アドラー心理学で「片づける心」を手に入れる
「何をやっても片づかない」「片づいた部屋で暮らしたいけど、家族が散らかしてしまう」「忙しくて、片づけられない」「物が捨てられずにたまっていく」……そんなイライラを抱えるかたは多いと思います。
私自身も出産後、子育てが始まったとたんに、思うように部屋を片づけられなくなり、イライラしたり、物を散らかす家族を責めるようになったりして、苦しんでいました。
そのときひらめいたのが、里帰り中に知った「アドラー心理学」を、家の片づけに応用することでした。
アドラー心理学は日本でも近年、『嫌われる勇気』などのベストセラーで注目されていますが、20世紀初頭にオーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーが創始しました。
「勇気づけの心理学」とも呼ばれ、人に勇気(=困難を克服する活力)を与え、自分の意志で主体的に未来をつくっていくことをサポートする心理学です。
アドラーは、人は過去に何があろうと、今ここから自分が生きたい人生を生きられるのだと明言しました。
そして、「あらゆる悩みは、すべて対人関係の課題である」と見抜いたのです。
当時、私が抱えていた片づけの悩みも、ノウハウで解決できるものではなく、まさに家族と自分自身との対人関係が問題でした。
私は8年前から自宅での片づけにアドラー心理学を取り入れています。
そこからさらに改良や工夫を加えて、「アドラー式お片づけ(勇気づけのお片づけ)」として、一般のかたがたに広める活動をしています。
アドラー式お片づけで最もたいせつなことは、「まずは自分が、自分自身の味方になる」ことです。
片づけられなくてイライラしたり、自分はダメだと落ち込んだりしてしまうのは、決してあなたがダメな人だからではありません。
なぜなら、イライラや劣等感などの不快な感情は、理想の自分と現状の自分にギャップを感じ、「もっとよくなりたい」「もっとできるはず」と思うからこそ生じる感情だからです。
そう考えると、イライラする場所=片づけポイントとなります。
イライラは、気づきのサインです。
今まで抑えてきた自分の負の感情に対処することで、なりたい自分に向かった片づけができるのです。

片づける目的を持つことでやる気がわく
アドラー心理学によって片づけのマインドを変えたら、そこから心地よい部屋を作るための6つのベストステップに取り組みます。
各ステップの詳細は、下記画像を参照してください。
まず第1ステップは、「その部屋で何をしたいのか、イメージする」。
イライラの裏に隠れている「本当はどんなことをして過ごしたいか」という望みを具体的にイメージすることがポイント。
イメージしづらい場合は、すでにある「幸せを感じる時間」がどういう時かを思い出してみてください。
その幸せな時間を少しずつ長くしていくことが、あなたの片づけの目的になります。
第2ステップは「仲間分けして、整理する」。
ここでは、片づける場所に入っている物をすべて出し、用途ごとに「仲間分け」します。
いらない物は減らすわけですが、大事なのは「捨てる」を意識しすぎないこと。
物を手放すということは、悪者にして捨てることではなく、前向きな「卒業」です。
卒業するかどうかの判断基準は、自分にとって「快」か「不快」か。
どれだけ自分の感情に素直になれるかが肝心です。
たいせつだと判断した物については、潔く残してだいじょうぶです。
第3ステップは、「あなたの家の快適を1番に考えて、収納する」。
このときのコツは、既成のルールにとらわれず、使う場所に使う物を置くこと。
定位置を決めてから、収納グッズや家具を揃えます。
アドラー式片づけ術6つのステップ


キッチンにおもちゃを収納してもよい
ここまでのステップで、片づく部屋のシステム作りが完了します。
ここからは日常の活動となります。
第4ステップは「リセットタイムを設ける」。
整理した場所が散らかったら、もとの場所に戻すこと。
1日1回、時間を決めてやると楽です。
第5ステップは「ササッと掃除をする」。
私は毎朝1回の掃除を勧めていますが、夕方や夜でもいいですし、忙しい家庭なら毎週末にまとめて行ってもいいです。
日常生活でたいせつなのは、片づけと掃除のタイミングをつかむこと。
タイミングさえつかめれば「使ったらもとの場所に戻す」「掃除する」を繰り返すだけでOKです。
快適に過ごせるようになっても、物が増えたり、生活スタイルが変わったりすることがあります。
そこで、第6のステップ「見直し」をします。
「見直し」は、変わっていく家族や自分を受容して、よりよく変化していくための前向きな作業です。
例えば、写真の私のキッチンは、流し台の下に洋服のハンガーを収納しています。
その理由は、とてもシンプル。
私の家はキッチンからベランダがとても近いからです。
ここにハンガーがあると、洗濯物を干すときに便利なのです。
こうやって、第1〜6のステップを定期的にクルクルと回していくことで「自分にもできる!」と自信がつき、片づけが続けられるようになってきます。
アドラー式お片づけでは、完璧な片づけを目指す必要はありません。
自分にダメ出しする苦しい片づけは、もう卒業しませんか。
できていない部分より、できている部分に注目して、「毎日家事をよくやっているね」と自分自身に声をかけながら、定期的に無理なく6つのステップを回してみる。
このステップを踏むうちに、物が少ないほうが見直しが楽であることに気づくでしょう。
まずは、家の中で自分がいちばんイライラする場所から片づけてみてください。
あなたの感情は、どこまでもあなたの味方です。
次の記事では片付けスイッチをオンにする「アドラー式お片づけ練習帳」をご紹介します。
アドラー式お片付けBefore→After

解説者のプロフィール

丸山郁美
長野県出身。
東京都中野区在住。
家族は夫と娘2人。毎日笑顔でいられる気持ちよさと、家族を勇気づけるたいせつさを伝えるため、片づけのカウンセリングとサポートを行う「勇気づけホームオーガナイザー」として活動中。
講演やセミナーなども活発に行い、現在までに800世帯以上がきれいに片づいている。
近著に『あなたのお部屋がイライラしないで片づく本』(かんき出版)がある。
●Twitter
https://twitter.com/jibunsuki_life