体のバランスのくずれでガサガサかかとになる!
ある民間調査会社が約1万1000人の男女に行ったアンケート調査によると、気になる「足についての悩みやトラブル」の1位は、なんと「かかとの荒れ(かさつき、ひび割れ)」でした。
しかし、気にはなっても、かかとの荒れ(ガサガサかかと)は、「加齢によるものだからしかたがない」と諦めたり、「生活には支障がないから」と放置したりしている人が多いのではないでしょうか。
実はこれらはすべて誤りです。
私のフットケア外来に来た患者さんの中には、ガサガサかかとが治った人がたくさんいます。
そして、ガサガサかかとを放置すると、全身の不調につながっていくのです。
ガサガサかかとを招く要因は、大きく分けて3つあります。
最大の要因は、かかとに体重がかかりすぎて、角質が厚くなってしまうことです。
足裏の面積は、両足を合わせても全身の表面積の2%しかありません。
この狭い面積で全体重を支えるために、足の甲の部分の骨格は土踏まずを頂点に弓なりに連なっており、かかと、親指のつけ根、小指のつけ根の3カ所に体重を分散しています。
この3点を結んだ弓状のラインを「足のアーチ」と言います。
足のアーチは、全身の体重を無理なく支えると同時に、着地時の衝撃を吸収し、全身のバランスを維持するなど、重要な役目を果たしています。
ところが、ガサガサかかとの人は、足のアーチのうち、かかとに過度な体重がかかっています。
これは「かかと体重」と言われます。
表皮にある角質層には、外部から過度な刺激を受けると厚くなる性質があります。
つまり、体のバランスがくずれてかかと体重になると、かかとの角質層が厚くなり、ガサガサかかとになるのです。
第2の要因は、新陳代謝の衰えです。
もともと足裏の皮膚は、体重を支えるために角質層が厚くできていますが、健康な状態であれば、一定の周期で皮膚の細胞が生まれ変わります。
角質層が厚くなる前に新しい皮膚ができ、古い角質は自然にはがれていきます。
しかし、新陳代謝に必要な栄養を送る末梢血管の血流が悪くなると、新陳代謝が乱れて、かかとの角質が厚く、ガサガサになってしまいます。
特に、足の疲れ、むくみ、冷えが慢性化している人は、足の血行不良から、新陳代謝も衰えている可能性が高いといえます。
第3の要因は、誤った足のお手入れです。
足のケアを怠っても、軽石などでこすり過ぎても、角質は厚くなります。
また、水虫などの病気が原因で、かかとが厚くガサガサになることもあります。
こうして見ると、ガサガサかかとは、単に肌の乾燥や老化の問題ではありません。
足の機能の衰えや、姿勢や歩き方の悪いクセなど、さまざまな問題が関係していることがわかります。
体のバランスがくずれたり、代謝や血流が悪化したりすると、かかとに現れるわけです。
ガサガサかかとは見逃してはならない、体からのサインなのです。
ですから、ガサガサかかとを改善するには、自分の足の問題点を見極めたうえで、適切なケアを行うことが必要になってきます。

太もも裏をほぐすと足のバランスが整う
今回は、ガサガサかかとを招く最大の要因である、かかと体重を改善する方法をご紹介します。
最近、私がガサガサかかとの人によく勧めているのは、太ももの裏側、ハムストリングスと呼ばれる筋肉を伸ばす「もも裏伸ばし」です。
太ももとかかとは、足の中でも離れていて関連が薄そうですが、ガサガサかかとに悩む人の多くは、太もも裏の筋肉が固まっていることが多いのです。
太もも裏の筋肉は、日常生活ではあまり使うことがなく、特に衰えやすい箇所です。
ここの筋肉が衰えると、体重を支えるバランスがくずれ、かかと体重になりやすくなります。
下半身の血流を促進するという点でも、太もも裏の筋肉をほぐすことは意味があります。
もも裏伸ばしは、上の写真のようにイスに腰かけて右足、左足と交互に足を伸ばして行います。
この姿勢になると、太ももの裏がほぐれていく感じがあると思います。
また、かかと体重の人は、足指の力が低下しているケースが多々あります。
足指に力が入らないため、かかとに重心が偏るわけです。
足指を鍛えるには、「足指グーパー」や、足指を1本ずつもみほぐしたあと、足指の間に手の指を入れて強く握り、足首を大きく回す「足握手」などが有効です。
足指を鍛えるだけでなく、指や足首の柔軟性を高め、足先の血行をよくします。
日々のお手入れも大切
日常の足のお手入れもたいせつです。
毎日の入浴時に石けんをよく泡立てて、手ですみずみまで洗って清潔に保つことが基本。
足を洗ったあとは水分をよく拭き取り、保湿効果のあるハンドクリームをやさしくすり込んでおきましょう。
ガサガサかかとを治すことは、健康寿命を伸ばすことに直結します。
高齢になっても自分の足で元気に歩けるよう、足のケアをしっかり行ってください。
解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。