解説者のプロフィール

中村守(なかむら・まもる)
『よくなる整体院』グループ代表、社団法人日本パーフェクト整体普及協会理事。
「日本一痛みを感じさせない整体」を心がけ、整体学校を卒業後も7つの整体メソッドを体得し、人口2万人弱の山形県河北町において、1人で年に約4000人もの患者を直接施術するほど評判を呼んでいる。著書に『肩こりは手首をふるだけで9割治せる』(実務教育出版)、『かかと力』(自由国民社)がある。
体のいろいろな痛みや不具合には「手首の骨のずれ」が関係
私の整体院では、患者さんが来院されたとき、まず初めに、手首の状態を見ます。
それは、肩こり、腰痛、頭痛、背部痛、五十肩などの体のいろいろな痛みや不具合に、手首の骨のずれが関係している場合が多いからです。
手首の骨のずれの主な原因は、手首のねじれです。
私たちは、実は想像以上に指先や手首をねじって使っています。
物をつかんだり、字を書いたり……。
細やかで複雑な指先の動きを左右するのは指先の骨ですが、それを維持し、サポートするのは、手首の骨です。
私たちが普段、何気なくしていることも、手首をねじる行為であり、知らないうちに手首の骨に負担をかけているのです。
そのため、手首を構成する八つの骨は、長年の負担によって骨と骨の間隔が狭くなったり広くなったりしてずれてきます。
ほとんどの人の手首の骨がずれている
特に近年は、パソコンやスマートフォンを長時間使用する人が多いので、ほとんどの患者さんにかなり重篤な手首のずれが見られます。
この状態が長く続くと、本人はあまり自覚がなくても、手首が硬くなります。
しかし、ほとんどの人は、自分の手首の骨がずれていることに気付いていません。
手首の骨がずれることで手首の動きが制限されて、硬くなっていることに気付いていないのです。
そもそも、私たちは通常、手首にあまり関心を持っていません。
ケガをしたり、ひねったりして手首自体に痛みを伴わない限り、手首を意識することがないのが常なのです。
ねじれた手首をカバーしひじや肩関節もねじれる
手首がねじれた状態にあると、ひじ関節がそれをカバーすることになります。
例えば、スマートフォンの画面を見たり、パソコンのキーボードを打つ作業は、手首をひねった状態で行われています。
このとき、手首の骨はもちろん、手首からひじまでの橈骨と尺骨という2本の骨もねじれます。
そのため、ひじ関節もねじれます。
すると今度は、ひじから肩までの骨である上じよう腕骨が内側や外側にねじれて、それをカバーするために肩関節がねじれてしまいます。
そして次に、肩甲骨が肩関節のねじれをカバーすることになり、バランスをくずします(下の図参照)。

肩甲骨はくずれたバランスを戻そうと、本来の動きでない動きをするためにずれてしまいます。
その結果、肩甲骨に付着している筋肉に負担がかかり、硬くなってしまうのです。
また、肩甲骨の動きが悪くなると、胸椎の動きが悪くなります。
胸椎とは、骨盤から首まで延びている脊柱(背骨)の胸の部分です。
ここの動きが悪くなると、上半身をひねる動作をしたときに脊柱の腰の部分である腰椎に負担がかかり、腰痛の原因となります。
手首の骨のずれは、上半身のずれを引き起こす元凶。
手首の骨のずれを整えなければ、肩こりや腰痛などの痛みは改善しないのです。
そのために、私が患者さんに勧めているのが、手首を振るストレッチ、略して「手首ストレッチ」です。
むくみが改善した!集中力が増した!
手首ストレッチは、基本的に手首を振るだけの簡単なものですが、効果は抜群(方法は下記参照)。
ずれた手首の8個の骨の位置を、正しい位置に戻します。
さらに、前腕の橈骨と尺骨を正しい位置に戻し、同時に硬くなった前腕の筋肉もゆるめます。
その結果、上腕、肩関節、肩甲骨もゆるみ、肩や首、背中や腰の痛みが改善されます。
私の整体院では、手首の施術を行いつつ、患者さんに手首のストレッチを指導して、自宅でも実践してもらっています。
手首のストレッチを続けて、肩こりや肩こりからくる頭痛、背部痛、首のこりなどが軽くなったという人はたくさんいます。
「こんなことでよくなるのか?と疑いながら始めたのに、本当によくなった!」と喜んでくださっている患者さんも多いのです。
また、むち打ち症の症状が軽くなった、起床時のむくみが改善した、集中力が増したなど、痛みやこり以外の症状に効果が上がっています。
私は整体師を生業としていますが、私ができるのは、あくまで患者さんの痛みや症状がよくなるためのお手伝い。
自分の体は自分で守るのが一番と考えています。
手首ストレッチを、ぜひ皆さんのつらい症状の軽減に役立ててください。
手首ストレッチのやり方


すきま時間を利用して行う
手首ストレッチ1で硬い手首をゆるめると、ずれた手首の八つの骨が正しい位置に戻り、骨の間隔も正常に戻ってきます。
手首ストレッチ2では、腕の2本の骨( 橈骨と尺骨。上図参照)を挟むように手首を軽く押さえます。
このときは、イタ気持ちいい程度にとどめ、痛いほど押さえ過ぎないようにします。
さらに、前腕を反対の手で挟むようにしながら手首を振ると、前腕の2本の骨のねじれや骨の間隔が解消されて、位置関係が正しくなります。
いずれの手首ストレッチも、肩や首、背中に疲れや重さを感じたとき、仕事の合間などのすき間時間を利用して行うとよいでしょう。
夜寝る前と朝起きた後もお勧めです。
気負い過ぎると続きません。
手首ストレッチを行うさいの注意点
まずは1日1分でいいので、生活に取り入れてみてください。
手首ストレッチを行うさいの注意点をお伝えしておきます。
●揺らす側のひじを伸ばす
ひじを曲げてしまうと、手首を揺らした際の振動が肩甲骨まで届きません。
手首から肩甲骨までを連動させてゆるめるために、ひじや背すじを伸ばした正しい姿勢で行ってください。
●強い刺激にこだわらない
刺激は強いほどいいと誤解している人が多くいます。
このストレッチは骨や筋肉をゆるめることが目的ですから、リラックスして行いましょう。