
足裏の状態の悪さが痛みや病気を招く!
「腰が重くてイスから立ち上がるのがつらい」「ひざが痛くて長距離を歩けない」「足先がよくしびれる」といった症状にお困りのかたはいませんか。あなたのその痛みやしびれの原因は、「足の裏」にあるのかもしれません。
足の裏には知覚神経が張り巡らされており、全身のなかでも特に鋭敏な感覚器官といえます。通常、足の裏で知覚された情報は脊髄を通り、脳幹へ伝わります。脳幹とは、脳の幹に位置する部位のことで、視床・視床下部・中脳・延髄などの総称です。脳幹は、体の免疫機能や筋肉活動をつかさどっている大変重要な場所であり、私たちの生命活動の中枢ともいえるでしょう。ですから、脳幹が正常に働かないと、私たちの健康状態は維持されません。
足の裏の状態が悪いと、この脳幹の働きも悪化すると考えられます。
例えば、土踏まずに凹凸のない扁平足のかたや、足の親指(母趾)が小指(第5趾)側に極端に曲がってしまう外反母趾のかたなどは、足の裏が悪い状態といえます。足の裏のアーチが正しく形成されておらず、正常に使われているとはいえないからです。
足の裏の状態が悪いと、足の裏から脳幹へ伝わるはずの情報が滞ってしまいます。その結果、全身の筋肉の働きが悪くなったり、体の諸機能を調節している自律神経のバランスが乱れたりします。それによって、腰やひざ、股関節の痛みやしびれをはじめとして、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、耳鳴りやめまいなどの誘因ともなりうるのです。
扁平足や外反母趾のかただけが、足の裏の状態が悪いわけではありません。むしろ、先ほど列挙した症状を抱えている人の大半が、ふだんから足の裏をうまく使えておらず、状態が悪いといっても過言ではないでしょう。
内臓の機能低下や血行不良にも有効
足の裏の状態は、ふだんの歩き方や姿勢、体のクセなど、生来的なものによって形成されます。長年体に染みついた歩き方や姿勢を変えようとしても、なかなか容易ではありません。
そこで、私が勧めているのが「足の裏しぼり」です。こり固まった足の裏をほぐし、正しいアーチを復活させることを助けるための簡単な方法です(図参照)。
この足の裏しぼりを毎日続ければ、徐々に正しい情報が足から入ってくるようになります。そうすることで、脳幹の働きも向上し、痛みやしびれなどの症状が改善するでしょう。
さらに、脳幹が活性することで、腹圧の正常化にもつながります。腹圧とは、おなかの圧力のことで、脳幹がその働きを調整しています。内臓は、袋状になった腹膜と呼ばれる膜組織に包まれ保護されています。この腹膜を風船のようにふくらませる力が、腹圧です。
足の裏しぼりのやり方

腹圧が下がると、腹膜がしぼんで臓器が圧迫されます。すると、内臓機能が低下し、全身の血行不良にもつながります。その悪影響は、さらに骨格まで及びます。背骨を支えられなくなり、姿勢の悪化はもちろんのこと、背骨の中を走る血管や神経まで圧迫してしまうのです。
腹圧を正常化するという点からも、足の裏しぼりは有効です。実際に私のセンターでは、施術と併せて足の裏しぼりを毎日行うことにより、ひざや股関節の痛みが改善したり、外反母趾が治ったりしたかたがいます。なかには、代謝が上がったことで10㎏やせて産後太りが解消した女性や、高かった血圧が下がったかたもいるのです。
ぜひ、皆さんも足の裏しぼりを毎日続けてみてください。
解説者のプロフィール

ねづのりつぐ
理学療法士。BiNIリハビリセンター横浜勤務。2011年、帝京科学大学卒業。治療の傍ら、神奈川県横浜市において、専門家や一般のかた向けのセミナーも定期的に行っている。