解説者のプロフィール
ケアのし過ぎでかゆみが起こる
肛門のかゆみで悩んでいる女性は、実は年齢を問わずたいへん多く見受けられます。
肛門が「ムズムズする」は、症状が軽いほうで少数派です。
圧倒的に多いのは「痛がゆい」「とにかくかゆい」というもの。
かゆみがつらいせいで仕事に集中できない、眠れない、夜中に目が覚めてしまうという人もいます。
就寝中に無意識に肛門をかいて、傷を作るケースも多々あります。
肛門がかゆくなる原因で最も多いのは「過剰なお尻のケア」です。
「お尻は清潔に保つもの」と、みなさん思っています。
そのため、お尻を石けんでごしごし洗う、トイレットペーパーで強くこする、温水洗浄便座で熱いシャワーを長い時間強く使うなど、必要以上のケアをしてしまいがちです。
これが強い刺激となって、皮膚のバリアを壊し、かゆみをもたらすのです。
また、肛門がかゆくなると、「清潔にしなくては」という気持ちがさらに強くなります。
そして洗い過ぎてしまい、かゆみを悪化させてしまいます。
肛門がかゆいときは、かゆみ止めを使う前に、次の点をチェックしてください。
日常のケアで当てはまるものがあれば、やめましょう。
□石けんで洗い過ぎていないか
□温水洗浄便座で、シャワーの温度を高くしたり、水圧を強くしたりして、肛門を洗い過ぎていないか
□トイレットペーパーで、肛門を強く頻回にこすっていないか
お尻を刺激しないためには、入浴時には、せっけんを使わずぬるま湯で、手を使ってお尻を洗うようにしましょう。
温水洗浄便座を使用する際は、低い温度と弱めの水圧で、軽く洗う程度にします。
原因を取り除けば、かゆみは自然に解消します。
特に男性は、ケアのし過ぎの人が大半です。
女性の場合は、かゆみを引き起こす原因がいろいろあります。
ケアのし過ぎを改めてもかゆみが解消しない場合は、下着なども要チェック。
ガードルやパンティストッキング、Tバックのショーツは、いずれもお尻を締め付けるうえ、歩くたびに皮膚がこすれて刺激になり、かゆみの原因になります。
また、生理用ナプキンや尿もれパッド、パンティライナーに含まれるポリマー剤によるかぶれや、お尻の毛を剃り、カミソリ負けしてかゆくなる例も多く見られます。
ショーツをレースの少ない綿100%のものに変える、きついガードルやパンティストッキングを避ける、パンティライナーは必要最低限使用するなど、生活習慣を見直すことも、かゆみの解消に結びつきます。
長年放置していると、肛門の皮膚の状態が悪化して、日常のケアや生活習慣を見直しても改善しないケースもあります。
その場合は、医療機関での薬物治療が必要です。
肛門のかゆみがある人はココをチェック!

カンジダ菌やイボ痔が原因のこともある
肛門のかゆみの原因には、カンジダ菌やイボ痔、切れ痔によるもの、皮膚疾患に合併して起こるものもあります。
いずれの場合も、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。
カンジダ菌はもともと膣に存在する菌で、普段はおとなしくしています。
ところが、過労やストレスなどで免疫力が低下しているとき、抗生物質を内服したときなどに菌が増殖して、肛門までかゆくなることがあります。
肛門の外に出るようなイボ痔では、痔から分泌される粘液が皮膚炎を起こしてかゆみをもたらすこともあります。
また、切れ痔では傷ができることで痛がゆくなることもあります。
肛門にかゆみがあり、皮膚が赤くただれている、分泌物が出ているなどの場合は、皮膚の悪性疾患の可能性もあるので、医療機関を受診しましょう。
肛門の悩みは人に言いづらいもの。
患者さんの中には、10年以上もかゆみを我慢してきたという人が珍しくありません。
肛門科に抵抗がある人は、第1ステップとして女性の医師が多い皮膚科を受診するという方法もあります。
肛門科は女性の医師が少ないのですが、男性の医師でも女性患者専門の時間帯を設けている病院もあります。
調べてみるといいでしょう。
野澤真木子
杏林大学医学部卒業。同大学附属病院第一外科、大腸肛門病センター松島病院、松島ランドマーククリニック院長などを経て、女性専門の肛門外科・胃腸内科である日本橋レディースクリニックを開院。同クリニックには、便秘や腸内環境改善のための食物繊維が豊富な食事メニューを提供する「フローラカフェ by NLC」を併設している。監修書に『さよなら!不快症状 おしりのトラブル』(旬報社)などがある。
●日本橋レディースクリニック
http://nl-clinic.jp/