
成果にこだわるのはうその自信
あなたの自信が、「うその自信」か「ほんとうの自信」かを見分ける方法があります。
それは「うその自信=DOの自信」か、「ほんとうの自信=BEの自信」かということです。
何かを「する(DO)」ことで、「成果」が上がり、評価を得ることによって感じられる自信が、「DOの自信」です。
例えば、「営業成績でトップになる自信がある」といった自信は、「DOの自信」と言えます。
自信があれば成果が上がりやすいことも、成果が上がることが自信につながることも、悪いことではありません。
ただ、成果を上げることで自信をつけていこうとすると、「新人に営業成績を抜かれた」「異動になって営業職ではなくなった」といった状況が起こると、これまでの自信は簡単に失われてしまうでしょう。
成果による自信は、状況に左右されるため、もろいという一面があるのです。
成果を気にして、敵か味方かといった、優劣の世界でしか生きられない「うその自信」タイプの人は、上司になったときに、部下に対してパワハラを行ってしまう可能性もあります。
また、成果を上げて、人から評価してもらって初めて、「自分は人としての価値がある」と感じる人も少なくありません。
このような「うその自信」タイプの人は、自己肯定感が低いため、他人からの評価を気にしすぎてしまうとも言えるでしょう。
そうなると、ワーカホリック(仕事依存症)になったり、仕事を断れずに引き受けすぎてしまい、体を壊すまで働いてしまったりということにもなりかねません。これでは、自分で自分をいじめているようなものです。
さらに、同じ成果を上げていても、上司など評価者しだいで評価が変わるということもありえます。
評価は絶対的なものではないので、成果によって得られた「うその自信」は、不安定になってしまうのです。
ほんとうの自信は自分への肯定感・安心感
一方で、「ほんとうの自信=BEの自信」とは、自分がたいせつにする「あり方」についての、そこはかとない肯定感や安心感を持っている状態と言えます。
「ほんとうの自信」は、状況に左右されず、自分にしか感じることができません。
何をしていようと、自分についてよい感じ方をすることが「BEの自信」です。「ありのままの自分でよい」という、自己肯定感が高いのも特徴です。
「BEの自信」は、「私はこんなに優れた人間だ」と感じることではありません。
また、「自分が好き」ということとも違います。
「自分を好きになろう」というメッセージを見かけることもありますが、それは、自分の中の「いい条件」だけを見つけることになり、「ありのままの自分」を認めることとは異なります。
自分への肯定感とは、欠点も含めて、「まあ、自分はこれでよいだろう」と、明るく自分を受け入れること。自分を愛おしく思えることがポイントです。

ほんとうの自信を持つには「べき」よりも「したい」
「BEの自信」につながるのは、「こうありたい」という気持ちであり、「こうすべき」ではなく、「こうしたい」という感覚です。
「まずは他人を優先すべき」ではなく、「できるだけ他人のことを考えてあげたい」といった、自分がたいせつにしたいと思う方向のことです。
しなやかな強さがある「BEの自信」があれば、失敗しても折れずに人生を進んでいけます。
一方で、今の社会は、成果主義に代表される「DOの自信」を中心に動いているため、「DOの自信」に乗り遅れないようにすると、ありのままでよいとする「BEの自信」の状態が悪くなるとも言えます。
まずは、「BEの自信」を手に入れたうえで、「DOの自信」を持つことができると、人生をよりラクに生きていくことができるでしょう。
解説者のプロフィール
水島広子(みずしま・ひろこ)
慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。摂食障害、気分障害、トラウマ関連障害、思春期前後の問題や家族の病理、漢方医学などが専門。2000年6月の衆議院選挙で栃木1区から初当選。2期5年間をつとめる。現在、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン(AHJ)代表、対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)。
●水島広子こころの健康クリニック
東京都港区元麻布3-12-38
TEL 03-3470-5355
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