚』(ともに整膚学園刊)などがある。
●つのだ小児科医院
埼玉県加須市上三俣1132
TEL 0480-61-2220
http://t-tsunoda.net/
五十肩、腰痛、ひざ痛などへ顕著な効果
私は、8年ほど前に、「肌つまみ」(正式には「整膚」という)と出合いました。
親交のあった医師の広瀬滋之先生に誘われて参加した研究会で、徐堅先生から「肌をつまむことは大きな健康効果をもたらす」という興味深い話を聞くことができたのです。
肌を引っ張ると、皮下の血液や体液の流れがよくなり、すみずみの細胞にまで酸素や栄養物が供給され、老廃物をすみやかに除去できるようになるため、生き生きとした体がよみがえる。
肌つまみのその理論は、納得できるものでした。
大いに興味をひかれた私は、肌つまみを学び、5年前からは医院の隣に肌つまみの専門治療院を設けて、いろいろな症状に悩む患者さんの施術にも当たるようになったのです。
肌つまみのいいところは、誰でも簡単に実行できるところです。
患者さんにやり方を教え、自分の家でも毎日肌をつまむようにアドバイスしています。
その成果は顕著で、五十肩や肩こり、腰痛、ひざ痛などの不快症状が、驚くほど早く軽快しています。
さらに、痛みやこりを治したい一心で肌をつまんでいたら、血圧や血糖値の数値も下がったという人がたくさんいらっしゃるのです。
これは、肌つまみの血流改善効果によるものでしょう。
肌つまみを行うと、その局所の血流がよくなるだけでなく、全身の血流もよくなることがわかっています。
また、患者さんの中には、うつ状態だったり、精神的な問題を抱えていたりする人も少なくありません。
肌つまみを続けるうちに、服用する精神薬の量が減らせたり、不登校になっていた小学生が、施術の翌日から元気に学校に通えるようになったりという例もあります。
血流・快・愛の三つの癒し
整膚(肌つまみ)が体に与える3大効果

肌つまみが体に与える効果として、主に三つの柱があると私は考えています。
第一は、なんといっても「血流」の改善です。
押したりもんだりといった刺激法と比べても、肌を引っ張る刺激は血流がよくなる反応が早く、しかも持続します。
第二に、「自律神経」のバランスを整える効果です。
自律神経は、交感神経と副交感神経の二つの神経が、ちょうど車のアクセルとブレーキのように拮抗して働いています。
交感神経は活動をつかさどり、血圧を上げたり筋肉を緊張させたりする働き、副交感神経は休息や回復をつかさどり、血圧を下げたり筋肉を緩めたりする働きがあり、どちらにかたより過ぎても体は不調に陥ります。
しかし、強いストレスを受けている人は、交感神経が過剰に働きがちなのです。
肌をつまむと気持ちよく、ほわぁっと体から力が抜けるのが感じられると思います。
この「快」の感覚がリラックス効果を生み、副交感神経優位になって、自律神経のバランスが整えられるのです。
副交感神経が優位になるため、肌つまみの施術中に寝てしまう方が多いのです。
肌つまみを受けているときの脳波を見ると、リラックスするときに出るα波が出ることも確認されています。
精神的な症状が改善するのは、このためでしょう。
第三は、「ホルモン分泌」の向上です。
特に、通称「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンと「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが出るようです。
セロトニンやオキシトシンは、ストレスを受けたときに出るコルチゾールというホルモンを抑える働きがあります。
コルチゾールが増えると、筋肉や内臓の疲労回復ができにくくなったり、太りやすくなったり、免疫力が下がったりすることがわかっていますが、そうしたマイナスの影響を抑えてくれるということです。
オキシトシンは、気持ちのよい肌のふれあいで分泌されるので、肌にやさしくふれる肌つまみが適しているのでしょう。
また、私が、看護学生に肌つまみを指導した際には、お互いに「強い絆」が感じられるようになったという意見がたくさん寄せられました。
第二、第三の効果は、つまんだときの気持ちよさに比例してくるため、多少テクニックと慣れが必要ですが、第一の血流促進効果は初心者でも得られます。
このように、いろいろな点で効果が得られる肌つまみ。
お風呂に入ったとき、トイレに入ったとき、寝る前など、ちょっとした時間に気になる部分の皮膚をつまむ習慣をつけてはいかがでしょう。
私自身も、ゴルフでラウンドした後に汗を流しながら、足などの肌をつまんで、疲労回復に役立てています。
「整膚(肌つまみ)」のやり方は、次の記事で詳しく紹介されていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。