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【アドラー式お片づけとは】よくある掃除・収納術と違うの?精神科医が解説

【アドラー式お片づけとは】よくある掃除・収納術と違うの?精神科医が解説

物理的に家事の動線がよくなると、思っている以上に肉体的・心理的な負担は減り、むしろ家事をすることに「快適さ」を感じることすらあります。これはもちろん、心身の健康や安定にもつながります。【解説】ゆうきゆう(ゆうメンタルクリニック総院長・精神科医)

解説者のプロフィール

ゆうきゆう
ゆうメンタルクリニック総院長、精神科医。
ゆうメンタルクリニックは上野院(上野駅0分 )のほか、池袋東口院、池袋西口院、新宿院、渋谷院、秋葉原院、ゆうスキンクリニック(池袋西口)があり、すべてのクリニックが駅から0分の立地にありながら、静かで癒される都会のオアシスとして評判が高い。
シリーズ累計300万部を超える『マンガで分かる心療内科』ほか、著書多数。

●ゆうメンタルクリニック
https://yucl.net/

たいせつなのは過去ではなく“今”

アドラー心理学は、私が原作を担当している『マンガで分かる心療内科』シリーズでも「アドラー心理学編」を出版し、たいへん好評を得ています。
今、老若男女を問わず、幅広く注目されている心理学です。

アドラー心理学の根幹は、「目的論」にあります。
これまで心理学では、「原因を知り、それを改善しよう」といった取り組みが多く行われてきました。

しかし、その方法は「原因」にフォーカスしすぎて、かえってその原因に自分を縛りつけてしまう、ということがありました。
もちろん原因を知ること自体は悪いことではありませんが、いつの間にか原因探し自体が目的になったり、過去の感傷的な出来事にとらわれたり、場合によっては「この原因のせいで私はこうなんだ」ということに執着し、そこから動けなくなる人も少なくなかったのです。

これをアドラーの主張する目的論に照らすと、自分を原因に縛りつけるのは、「そのほうが自分にとって都合がいいからだ」となります。
「損をしたくない」「傷つきたくない」「相手を許したくない」「面倒くさい」「変わりたくない」といった、本人にとってはあまり堂々と語れない目的=本心からは目を背けやすく、都合のいい理由づけ=人生の嘘に固執してしまいやすいのです。

私たちにとってたいせつなのは、「かつてどうであったか」という原因=過去ではなく、「“今”どうあるのか」「“これから”どうしていくのか」という未来に向けた目的意識を持つことです。
過去はもう変えることはできませんが、「今、自分がどうするか」「今後、どうしていくのか」は、誰でも、今この瞬間から選ぶことができるのです。

不快な思いや劣等感が自分を変える原動力になる

「アドラー式お片づけ」は、まさにここから発想されています。
アドラーは、「劣等感や不快な感情を、自分の目的を叶えるための原動力にすることができる」と主張しています。

アドラー式お片づけでは、「掃除が面倒、片づかなくてイライラする」といったネガティブな感情こそが、理想の自分やライフスタイルをかたち作るきっかけや原動力になると伝えていることもたいへん興味深いと思っています。
おそらく多くの人が、イライラ感や片づけられないという劣等感についてネガティブなものとしてとらえ、「目的が達成されていない」「片づけられない自分」という部分にフォーカスして、さらにイライラするという悪循環に陥っているのではないでしょうか。

そのイライラ感=不快感を改善ポイントとして考え、理想の自分=理想の部屋・ライフスタイル・過ごし方をイメージするきっかけにして、その実現に向かって勇気づけを行っているプロセスもとても素晴らしいと思います。
勇気づけによって自分のポジティブな面を認めることで、過剰に自分を責めにくくなり、罪悪感を軽減し、片づけに取り組む勇気を養うことができます。

この「自分を認める」というステップを飛ばしてしまうと、家族の協力が得られないことにイライラしたり、イメージどおりに片づかないときにストレスを感じたりします。
特に、掃除や片づけに苦手意識やコンプレックスを抱いている人は、重要視してほしい部分です。

掃除と片づけと言うと、どうしても処分や整理整頓のルールに目が行ってしまいがちです。
しかし、たいせつにしたいモノを残すことや、自分の生活の動線をイメージしてモノの定位置を決めるといった、その人が自分の生活を改めて組み立てていくプロセスを組み込むことで、「自分らしく、自分の理想を叶える」という方向に向かえると思います。

いろいろ試してダメだった人にもお勧め

掃除や片づけの方法は、すでに多く出回っていますが、それを読んで実践できる人はすでに悩んでいないはずです。
「それでもできない」「やっても元どおり」という人のために新たに特集が組まれたりするのだと思いますが、そういった人にとっては掃除や片づけについての情報が入れば入るほど、「実践できない自分」への劣等感が募っていくという状態にあるのかもしれません。

アドラー式お片づけは、そのような人にもお勧めです。
そういった状態にある人も、勇気づけによって自分を認めることで、苦手なことにチャレンジする勇気がわいてきたり、不快な感情に流されず、自分の考え方や本心に向き合うことができるようになったりします。

その後に目的論を当てはめて、自分自身の「片づけられない」という状態を理解し、「片づいた生活をするためにはどうしていけばよいか」という前向きな目的を持つことが可能になると考えられます。
「モノや部屋の状態や管理がきちんとできている」という状態は、心理的にある種の満足感や自己肯定感が生まれやすくなります。

家や部屋が自分の納得のいく状態になっていると、それを管理している自分=ちゃんとできている自分という肯定的なセルフイメージがついてきます。
この自分に対する肯定感・満足感は心の余裕や自信につながっていくものですから、行動の後押しになったり、幸福感を感じやすくなったりといったことが見込めます。

物理的に家事の動線がよくなると、思っている以上に肉体的・心理的な負担は減り、むしろ家事をすることに「快適さ」を感じることすらあります。
これはもちろん、心身の健康や安定にもつながります。

アドラー式お片づけで、自分と家族の生活に合った、快適な場所作りにチャレンジしてください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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