すべての健康は正しい姿勢から
「年だから姿勢が悪くなっても仕方ない」「背中が丸くなったのは年のせい」などと、あきらめてはいませんか。
年を取ると、次第に筋力が衰えます。
20歳の人を100とすると、60歳以上の筋肉は約半分に減るのです。
それとともに、姿勢が悪くなり、ネコ背になる人が増えていきます。
加齢によって生じるネコ背は、年のせいだから治すことが難しい。
そう考える人も多いかもしれません。
しかし、そんなことは決してありません。
私のスタジオでは、70歳代やそれ以上の人たちが、ピンとしたきれいな姿勢で運動を楽しんでいます。
後ろ姿だけ見れば、まさに20代に見えるほどです。
しかし、その人たちは最初からよい姿勢だったわけではありません。
適切な運動を行えば、何歳でもネコ背を改善することは可能なのです。
いくつになっても、運動を行えば体は大きく変わります。
遅いということはないのです。
とはいえ、激しい運動をする必要はありません。
基本はよい姿勢を保つだけです。
姿勢がよいと、実年齢より若く見え、立ち振る舞いに品格が出ます。
それ以上に姿勢がよくなると、体調が改善されて、日常生活もらくに感じられるようになります。
「ああ、疲れた」と口にする回数も激減するでしょう。
体が動きやすくなると歩くのも速くなり、運動量が増え自然と体もスリムになります。
姿勢がよいと、すてきなことばかり起こるのです。

ネコ背を治すにはまずひざを伸ばすこと
ネコ背の人をよく観察してみると、ひざがピンと伸びている人はほとんどいません。
加齢によって筋力が低下すると、体を支えるために踏ん張ろうとしてひざが曲がります。
ひざが曲がると、体がバランスを取ろうとして骨盤が後ろに倒れます。
骨盤が後ろに倒れると、さらにそのバランスを取るためにネコ背になり、あごが前に出ます。
人間の体はつながっていますから、体のある部分でバランスがくずれると、そのつり合いを取ろうとして、反射的な変化が連鎖的に生じるのです。
これを「姿勢反射」といいます。
逆に、この姿勢反射を利用して、ネコ背を改善することが可能です。
特に注目したい部分が、ひざなのです。
ひざを伸ばしてみましょう。すると、股関節が開きます。
股関節が開くと、体の中でも最も大きな筋肉である大殿筋と、太ももの裏側の筋肉であるハムストリングが収縮します。
すると、後傾していた骨盤が正しい位置に収まり、体が起きるのです。
背すじがピンと伸びて、前に出ていたあごが引っ込み、正しい姿勢になります。
ところが、ひざが硬くて伸びない人は骨盤が正しい位置になりません。
そこでひざが少々曲がっていても骨盤を正しい位置に戻せる「直角壁すわり」をお勧めします。(やり方は次項の図参照)
「直角壁すわり」のやり方


腹筋と背筋が同時に鍛えられる
直角壁すわりでは、壁にぴったりと腰と背中、両肩、頭を付けて、足を伸ばして座ります。
これだけで骨盤が正しい位置になって姿勢がよくなります。
腹筋や背筋を同時に使うことができ、よいトレーニングになるのです。
しかし、ネコ背の人は、直角壁すわりを初めはなかなかうまくできません。
腰や背中、両肩、頭が壁に付いてひざが伸びるようになるには、くり返し行うことが大切です。
自分の骨盤が正しい位置にあるかどうかは、直角壁すわりを行う前に、まず普通に立って自分の重心が足のどこにあるか感じてください。
その後、直角壁すわりを3〜5分間行い、再び立って自分の重心を感じてみましょう。
すると、この直角壁すわりを行う前とは違って、足の裏全体に体重がかかり、しっかり立てている感覚がわかると思います。
1回行うだけでも違いを感じるでしょう。
慣れないうちはひざや腰などに違和感があり、難しいと感じるかもしれません。
違和感のある部分は、普段しっかり使えていない筋肉です。
少しずつ続けることで、使っていなかった筋肉が強化できます。
伸びなかったひざが徐々に伸び、ひざが伸びると、骨格はきれいに整い美しい姿勢になります。
解説者のプロフィール

三矢八千代
八千代スタジオプロアカデミー主宰。
1952年、東京生まれ。
日本体育大学大学院トレーニング科学専攻修士。
83年より、東京・中目黒でエアロビクスの専門スタジオ「八千代スタジオプロアカデミー」を主宰。
日本体育大学非常勤講師ほか、スポーツクラブのアドバイザーも務める。
著書に、『DVD付きオールカラー 高齢者イキイキ!音楽に合わせてリズム運動』(西東社)、『ロコモにならないワン・ツー・スリー運動』(ルックナウ)などがある。
●八千代スタジオプロアカデミー
http://www.yachiyostudio.com/